~迷い~

朝7時、目覚まし代わりのCDから柴咲コウのinvitationが流れてくる。
「もう朝か。。」
そうつぶやきながら体を起こす。僕の心とは裏腹に、窓からは心地良さそうな春の陽が射しこんでいる。


「また今度ね、ばいばい」
キミはそう言って手を振っていたね。
また今度・・・。ひとり歩く帰り道で、僕は悶々としていた。こんな状態でまた会っていいのだろうか、キミを身代わりにしていないだろうか。僕の心の隙間の淋しさを紛らすためにキミを利用していないだろうか。。


嬉しいのに悲しい、そんな気持ちで新しい1週間を迎えた。
「ふぅ~」
ため息ともつかない深呼吸で、もう一度窓の外を眺める。春。この季節に生まれ、堕ちていく・・・。
考えてもどうなるものでもないし、とりあえず会社に行こう。ぱんっと両手で頬を叩き、気持ちを切り替えて朝の支度にとりかかる。


"おはよ!先週はありがとうね。
今日からまた仕事がんばりましょうね^^"

通勤電車の中でキミからのメールを受け取る。どうしようもなくホッとする自分に気付かされる。どんなに頭で考えても、今のこの気持ちが嘘でないのなら、それでいいんだ。そう自分に言い聞かせながら返信する。

"おはよう。こちらこそ、ありがとうでした。
僕も楽しかったよ^^
お互い無理しすぎないように頑張ってこー!"


仕事をしている間は、心のわだかまりも忘れていられたのに、ひとり家で時間を持て余していると、深い闇に誘われる自分を感じる。
前の彼女と別れた時、ひどく悲しくて、世界が音をたてて崩れていくのを感じていた。それでもキミに出会って、その悲しみも過去の出来事でしかないと思えるようになった。なのに、なぜ僕は迷うのだろう。何を僕は悩むのだろう。
未練?そうじゃない。前の彼女とヨリを戻したいなんて気は起こってこない。それじゃあ、この気持ちは何なんだろう。
たぶん僕は心の隙間を埋めたかったんだ。ただ淋しい、そんな心の隙間を。自立したいのに、ひとりで生きてゆきたいのに・・・。
そんな時にキミと出会ってしまったんだね。だから僕は迷ってしまうんだ。キミのことをどう思ってるんだろう。僕の気持ちはどこにあるんだろうって。。

浮かんでは沈んでいく気持ちに翻弄されながらも、時は流れ続け、物語は僕をキミのもとへと向かわせていく。