●旅空香高堂=久米島ヒストリー②南東食楽園の人情シークワサー

 2日目、3日目の夜はホテル近くの<南東食楽園>に予約して赴く。店舗の外見はファミレスの様だが、中は落ち着いており、久しぶりに沖縄の味を楽しめた。ここで、メニューに<久米仙グリーンボトル>を見つけ、やった、やっと呑めると安堵した。人の好げな御主人らしき人に訊くともう生産中止になると言う。

 グリーンボトル談義をしながら、小さなスーパーならまだ手に入るかもしれないと言われるので、翌日午後はスーパー巡りになった。さらに観光協会まで行き、久米仙の工場まで電話を掛けたが、なかなか手に入らない。

 翌日も南東食楽園に出向き、昨日の残りを持参したら「どうぞ、それをまず呑んでください」と言われた。ならばと、在庫がある2本を買うことにした。シークワサーは夏頃からと思っていたが秋だという。ご主人が自宅の庭に<シークワサーの木>があり、まだ小さい実をもぎ取ってきて出してくれた。久米島の人々の心の気持ちは優しさに尽きる。

 

 さて、メニューを見ると懐かしいヤコウガイがあった。夜光貝と書くが、屋久貝(やくがい)が転じたものと言われており、サザエ類の中では最大の巻貝だ。種子島以南の海域に分布し、比較的浅いサンゴ礁斜面域に多く、ツブ貝とホタテの間のような食感を感じる。

一方、ホールで活発に動く女性二人は手際よく、料理もタイミングよく出て来る。チャンプルーもゴーヤだけでなく、トーフやフーなどメイン食材を変えたメニューになっている。亀よしが昔ながらの島料理なら、ここは素材の味を活かした今時の島料理と言える。厨房に腕の良い料理人がいると見たが、現れてこない。

 

 塩が沖縄料理の基本。7月7日、七夕なんぞは全く忘れて、今夜は何処で食べようかと悩む。それぞれの店の定休日がズレている。食楽園は定休日なので、久米君の友人がやっている創作沖縄料理の<島の猿>にした。ホテルの泊り客が「イタリアンと中華が食べたいがお店が無い」と言っていたが、確かにその文化が見えない。島料理と焼肉が人気の様だ。ここは若い客ばかり、派手な女の子4人が入ってきたが、後からダイビングインストラクター風の男の子二人が来たが、なんとスマホでゲームに集中、ほとんど話をしていない。

 

 ここでは、塩味の麻婆豆腐があった。沖縄の味は塩の使い方の旨さだろう。出汁は鰹節と昆布を活かすが、鰹節は薩摩藩から中国への密輸品、昆布は北海道~日本海ルートで持ち込まれ、那覇経由で中国へ輸出された。一方泡盛や唐辛子を調味料として使い、炒める、煮る、揚げるなど調理方法は中国的だ。島豆腐を使ったチャンプルーも今はゴーヤだけでなく、お麩を使って調理されている。

 

 戦後、日本と中国の間で長年生き抜いてきた知恵に米軍が持ち込んだ食材や調味料が加わった。ふと考えるとトマトがあまり料理に使われていないことに改めて気が付いた。観光客のイタリアンと言うのはピザなどのトマト味かもしれない。薄っぺらなシナリオの朝ドラが沖縄そば麺でナポリタンといっていたが、食文化を知らない料理コ-ディネーターがTV界に多くなっているようだ。