●香高堂世迷言記=聞く聴く訊く効く利く

 

歩きスマホだけでなく、件の禍のお陰で自転車スマホも多くなり、しっかりと前を見ていないとぶつかりそうになる。前ばかり見ていたら、後ろから走り来て追い越す自転車にも冷っとさせられる。尾身株が蔓延する中、「匂いをかぐ」の意味の「聞香=もんこう」により、「聞き活かす力」を身につけ、知識と感覚の深い精神世界に入りたいと思うのだが。

 

「見聞」「伝聞」「百聞」と言う言葉があり、「百聞は一見に如かず」「見聞を広げる」ことで知識や経験が増える。一方、音を聴く感覚は「聴覚」だが、質問をしたり尋ねたりする時に「聞く」を使うことが多い。自分にとって関心がないことは記憶に残りにくく、情報をしっかり受け取れない。そこで相手の話を「聞き」、必要に応じて質問を投げかけながら、相手との理解を深めるのが「傾聴する」ことだ。

 

より感情や言葉の意味を知るためには「聴く」ことが大切で、コミュニケーションを円滑にする。一方、尋ねるという意味を持つ「訊く」もある。さらに「効く」は「薬が効く」、「利く」は「鼻が利く・目が利く・口を利く」など感覚的なものに使われ、「機転が利く」「融通が利く」など頭脳的な意味もある。

 

ところで、聞く前、聴いた後のは<思考する>することが大切になる。保守派の長老として戦前戦後に亘って活躍した安岡正篤は<長期的な視点・多面的・根本的>と言う「思考の三原則」を説いている。人間はモノゴトを考えるときに、思惑や目先の利害にとらわれてしまい、適切な判断ができないことが意外に多い。検査キット不足はこの思考の3原則がないがしろにされている。

 

 

マルセイユで売られていた耳なし芳一状態のマッシュルーム。

昔、ラジオ局にいた頃、社内に流れるラジオを聴きながら仕事をしていた。スタジオではいくつかのスピーカーから流れる音を聴き分けなければならない。一方、音が鳴っていると集中出来ないからと言う人もいる。それにしてもラジオを聴く姿や場を見ることが無くなった。若者が街角で、イヤホンで聴いているのは音楽だけなのであろうか。

 

◆日本新聞協会の『新聞用語集』は表記の使い分けを以下のように示している。

・聞〔一般用語〕うわさを聞く、聞き捨て、聞き流す、聞く耳持たぬ、話し声を聞く、物音を聞く

・聴〔特殊用語。身を入れてきく〕音楽・講義・国民の声などを聴く

放送でも、このような考え方をもとに表記の使い分けをしています。

また、「聞き入る」「聞きただす」「聞きほれる」「聞き耳を立てる」など複合語の場合は一般に「聞」を使います。雑誌などでは「尋ねる」「問う」の意味にあたる「道をきく」や「都合をきく」などの表記が「訊く」という文字が使われていることがあります。しかし、この字は表外字(常用漢字表にない字)で、放送では「聞く」または「きく」と表記します。