この世のはじめには、大空いっぱいに空飛ぶゾウがいた。


 重い体を翼で支えきれず、木のあいだから墜落しては、


 ほかの動物たちをあわてふためかせることもあった。




 灰色の空飛ぶゾウたちは皆、ガンジス川のみなもとに移り住んだ。


 そして、翼を捨てて地上で暮らすことにした。


 ゾウたちが翼を脱ぐと、無数の翼は地上に落ち、


 雪がその上をおおってヒマラヤ山脈が生まれた。




 青いゾウは海に降り、翼はヒレになった。


 ゾウたちはクジラになったのだ、大海原に棲む鼻のないゾウに。


 その親類にあたるのがマナティ、川に棲む鼻のないゾウだ。




 カメレオンゾウは、翼は捨てなかったが、


 もう地上には降り立たないことにした。


 眠るときに、カメレオンゾウたちはいつも空のおなじ場所で横になって、


 片目を開けて夢を見る。




 夜空に見える星は、眠っているゾウたちの瞬きをしない目。


 ぼくたちのことをできるだけ見守ってやろうと、


 片目を開けて眠っているゾウたちの。






                              ashes and snow