●風英堂メディア文化考⑤オールナイトで100匹のカメを見る?

 

過日「オールナイト100カメ」なる番組が放送されるから見て欲しいという依頼があった。「100匹の亀が池の淵に佇んで人間を観察する」「100人がオールナイトでカメの生態観察する番組」などと想像した。どうやら違う様で、ある場に100台の小型カメラを設置し、あらゆる視点で人々の生態を観察するNHKの新感覚ドキュメンタリー番組らしい。

 

 

今回の「のぞき見ドキュメント100カメ」は、ニッポン放送のオールナイトニッポンの現場に潜入し、オフィスやディレクターが集まる制作ルーム、打ち合わせを行う会議室、編集室、CDルームなどにカメラを設置。スタッフの番組作り、生放送の様子に密着した番組だった。だが、カメラが100台と言うだけで、その意義は伝わらず、単に映像が映し出されるだけだった。

 

どう転んでも番組ディレクターや放送作家たちの日常を見ても面白い訳がない。100のカメラがあっても、そこに生きる人々の生活感や人間味を映し出さないと感動を与えられない。MCの若林正恭と春日俊彰のコメントもつまらない。唯一興味深かったのは、富山Pの企画会議の仕切り方。各企画直ぐに結論を出さず、若手Dの話をきちんと聞いて、上から目線がなく見事なものだった。

 

ところで、この中で「二郎系ラーメン」の企画を出した若者がいた。ラーメンは好き嫌いもあるから一概に言えないが、こってり大盛系の何でもありラーメンの様だ。もしかして知人のラーメン店経営者、矢都木二郎の「麺屋武蔵」かと思った。矢都木二郎は出汁遣いの名手、ラーメンもラジオも出汁が効いているから旨味が出て来る。

きちんとした構成と視点を持ち、それを指示するのがプロデューサー、その素材を編集する手腕が必要になる。「旨味を踏まえて、時代の奇を衒う」のがラジオの本質である。いつの頃かラジオが聞かれなくなったのは「人間の個性の旨みを感じさせない」からだろう。メディアの制作者には「エスプリとユーモアを持つ批評性、そして先駆性が求められる。

 

この企画はNHKで放送されていた「ドキュメント72時間」の<時を空間>に変えただけの2番煎じだろう。同一場所で3日間、72時間密着は人々が行き交う街角、行き合わせた人々がどんな事情を抱え、何を考え、どこへ行くのか、様々な人間の生き様を映し出しているから面白いと感じる。

 

一方、ブラックバスはアメリカではゲームフィッシュの一つであり、日本でも糸井重里やキムタクがファッション的に始め、釣りの対象魚として人気が出てきた。だが肉食系の為、在来種の生存に影響を与え、生態系を破壊するとして認識されている。

海外から一時帰国していた頃、テレビ東京系列で「池の水を抜く」番組をやっていたが、生態系を破壊するブラックバスを駆除する番組かと思った。大掛かりなバラエティ番組のようで、どうせなら永田町を掃除してそこに巣くう悪徳者を駆除して欲しいと思うのだが。