子宮体癌・腹膜播種・癌性腹水症例.
標準抗癌剤治療は副作用がつらくドロップアウト.
その後は,免疫療法,温熱療法,その他
いろいろ代替療法を行うも効果は認めず.
縁あり,当院での低用量抗癌剤治療の導入となる.
治療による副作用もなく,腫瘍マーカーのコントロールは
まあまあであったのだが,癌性腹水のコントロールが
いまひとつ.
CA125は腹膜播種のマーカーとして
使用することが多いのだが,
CA125値の上下と腹水の増減は必ずしも
連動しないことはしばしば.
低用量抗癌剤治療による腹水コントロールは
上手くいく時は上手くいくが難しい時は難しい.
利尿剤も効く人には効くが,効かない人には効かない.
その他の,腹水コントロールを目的とした,
水分制限,アルブミン投与,ステロイド投与等の
教科書的な試みは,総じてピリッとしない.
コントロールの難しい腹水貯溜症例に関しては,
やはり,必要に応じて腹水穿刺が必要となる.
溜まっている水を,物理的に取り除くことで苦痛の除去を
図るということになる.
また,本症例は患者さんの希望もあり,
CART(腹水濾過濃縮再静注法)という処置を併用した.
CART研究会
http://www.fukusui-cart.com/about/
【CARTの可能な医療機関】
http://www.cart-info.jp/clinic/
CARTは本来,最低1泊2日の入院措置が原則.
細かいことは省くが,全行程は
それなりに手間と時間がかかる.
普通は1日がかりの処置と考えていい.
当院では,患者さんの希望に沿う形で,
時折,CARTを外来にて施行することがある.
但し,
・穿刺腹水量は2000ccまで.
・全身状態が良好.
・食欲がある.
・入院加療を希望しない.
というのが,外来でのCARTの適応条件.
あくまで“当院の”であることに注意されたし.
穿刺量2000ccは少ないのでは?と問われれば,
これは,外来での安全性と処置に対して確保できる時間
の両側面から打ち出した条件.
つまり,
“痩せた小柄な体格で,2000ccくらいの腹水の溜まりでも,
著しくお腹が張って苦しくなり,生活の質(QOL)が
低下する患者さん.”
が,当院のような外来クリニックレベルで
安全にCARTが出来うる適応条件を揃えた
“患者イメージ”となる.
CARTは入院措置が原則であり,すべての患者さんが
外来で対応出来るわけではない,
ということはだけは強調しておきたい.
★φ(-_- 。)・・・
※当院での低用量抗がん剤治療症例が
2012年4月の時点で総数400症例を超えました.
その中からの経験症例を少しずつ紹介していきたいと
思います.
※低容量抗がん剤治療・・・
細かいことをいうと微妙な定義の違いはあるようですが,
当院ではがん休眠療法,メトロノミック療法と呼ばれて
いるものとコンセプトは同じと捉えています.
本ブログでは低用量抗がん剤治療の呼称を使用します.
※当院の治療は,同一がん種においても使用する抗がん剤の
内容・投与量は個々の患者さんの病態・治療歴・その他の
諸条件により様々です.
そのため,提示した患者さんに行っている薬剤使用法が,
ブログをご覧頂いている患者様にそのまま適用できるという ものではありません.
読者の皆様に,そういった誤解を与えないために本文中では
使用薬剤についての記載を省いてありますことをご了承くだ
さい.
2012年4月
銀座並木通りクリニック
http://www.ginzanamiki-clinic.com/