『医師である,あなたががんになったら,
どのように治療しますか?』
と某雑誌の取材を受けた.
私の場合,
ブレることがないであろうから本ブログにも書いておく.
①まずは,がんの状態や広がりといった
病態を正確に把握する.
②病態を把握したら,切除可能か否かを検討する.
③切除が出来うるのであれば,手術を第一選択とする.
何と言っても,固形がんの場合,根治に繋がるのは,
基本,手術だから.
④諸処の事由で手術が適応・導入にならない,
あるいは術後に再発・転移し,
“治らない・治りにくいがん”に
自分のがんが分類された場合,
『線と点の治療』で対応する.
⑤『線の治療』にあたるのが,継続療法の
・少量抗がん剤治療
・緩和ケア の2つ.
『点の治療』にあたるのが,状況に応じて,
ピンポイントで導入する,
・血管内治療(肝・縦隔・肺門部病変に対して)
・ラジオ波焼灼術(肝臓病変に対して)
・躯幹の放射線治療(疼痛&局所コントロール目的)
・脳転移の放射線治療(γ-ナイフ,サイバーナイフ他)
の4つ.
これら6つの治療法を,
病態に合わせて組み合わせながら治療を進める.
標準抗がん剤治療は,一部の内容を除き,
自分に導入することはないだろう.
副作用で動けなくなると,仕事に影響が出て
患者さんに迷惑がかかるから.
日野原重明先生ではないが,医者は一生現役なのだ.
⑥巷の免疫療法(活性リンパ球,樹状細胞療法等)は,
どういう位置づけ?と問われれば,
あくまで補助療法としての扱い.
免疫療法は,「えっ?マジ?」と
ビックリするような効き方をすることがあるのも
事実なので,一度くらいは導入を考えたい.
そして,免疫療法として導入するのであれば,
樹状細胞療法と同じコンセプトで,
かつ,1コースのみの施行で治療が完結する
『自家がんワクチン療法』 を選択する.
私の巷の免疫療法に対するスタンスは以下のごとく.
・効いていないと思ったら止める.
・必要以上にお金をつぎ込まない.お金の無駄だから.
⑦その他の補助療法(例: CART; 腹水濾過濃縮再静注法)
は必要に応じて導入する.
⑧高濃度ビタミンC療法を始めとした補完代替療法を
優先的・積極的に適用することはないかな・・.
がん治療では,優先すべき治療や
“生きた”お金の使い所・順番があると思うから.
とまぁ・・以上,
自分ががんになったときの治療方針かな・・・
結局,現在進行形で,
当院の患者さんに行っている主軸のところを,
そのまま自分にも適用するということやね.
ただ,患者さんの話になると,これだけに限らない.
患者さんの希望ややってみたいことは
全部応援したいと思っている.
だから,ビタミン療法その他,補完代替医療も
よほど治療の妨げにならなければ,全てOK.
知り得ている範囲で,多少なりとアドバイスもできるだろう.
但し,“お小遣い”の範囲でやるようにとも指導している.
がん診療医は,
がん細胞の「多様性」だけでなく,
患者さんの「多様性」に対しても
如何に対応するか,していくか・・・
人の“多様性への対応”こそが,
がん診療に求められるもっとも重要なポイントだと思う.