CART+少量抗がん剤治療 | 「あとは緩和」といわれたら

「あとは緩和」といわれたら

少量抗がん剤治療(がん休眠療法)で
元気に長生きを目指す ー

50歳代,乳がん術後の女性.

がん性腹水・がん性胸水の患者さん.

 

約1年前,当院受診時,毎週,腹水穿刺を

行っているためか,体力を消耗し,

フラフラの状態で来院する.

 

大病院での手術後,標準抗がん剤治療を希望せず,

ホルモン療法のみを行っていた.

 

地元の医療機関で,

CART(腹水濾過濃縮再静注法)も行っていたものの,

CARTは腹水の原因となっているがん“そのもの”の治療には

なっていないため,病状全体はジリ貧である.

 

こういう時,少量抗がん剤治療が腹水コントロールに

結びつき,CARTから離脱できる症例が少なくない.

 

 

実際に少量抗がん剤治療で,腹水貯留にブレーキが掛かり,

CARTから離脱した患者さんを前にした地元主治医が,

少量抗がん剤治療を同施設にて行ってくれることになった.

 

とても有難い.深謝.

 

患者さんが,CARTを受けていたのは,

100床未満の民間病院なのだが,

 

こういった中小規模の民間病院は,

大病院にはない,使い勝手の良さがあることがある.

 

何よりも,倫理委員会なる小うるさいものがないため,

医師個人の責任と判断で,柔軟にその場で

いろいろとやれるというのが大きい.

 

大病院はハード・ソフトが充実するなど,

中小民間病院では,カバーできない利点が多いのは事実だが,

 

一方で,組織が大きくなるに連れ,

大組織故に融通や柔軟性は限られていく.

 

特に大学病院やがん専門病院等,

“看板”が立派になればなるほどその傾向は顕著になる.

 

逆に“看板”が小さいほど,医者は自由だ.

 

実は,“がん難民”と呼ばれる患者さん達に必要なのは,

医療組織側の融通や柔軟性だったりする.

 

一般に,患者さんたちは,

大病院の“看板”に目が行きがちになるが,

もっと民間の中小規模の医療機関に目を向けることで,

患者さんの希望ややりたいことに対して

それらの幅が広がるように思う.

 

実は,患者さんにとって使い勝手のいい良医は,

中小民間病院にいたりするものだ.