●風英堂月隠記=メディア文化考②異論反論オブジェクション

 

テレビの報道番組は<ワイドショー>になり、ニュースからは肝心の現実、事実情報が伝わってこない。純粋な報道ドキュメント番組が少なくなっている中、TBSの<報道特集>が孤軍奮闘しており、取材力を高めているが、取材した記者にもっと喋らせるべきだ。

 

<筑紫哲也>と言うジャーナリストがいた。井上陽水は「筑紫さんの功績は、ユーモアの大切さを意識されていたことだと思います。この真面目な国では深刻そうに語ることが求められて、笑いや諧謔も不真面目だとか言って、許されないところがありますから。ユーモアを口にしたり受け止めたりするには、余裕がないとできません」と語っている。

 

筑紫哲也がキャスターをしていたTBSのNEWS23の中に「異論反論オブジェクション」と言うコーナーがあった。オブジェクションとは異議のこと、人間は本質的に個性あふれる存在である。自由で民主的な社会は「多数の異論が共存できること」が前提になっている。だから、国会は節目ごとに多数決で法律と予算を決め、状況の変化に応じて採決して歩んでいく場である。今やメディアに異論を唱える真のジャーナリストは数少なくなっている。

 

 

メディアの劣化は激しくなっており、テレビや新聞の論説委員上りの人々は、メディア経営者の政治家擦り寄りを許容しており、地位や金への執着に対し忖度発言ばかりしている。「もっと裏で上手くやれよ!」であるが、油断ばかりでばれてしまう。反対に真っ当な解説や異論対論が出来る人々は<官邸警察>により駆逐されている。「批判ばかり」でと同調を求め、意見―反論―合意という過程をないがしろにしている。ついには学界にまで介入の手を伸ばしてきた。

 

昨今の政権は「異論の存在は許さない」とメディアの統制を進めており、政府に批判的な発言をする者はその理由を問わずに露骨に排除される。一方、報道キャスターの高齢化が進み、60代や70代のキャスターが多く、コメンテーターも同じだ。もっと若手のキャスターやと思うが、弁護士上がりか論点ずらしの上手いコメンテーターばかりで、論点と向き合わない人々が多い。

 

ところで、71歳のジャーナリストの鳥越俊太郎がツイッターで「テレビでは相変わらずコロナ、いやオミクロンで大騒ぎだが、感染者数は減ったまま、増えない!第六波を予測、いや断言していたこの人達はどうするのかねぇ?それともやっぱり第六波来るか?」と。

何が問題点かを外し、揶揄する先を間違えた老害ジャーナリストここに極まるの図か。危うい、危うい、こちらも老害にならないように振舞わらないと。