~半月~

「私の心の傷にカンパ~イ!」
自嘲気味に微笑むキミとカウンターに並んで座っている。ほの暗い照明に映し出されるキミは、捨てられた子猫のように淋しげに見える。

「桜井クンがなんでそんな悲しそうな顔してるの?」
覗きこむようにキミは首をかしげる。
「悲しそうに見える?ん~なんでだろう」
ぎこちない笑顔ではぐらかす僕。
「心配してくれてるのよね、ありがとう。でも、私は大丈夫だと思う」
「ホントに?」
こくりと頷くキミ。
「カレと別れたことは、それは悲しいけど、ずいぶん前から決めていたことだから。嫌いになったわけではないけど、きっと私の問題ね。。で、今日はちゃんとケジメをつけてきただけなの」
「綾瀬さんの問題?どんな??」
「そうね、それはまた今度話しましょう。聞いてもきっと退屈しちゃうだけだから。。」
キミは力なく微笑む。

「料理が冷めちゃうわね、食べましょう?」
そう言って小皿に取り分けるキミ。
「いつでも聞くから、話したくなったら話すんだよ?」
「ありがとう」
手を止めて僕を見つめるキミ。
「でもね、あんまり優しいとわがままになっちゃうから、気をつけてね」
そう付け加えて、微笑んでいる。
「いいよ、わがままくらい。僕でよければ何でも応えるよ」
キミは何か考えるように前方を見つめている。どうしたんだろう。
「それじゃ、今度買い物に付き合ってくれる?」
と、思いがけない提案を口にする。
「えっ?あぁ、もちろんOKだよ」
「そう、じゃ決まりね。当然荷物持ちよね?」
「お姫さまのお気に召すままに」
頭を下げ、かしこまって答える僕に、キミは笑っていたね。
「こんなに若い爺やは初めてだわ」
「爺やって。。」
自然と笑顔になってしまう。そんなキミの不思議な力が、さっきまでのしんみりした雰囲気をかき消していく。


22時。新宿駅の東口改札にはまだ大勢の人がいた。
「今日はホントにありがとうね」
ぺこりと頭を下げるキミ。
「どういたしまして。少しは元気になれた?」
うなずいてキミは付け足す。
「桜井クンも何か悩みがあったら、私に相談してね」
「あぁ、そうするよ」
僕の答えに満足したのか、
「それじゃ、またね。買い物する日はまた連絡するから待っててね、爺や」
笑顔でそう告げるキミ。
「かしこまりました、お姫さま」
僕も笑顔で応じる。

ホームへと消えていくキミを見送った後、13番線に向かう。夜空には半月が浮かんでいる。失くした片割れを見つけられるといいね。そんなことを思いながら電車を待っていた。