●風英堂食文化考=ウニ妄想、素朴と粗野な料理の違い

 

昨年の日本帰国後、美味しい<生雲丹>を食べたかった。ミョウバンの効き過ぎた瓶詰でもなく、持ち帰り寿司でもない、高級な鮨屋で食べるような雲丹だ。だが街中は高すぎてなかなか買えない。「印象派・光の系譜」を見た後に、暗鬱な色彩感に包まれてしまった。時はまだ19時半、帰途についていた。

 

 

12月21日、三菱一号館美術館で「印象派・光の系譜」を見てきたが、その展示作品から「光」を感じるものは少なく、レッサー・ユリィの作品だけが印象に残った。夕方館内のカフェは予約で満席、中庭で久しぶりにシェリー酒を味わう。丸の内仲通りのブランドショップの灯りが眩いばかりだが、クリスマスイルミネーションも心なしか光褪せて感じる。

 

 

 

日比谷線で築地へ、友人を通じて予約しておいた有名なイタリアンの店に向かう。懐かしのナポリピッツアが美味しいと言う。先ずは前菜に<イカとトマトの窯焼き>、オーナーの方針らしいが、イカの大きさにびっくり、ただニンニクの味だけが舌に残る。そして、ピッツアは半々で焼いてくれると言うので、マルゲリータと生ハムの合わせ。パンチが今一つも久しぶりに美味しくいただく。

 

これでほぼお腹が一杯だったが、家のカミサマがメニューを見て、今日のスペシャルだし、生ウニのパスタが食べたいと言う。量も少なめにして食べ始めるが、パスタそのものは味があるが、雲丹は何とも生臭い、フライパン上で和え過ぎか。もしかして瓶詰と疑いながら食べ進むが、カミサマは既にフォークを置いていた。生臭さを感じないようにするため、載っていたビスタチオの追加かバジルをもらえないかと頼むが、「オーナーの味は変えられない」と言う。

 

 

素朴であり、野性味のある料理は好きだが、粗暴な調理は好まない。それにしても、東欧風の濃い味のサラエボでも、イタリアンが美味しくないマルセイユでもこんなに生臭さを感じることは無かった。回る寿司屋では承知の上で頼むことはあるが、街の小さなイタリアンでは期待することはしない。だが、一応世間では有名店らしい、オーナーの味はあるにしても「客の意見や感じ方は無視して良いのだろうか」と考え込んでしまった。

 

 

そして24日のクリスマスイブ、ごくごく普通に夕食。25日クリスマス、どうやら日本でフランスパンが1番売れるのクリスマスらしい。チキンはケンタッキーかファミマ、ケーキはどうしているのか、ローストビーフもクリスマスの食べ物らしいらしい。

帰国後やっと探し当てた近所の小さなパン屋さん、美味しいバゲットの手に入るが、この日は昼間から売り切れで夕方焼く分を予約してやっとゲット出来た。日本人の食生活がどうも分からない。