当院の非常勤医師の丸山隆志先生(東京女子医大・脳外科)
の産経新聞月イチ連載・最新コラムです.(2023.8.30)
高次機能障害は聞きなれない病名かもしれませんが、脳の
病気の後に少なからずこの状態を経過することが多いのです。
脳の損傷が理由で認知・物事を見たり聞いたりして、それが何で、どうすればよいかを判断、解釈する能力が障害されること
です。言葉がうまく話せない(運動性失語)、聞いても理解が
できない(感覚性失語)、手順通りに作業ができない(失行)、物や人の認識ができない(失認)などに加え、記憶、注意、
遂行機能、社会的行動障害など脳の働きが低下した時に生じる
症状の総称です。皆さんがご存じの認知症のような症状が若く
して部分的に現れてしまうのです。
脳卒中など脳の病気の多くで回復の過程で一時的に現れます。治ってしまえばよいのですが、症状が残る場合もあります。見た目も話していることもほぼ正常なので、本人も周りの人も気が
つきにくい症状です。しかし、大事な約束を忘れたり、仕事の
手順や、少し前のことを覚えられなかったりと、小さな不都合
が続きます。家庭のなかではなんとかなりますが、仕事の場
では小さな失敗が大きなトラブルに発展してしまうこともあり
ます。
問題は、時間が経過し、診察の間隔も長くなり、リハビリテーションも終了しているために、症状に気がつかないままになっていることです。短い診療時間のなかでは、医師側も気がついて
あげられません。日常での小さなエピソードを書きとめておき
ましょう。問題がわかれば、症状に応じて検査を行うことが
できます。脳の障害の場所と症状が明らかになれば、回復を
目指すことができるかもしれません。ちょっと気をつけるだけ
でもトラブルは未然に防ぐことができるようになります。
高次機能障害への支援の輪は着実に広がっています。関東の
方は「東京高次脳機能障害協議会」、関西は「大阪府高次脳
機能障がい相談支援センター」のサイトをみてください。
脳腫瘍と高次機能については、わたしのサイトでも解説して
います。(脳神経外科医 丸山隆志)
【丸山隆志:公式ホームページ】
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