今日はぽかぽか天気のよく晴れた日。
こんな日はダラダラしながらベッドから起き上がることなく窓の外をぼーっと見つめるんだ。
そして今夜の晩酌は何にしようかぼんやりと考えていると、どこからか一匹の黒猫がベランダにひょっこりと姿を見せた。
「しっ!しっ!」と2回3回手を振ったけど、全然猫は動じない。
じーっとこっちを見ているけど、まあ別に面倒くさいからほっておいた。
すると黒猫が話しかけてきた。
「あわれ、煩悩におぼれし者よ。おぬしの頭にはまたたび(=酒)しかないのか?」
やれやれ、小汚い猫がやってきたと思ったら急に説教かい?
どうして俺にはこんな変なやつばかり寄ってくるのかね・・・。
「こら。人間さまに説教とはずいぶんと生意気な猫だな」
「おぬし、目上の者に対する言葉使いがなっていないな。私は生まれて15年ほどだが、それは人間でいえば還暦を過ぎているほどの年齢にあたいするのだ」
「はあ、そうですか」
「はあ、そうですかじゃないよ。人という字は人と人が寄り添う形をしている。こんな部屋に閉じこもって一人でいたらダメだぞ!」
「まあ、そうなんですけどね。面倒くさいんですよね・・・。ところで黒猫さんは名前はなんというのですか?」
「名は捨てた。かつては人に飼われていたが、出家して悟りを深めるために全国を放浪しているのだ」
「大変ですね」
「仏のご加護があるので心は満たされているぞな」
「心は満たされても、腹は減りますな。昨日の酒のつまみの残りですが、魚肉ソーセージならありますが」
「うむ、修行の身。ぜいたくは言うまい」
黒猫さんは偉そうなこと言っていたものの魚肉ソーセージを食べおわってもしばらく前足についた味もぺろぺろとなめていた。
「うむ。ごちそうになった。おぬしに仏のご加護があることを」
「ところで、猫のあるべき生き方って何なんですかね?」
「うむ。猫は『けものに苗』と書く」
「意味わからないですね」
「そうだな。ワッハッハッハ」
お腹が満たされた黒猫さんは機嫌よく笑うと、また修行の旅の続きのためにどこかへと消えていった。
(続く)
