方法としての行動療法

山上敏子


金剛出版


色々なところでお勧めされている本。読んでみての感想は、

すごく読みやすくて、分かりやすい本だなぁということ。

分かりやすい、と言っても、どこまで自分が理解できているかは…だけど。

それでも、初学者の僕にとっても、得るものがあるように書かれていたような気がする。

方法としての行動療法、惹かれるところがやっぱりあるみたい。

応用行動分析、勉強してみようかな。


~メモ~

●行動療法の技法を大きく3つに分けて捉えてみる。

①変容技法…「どのようにする」技法

②対象認識把握技術…「どのようにみる」技法

③臨床応用技術…①と②の技術を「実際の臨床現場でどのように用いて役立たせるのか」という技法


●行動療法の理論枠

大きく分けて、4つの理論枠がある。


①新行動S-R理論…不安の学習とその動因をもとにした神経症の病理理論を持っていて、その理論に基づいた、不安の治療技法がこの理論枠の技法の中心。系統的脱感作、エクスポージャー、暴露反応妨害法など。


②応用行動分析理論…行動の分析記述の理論枠。対象の分析把握認識の技術を始め、治療を進めやすくするための方法やヒントを与えてくれる技法を多く持っている。刺激-反応分析、構造化、強化、教示、課題分析、刺激統制、プロンプティングなど。


③社会学習理論…学習における期待や予測などの認知、象徴過程の重要性が主張されて理論化され技法化されている理論枠。モデリング、セルフモニタリング、セルフコントロールなど。


④認知行動療法…言語・認知行動を対象にした学習理論が集められている理論枠。行動療法の様々な技法が、これまで行動療法の外にあった認知療法とともに、認知行動療法としてひとつの理論枠にまとめられた、という感じ。


●基礎技法

①新行動S-R理論を背景としている技法

系統的脱感作法…不安と拮抗する反応を生じさせる方法を用いることによって不適応的な不安-反応習慣を徐々に弱めるための方法。不安ハエラキーの作成→深い筋肉弛緩の実施→弛緩と、ハエラキー上の不安惹起刺激の想像による不安反応の拮抗作用、から構成させている。

・エクスポージャー…不安を生じさせている刺激状況に実際にでもイメージででも直面してその状況を体験することで、その状況を不安でなく体験できるようになる過程をもっている治療法。

曝露反応妨害法…脅迫症状を生じさせている状況に対面しながら(曝露)、そこで生じる強迫衝動や不安感や不快感をそのままにして、強迫行為を取らないようにする(反応妨害)方法である。


②応用行動分析理論を背景としている技法

課題分析…大きな行動を、それを構成している要素行動に分ける過程。目的としている大きな構成されている行動の学習が難しいときに、それを要素行動に分けて、学習がより容易な要素行動を学習できるようにすることで、大きな行動を学習しやすくする。

強化…ある反応が生じたときに、その結果がその反応の生じやすさを左右すること。

・刺激統制・構造化…学習の結果、ある刺激状況がある反応の手がかりや原因になって、その反応を制御していることを刺激統制という。青信号では渡り、赤信号では渡らない、など。

教示…ある行動をとったり、続けたり、方向づけたりするために与える言語刺激を教示という。

・プロンプティング…ある状況に対する反応の生じる確率を高くするために、手がかりになる刺激を与えること。子どもが自分で下着を着るようにと、下着を指して「着ましょうね」と声掛けをするとき、この下着を指して着ましょうねと声掛けすることがプロンプティング。

・フェイディング…治療の中でわざわざ用いたプロンプティングを少しずつ段階的に少なくしていき、通常の生活の中にあるその反応のための刺激状況だけで反応ができるようにすること。

シェーピング…目標としているところから、現在をみて、現在の行動の中に目標を向いている行動を探して、そこを強化(そうでないところは強化しないように)し、その行動が確かになったら、更にその行動に繋がっている目標に更に近い行動に強化の対象を移してそれを強化し、そのようなことを繰り返し、行動の質を目標に向けて徐々に変えながら新しい行動を学習する過程。


③社会学習理論や認知行動療法を背景としている技術

モデリング…その行動のモデルを示すことで模倣反応をプロンプトすること。モデルは実際に行うことによって示したり、映像で示したり。他にも色々な方法がありうる。モデルの観察と同時あるいはのちに、モデルと同じように行うことを含めた方法は、参加モデリング。

セルフモニタリング…患者が自分自身の行動を系統的に観察し、系統的に記録してデータを集め、それを自分で吟味し評価する過程。セルフモニタリングは、問題の把握の方法として、評価の方法として、変容のほうほうとして、治療の過程の色々な段階で用いられている。

