秋葉系ドッヂボール部は初の練習試合を迎えることになった。
俺たちはがんばった。キャサリンが見ているときだけ。
俺たちはののしり合った。キャサリンが見ていないとき。そして・・・
―― 練習試合当日 ――
「いい!?みんな!緊張するのは分かるわ!でも私はあなたたちが勝つって信じているわ。がんばってみんな!!」
普段は死んだ魚のような目をした男性部員たちも、キャサリンが声をかけると戦場に向かう猛者たちのようなおたけびをあげて応える。
「どんな相手か知らんが、おいどんがコテンパンにやっつけてやるから見ていてくれでごんす!」
と言って牛川はおにぎりをほおばる。
「キャサリンの応援があれば100人力だよ!」
と田代は青白い顔で笑顔を見せる。みんながキャサリンにアピールしているが、ナルシストの山田はいつになくそわそわしている。
「ちょっと僕、トイレに行ってきますね・・・」
と言ってそそくさと一人トイレに向かう姿からは緊張の様子が伺えた。
そうは言っても山田以外の部員たちも初めての練習試合で少なからず緊張はしているのだろう。キャサリンに練習しているふりしかしていないメンバーで勝てるわけがないのは分かっていたし、なるべく弱い相手で、少しぐらいねばれてカッコいいところを見せられればいいなと願っていた。
すると「ぎゃー!!」と山田の叫び声が聞こえた。声のしたほうを見ると、そこには3メートルはありそうな黒人に胸ぐらをつかまれて宙吊りにされている山田の姿があった。一瞬で男子部員の間に不吉な予感が走った。しかしキャサリンが山田を助けに向かったので、仕方なく男子部員たちも後に続いた。
「こらー!あなた何やってるの!!山田君をはなしなさい!!」
キャサリンがそう言うと3M級の黒人はこちらをにらみつけてきたので男どもはキャサリンの後ろにさっと隠れた。
「あん?こいつが先に俺様にぶつかってきたんだぜ。今、どう始末してやろうか考えているところなんだ。邪魔すんじゃねえよ」
山田は苦しそうにもがいている。すると、黒人の仲間と思えるやつらが集まってきた。
「おい!ビッグ・J!そのおもちゃ俺にくれよ!なあいいだろ!?なあボンソンからもあのおもちゃくれるように頼んでくれよ!」
「へい!ジョニー、そんなこと言って、この前のおもちゃもすぐに使い物にならなくなったじゃないか」
日本の景観に似つかわしくないギャング集団たちは何だか恐ろしいことを言っている。するとビッグ・Jという名の巨人が俺たちを見下ろしてさらに恐ろしいことを言った。
「あんたらひょっとして今日の練習試合の相手かい?」
不吉な予感はあたってしまった!!これは病院送りにならないうちに山田をささげて帰るべきだ。
しかし子犬のように震える男子部員たちをよそに、キャサリンは勇敢にも言ってのけた。
「山田君をはなしなさい!文句があるならドッヂボールで勝負すればいいでしょ!!」
それを聞くと、ギャング集団たちは不気味に笑った。
「いいだろう。俺たちM・F・D(マザー・ファッカー・ドッヂボール部の略)が相手してやるぜ。グエッフェッフェッフェ!!」
できることなら土下座でも何でもして帰りたい。靴をなめろと言えば喜んでなめる、それが秋葉系ドッヂボール部の男たちの本音だ。しかし、キャサリンが見ている前でそんなことはできない・・・。
「あわわわわわわ」
勇敢すぎるキャサリンと恐ろしすぎる相手チームのはざまで男子部員たちはおろおろとうろたえるばかりだった。
