●香高堂食文化記=うまみをうま味とは、味の素なことをする。

 

上手い話には必ず裏があり、美味い話には出汁がある。<うま味>と言う言葉にずっと違和感、異和感を感じてきたが、食品業界は不可思議なところで、何かウマミがあるようだ味の素など、たった4社で構成する<日本うま味調味料協会>はこう言っている。

【うま味は<5つの基本味(甘味・酸味・塩味・苦味・うま味)>の1つで、おいしさを表す<旨味・旨み・うまみ>とは区別して使われます。おいしさは味だけでなく匂いや食感、その場の雰囲気や体調など、多くの要因に影響されて感じるものです。】

 

 

漢字とひらがな、日本語の感覚や使い方は難しい。テレビ番組の食レポで必ず出て来るのが「うまい、うまみがある」の一言、この時何を感じて言っているのであろうか。人間の味の感覚表現だろうと思うが、<旨味・旨み・うまみ>とは違うものらしい。基本味とは「他の味を混ぜ合わせてもつくることのできない独立した味」のことをさすようだが、<辛味や渋味>が基本味で無いのは人間感覚として不可思議だ。

 

舌には味細胞があり、味につながる化学物質を受容体が受けとると信号が脳へ行き味として認知される。うま味は長い間「そんな味覚はないのでは?」と疑われてきたが、2002年受容体が発見され、国際的にも<UMAMI>として認知されるようになったと言う。さらには<辛味や渋味>は受容体がなく、痛さや温度の違いなどから総合的に感じ取っているものなので、基本五味とは別のものと整理されている。

 

どこか、我々の感覚と違う何かの作為を感じる。戦後の日本では味の素が大量に使われ、東南アジアでは<味の素料理>とも言われた。調理に必要な「味の素」を用意しなかったTV番組制作スタッフにタレントが激昂し、調理を放棄してそのまま帰った事件があった。またイスラム圏で発酵菌の触媒として<豚の酵素>を使用していた「インドネシア味の素事件」と呼ばれるものがあった。

 

マレーシアのペナン島に<通い夫>をしていた時、アジア料理には必ずと言って良い程味の素が使われ、<味の素>味の味覚を今も舌は覚えている。味の素が創り出したグルタミン酸の影響は大きかったが、今は<うま味調味料>として表示されている。日本うま味調味料協会は「グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸などのうま味成分を水に溶けやすく使いやすくした調味料です」と言っている。

 

 

私見だが「うま味」は基本味ではないと思える。<美味しさ>は味覚だけでなく匂いや食感、その場の雰囲気や体調など多くの要因から生まれ、視覚、臭覚(香り)、触覚(食感)、聴覚(噛む音)など五感を得て<ハーモニー>から生み出されるものと思う。そして素材の持ち味から醤油や味噌、塩など各種調味料やハーブなど香草が活かされ、全体の味が調和して感じることが<旨味=うま味>であろう。<うま味調味料>のことを信じてはいけない。

<AI>という調味料を使って<デジタル>という魔法のスパイスを振りかければ、たちまち<well-being>というような軽佻浮薄な話になってしまう。