第23話

 戦艦 飛鳥では、窓から入って来た謎の粉末を分析した。
「この粉末には催眠効果がある。」
「吸うとどうなするだ。」
「体が重くなったように感じ、動きにくくなる。」
「という事は、もしヤマトにもこの粉末が入って来ていたとしたら・・・」
「確かに、ブラックホールが近いから重力が強い。しかし、実際には思っているほど重力は強くない。粉末による催眠効果で体が重く感じていたとしても、それをブラックホールの重力のせいだと思ったら、実際には未来へタイムスリップしていないにもかかわらず、あたかも未来へタイムスリップしたかのように勘違いしている可能性がある。」
 飛鳥が宇宙空間を旅していると、銀河戦艦 大ヤマト号を発見した。

「ヤマト発見。このままではヤマトはブラックホールに吸い込まれる。」

「重力波砲、発射準備。」

「重力波砲?」

「ブラックホールとは反対の方向に向けて重力波を発射して、その重力波でヤマトをブラックホールから引き出す。」

「発射。」

 戦艦 飛鳥はヤマトから見てブラックホールとは反対の方向に向けて重力波砲を撃った。

 

 飛鳥での出来事とヤマトでの出来事について、時系列は不明である。なぜなら広い宇宙では相対性理論の効果により、時間の概念は地球での常識が通用しなくなるからである。

 惑星 大技術に着地しているヤマトでは。

「何を観測してるんだ?」

「戦艦 飛鳥だ。」

「戦艦 飛鳥って、地球の。」

「戦艦 飛鳥の中の時間はゆっくり流れている。今は西暦96億年。このままでは戦艦 飛鳥は西暦96億年よりもさらに遠い未来へタイムスリップしてしまう。」

「しかし、相対性理論による時間の遅れは、お互いに相手の方が時間が遅れていると主張する。つまり、飛鳥にとってはヤマトの方が時間がゆっくり流れていると主張している事になる。」

「飛鳥もブラックホールで西暦96億年へタイムスリップして来たのだろうか。」

「詳細は謎だ。」

 ヤマトでは、飛鳥の方からワームホール砲が飛んできた。

 地球にはヤマトと飛鳥が現われた。ヤマトと飛鳥は地球へ帰って来たのである。

「ヤマトと飛鳥が帰って来た。」

 地球の人々は言った。

「ここは地球か?今は西暦96億年か?」

 ヤマトの戦闘員は言った。

「西暦54億年だ。」

 飛鳥の戦闘員は言った。

 ヤマトはいつの時代を旅していたのだろうか。ヤマトは西暦96億年の未来へは行っていなかったのだろうか。それとも、一度西暦96億年の未来へ行って、西暦54億年に戻って来たのだろうか。また、ヤマトは惑星に着地していたにもかかわらず、なぜ惑星ごとではなく、ヤマトだけが地球に戻って来たのだろうか。

 地球の人類にはもう会えないかもしれない。ヤマトはそういう状況だった。地球の人類の期待を裏切る事になるかもしれない。ヤマトはそういう状況だった。

 人間というものは、例え果てしなく長い時間がかかるといえども、いつか未来には他人を思いやる心を身に付けるものなのである。しかし、それはあくまでも理想でしかない。なぜなら人間の命には限りがあり、他人を思いやる心を身に付ける前に死ぬ可能性があるからである。だから実際には、いつかは他人を思いやる心を身に付けるという事は実現不可能であり、せいぜいそうであってほしいという願いでしかないのである。自分勝手に生きてそのまま死んでいくという事は、自分のために思いやりの心を持って接してくれた人たちを裏切る事になる。そして、他人を思いやる心を身に付ける前に死んでしまった場合、残された人たちは自分の事をどう評価するのだろうか、という事を考えるなら、自分が死ぬ時が近づいた場合、せめてみんなに自分についてのいい思い出を残してもらうために、みんなに尽くす生き方をして死んでいくべきである。健康な時でも、常にそれを心がけて生きていくべきである。

 地球を救う期待を背負って旅立ったヤマト。人類はついにヤマトに会えずに絶滅していくと思われていた。しかし、ヤマトには再びチャンスが与えられた。

 命が助かり、予定よりも長く生きられるようになった場合は、残りの人生を、自分の命を救ってくれた人に恩返しできるような生き方をするべきなのである。

 我々は多くの人々の期待を背負って生きているのである。