たまには,症例提示を.
右乳がん術後・多発骨転移の50歳台の患者さん.
再発後,標準治療やホルモン剤治療を行ってきた.
提供されてきた標準抗がん剤治療はそれなりに効いている
ようだったが,下痢・嘔気といった副作用がQOLを下げて
どうにもならない.
これ以上,標準治療はいいかな?と思っていた頃合いに,
縁あり当院へ.
イリノテカン,ベバシズマブ等の少量使用で腫瘍マーカーの
勾配にブレーキがかかり,のらりくらりとした効きはある
ように見えるが,どうも抗がん剤投与後は体調が優れないなど,治療としてはトータルでイマイチの印象.
本人は,「自分は昔から薬に敏感な体質だから,少量でも影響
が出るのでしょう」と言われるが,こっちはどうもスッキリ
しない.もう少し「合う」薬を探れないか・・・と試行錯誤.
目指せ,副作用ゼロ.
結局,エベロリムス(アフィニトール®)に行き着いた.
同薬は,以前効果が確認されていた薬剤だが,下痢の副作用
が辛く継続を止めた薬剤だった.
エベロリムス10mg/日投与のところを半分量の5mg/日にして
みたところ,腫瘍マーカーは順調に減少し,体調も実に良い.
以前苦しんだ副作用の下痢もない.
仕事に影響なく,QOLも損ねない.ならば,これが現時点での
患者さんの「最適薬剤&適量」と判断した.
一般的に,少量抗がん剤治療ではがん細胞の多様性に対応
するように薬剤を拾い上げて行く必要があり,単剤ではなく,
いくつかの薬剤の組み合わせが治療に必要になることが
多いが,これはこれでOK.
もっとも,敵(がん)がさらに動き始めたときの次の一手は
既に頭の中にスタンバっている.