「社長、今日も朝からバタバタですね」
ある朝、出社してきた社員にそう言われて、はっとしました。私は毎朝、会社に着くなりメールを開き、電話に出て、目の前のトラブルに追われていました。気づけば昼になり、夕方になり、1日が終わっている。自分で会社を動かしているつもりが、実は会社に動かされていたのです。
先に結論を言います。小さな会社の社長にとって、朝の1時間は、1日の中で唯一「会社の未来」を考えられる時間です。私はこの1時間の使い方を変えてから、判断に迷うことが減り、会社の空気まで少しずつ変わっていきました。
今日は、私が続けている朝の時間の使い方と、そこに至るまでの失敗について書いてみます。
朝から「火消し」に追われていた頃
コロナ禍で売上が落ち込んだ時期、私の朝はいつも火消しから始まっていました。
取引先からの問い合わせ、資金繰りの確認、社員からの相談。どれも大事なことです。でも、目の前のことに追われているうちに、「これから会社をどうしていくか」を考える時間は、どこにもありませんでした。
夜になってから考えようとしても、疲れ切った頭では良い考えは浮かびません。布団の中で不安だけがふくらみ、眠れないまま朝を迎える。そしてまた、火消しの1日が始まる。そんな悪循環の中にいました。
きっかけは、ある先輩経営者のひとこと
変わるきっかけをくれたのは、商工会で知り合った先輩経営者でした。
「社長の仕事は、今日の仕事をこなすことじゃない。明日の仕事をつくることだよ。そのための時間を、1日のいちばん元気なときに取っておきなさい」
その方は、毎朝5時に起きて、誰にも邪魔されない1時間を「考える時間」にしていると話してくれました。正直、最初は「そんな余裕はない」と思いました。でも、余裕がないからこそ、その1時間が必要なのだと、少しずつわかってきたのです。
私の朝の1時間
今の私の朝は、だいたいこんな流れです。
- 起きたらまず、水を1杯飲んで窓を開ける
- 10分だけ、昨日の出来事をノートに書き出す
- 20分、会社の数字(売上・入金予定・支払い)を確認する
- 20分、「今週いちばん大事なこと」を1つだけ決める
- 残りの10分で、今日やることを3つに絞る
ポイントは、メールやスマホを見ないことです。メールを開いた瞬間、頭は他人の用事でいっぱいになります。朝の1時間だけは、自分の会社のことだけを考える時間にしています。
特に効果を感じているのが、「今週いちばん大事なこと」を1つだけ決める習慣です。やるべきことは山ほどあります。でも、その中で本当に会社の未来を左右することは、たいてい1つか2つしかありません。それを朝のうちに決めておくと、1日の中で迷ったときの判断の軸になります。
朝の時間を守るためにやめたこと
朝の1時間をつくるために、いくつかのことをやめました。
- 夜遅くまでの付き合いの飲み会(2次会には行かない)
- 寝る前にスマホでメールを確認すること
- 「とりあえず会社に早く行く」こと
3つ目は意外かもしれません。以前の私は、誰よりも早く会社に行くことが社長の務めだと思っていました。でも、会社に着いた瞬間に仕事に飲み込まれてしまうなら、早く行く意味はありません。今は、家か近所の喫茶店で1時間を過ごしてから出社しています。
何かを始めるときは、何かをやめなければ時間は生まれません。「やめることを決める」のも、社長の大事な仕事だと、今は思っています。
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朝の時間を変えてから、半年ほどたったころ、いくつかの変化に気づきました。
まず、判断が速くなりました。朝のうちに「今週いちばん大事なこと」を決めているので、社員から相談を受けたときも、「それは今週の優先事項に関係するか」で判断できるようになりました。
次に、社員への指示がぶれなくなりました。以前は、その日の気分や目の前のトラブルで言うことが変わり、社員を困らせていたと思います。朝に考えを整理しておくことで、伝えることが一貫するようになりました。
そして何より、私自身の不安が減りました。数字を毎朝確認していると、会社の状態が手に取るようにわかります。わからないことが一番怖い。わかっていれば、手を打つことができます。
社長の朝は、会社の「羅針盤」を合わせる時間
今振り返ると、火消しに追われていた頃の私は、羅針盤を持たずに嵐の海を進んでいたようなものでした。どれだけ必死に舵を切っても、どこに向かっているのかがわからない。それでは、社員も不安になって当然です。
朝の1時間は、その羅針盤を合わせる時間です。会社がどこに向かっているのかを、社長自身が毎朝確かめる。それだけで、1日の動き方が変わり、社員の動き方も変わっていきます。
小さな会社では、社長の状態がそのまま会社の状態になります。社長が焦っていれば、会社も焦る。社長が落ち着いていれば、会社も落ち着く。だからこそ、社長が自分の心と頭を整える時間は、決してぜいたくではなく、会社を守るための大切な仕事なのだと思います。
最初はうまくいかなかった
偉そうに書いていますが、最初からうまくいったわけではありません。
始めたばかりの頃は、張り切って朝5時に起きたものの、3日で寝坊しました。無理に早起きした日は、昼過ぎに眠くなって、かえって仕事の効率が落ちたこともあります。早起きそのものが目的になってしまっていたのです。
そこで、起きる時間を少しずつずらしていくことにしました。まずはいつもより15分早く。慣れてきたら30分。そうして1か月ほどかけて、ようやく1時間を確保できるようになりました。寝る時間も、それに合わせて少しずつ早めていきました。
また、最初はノートに何を書けばいいのかわからず、白いページを前にぼんやりしてしまう日もありました。そこで、「昨日よかったこと」「昨日困ったこと」「今日いちばん大事なこと」の3行だけを書くことにしました。書くことが決まっていると、ペンが止まりません。3行で終わる日もあれば、気づけば2ページ書いている日もあります。
大事なのは、完璧な朝を目指すことではなく、自分のペースで続けられる形を見つけることだと思います。
続けるためのコツ
最後に、朝の時間を続けるために私が意識していることを書いておきます。
- 完璧を目指さない(30分しか取れない日があってもいい)
- 前の晩に、翌朝考えるテーマを1つだけメモしておく
- ノートは1冊に決めて、読み返せるようにする
特に、ノートを読み返すことはおすすめです。半年前の自分が何に悩んでいたのかを読むと、「あの悩みは乗り越えられたんだな」と、少し自信が湧いてきます。
朝の1時間で「考える材料」になるのが、本から得た先輩経営者の知恵です。とはいえ、朝の時間に1冊を読み切るのは難しいもの。そんなときは、ビジネス書などの要点を1冊10分ほどで読める本の要約サービス「flier(フライヤー)」を使うのもひとつの方法です。ノートを書く前の10分を、要約を1本読む時間にしてみるのもおすすめです。
まとめ
- 社長の朝の1時間は、会社の未来を考えられる唯一の時間
- 朝はメールを見ず、数字の確認と「今週いちばん大事なこと」を決める
- 朝の時間をつくるために、やめることを決める
- 社長の状態は、そのまま会社の状態になる
会社を立て直すのに、特別な才能や大きな資金は必要ありませんでした。必要だったのは、立ち止まって考える時間だけだったのかもしれません。
明日の朝、いつもより30分だけ早く起きてみませんか。コーヒーを1杯いれて、ノートに「今週いちばん大事なこと」を1つだけ書いてみる。それだけで、1日の景色が少し変わるはずです。
同じように小さな会社を経営している方の、朝の過ごし方もぜひ聞いてみたいです。
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