思考中断法…意志に逆らって強迫的に頑固に繰り返して浮かんでくる思考やイメージを、外からの強い刺激、たとえば音など、を自分で与えることで、強迫的な思考やイメージを一時的に中断させ、それを系統的に繰り返すことで、強迫的な思考などを軽減させるセルフコントロールの方法。


●対象認識把握技術

①「行動としてとる」ということ

臨床の対象に具体的な精神活動(=行動)を置き、精神活動を刺激-反応という単位、実際には刺激-反応の連鎖であるが、を用いて具体的に取り出して、それを評価や治療の対象にすること。

②刺激-反応分析、行動分析

刺激-反応分析の基本型は、問題となっている反応、その反応を生じさせている反応の先行刺激状況、更に反応に随伴されて生じている結果刺激状況の三項のセットで、この三項の関数的な関係を知ることが、行動を知ることであり、問題を把握することでもあり、理解することでもある。

さらに細分化すると、専攻刺激と反応の間に、その人の状態や条件(過去経験や生物学的条件)を入れ、反応と結果刺激の間に、反応と結果の関係を入れた枠組みを基本型とすることもある。

③問題の循環的、動的な見方

刺激-反応は連鎖しており、一つの反応の中でも刺激-反応連鎖がある。また、その人のひとつの問題と他の事柄とも刺激-反応の連鎖を持っているし、更に、ある人と他の人との関係もこの刺激-反応連鎖でみることにする。ひとつの行動は他の行動へ影響を与えているし、また、その人の行動は家族などの周りにいる人へ影響を与えている。そして、その変化は関連しあっている。

→この視点を持つと、治療を、治療しやすいところから、変わりやすいところから、一番困っているところから、よくわかっているところからなど、実用的な視点で進めることができる。また、患者の問題であっても、患者だけの治療に限らずとも、患者と刺激-反応連鎖を持っている家族を対象にして治療を始めることもできる。


●治療の進め方

①問題を具体的に把握し、具体的に理解する。

問題がどのようなことであるかをなんとか明らかにして共通の理解のもとに置き、そのつど、問題のどこを、何を治療するのかを具体的に明らかにわかるようにして治療を進める。

②現在に治療に向けての力をみる

現在を積極的に見て、その現在の力を大切にし、そこから治療を始めることも行動療法では大事な治療の進め方になる。

③理論的に適用できる技術を、その症例で用いられるようにして用いる。

④問題や症状で対処しいないで済むように状況や環境を整える。

⑤治療の初期に何らかの変化が生じるように心掛ける。

発達障害に気づかない大人たち

星野仁彦


祥伝社新書


あまり発達障害について知らないので、その勉強を、と思って読み始めた。

特に今は、中学生以降の人と面接することが多いから、大人の発達障害について。


知らないので、「へー」と思って読めた部分と、「そこまでいっちゃっていいのか」と思う部分とが。

あとは、自分の経験を積むことと、他の本を読んでみることかな。


●大人のADHDの特徴

・多動(運動過多)…いつも落ち着きがなくソワソワしている

・不注意(注意散漫)…気が散りやすく、集中できない

・衝動性…後先考えずに思いつきで行動してしまう

・仕事の先延ばし傾向・業績不振…期限が守れず、仕事がたまる

・感情の不安定性…「大きくなった子ども」たち

・低いストレス耐性…心配と不安んが感情の爆発を招く

・対人スキル・社会性の未熟…空気が読めず、人の話が聞けない

・低い自己評価と自尊心…マイナス思考と募る劣等感

・新奇追及傾向と独創性…飽きっぽく1つのことが長続きしない

・生理整頓ができず、忘れ物が多い

・計画性がなく、管理が不得手

・事故を起こしやすい傾向

・睡眠障害と昼間の居眠り

・習癖…男性に多いチック、女性に多い抜毛

・依存症や嗜癖行動に走りやすい

・のめり込みとマニアックな傾向


●大人のアスペルガー症候群の特徴

・対人関係(社会性)の未熟…そもそも友達を作る意欲がない

・言語コミュニケーションの欠如…言葉のキャッチボールができない

・こだわりや興味限局傾向…1つのことに異常なまでの興味を示す

・感覚・知覚の異常…味覚や嗅覚、触覚と聴覚の過敏

・協調運動の不器用さ…スポーツや手先の運動が上手にできない


●発達障害と併発する様々な合併症

・うつ病(気分障害)…治りにくいうつ病は発達障害が背景にある

・不安障害(神経症)…言動とは裏腹に不安を抱えがち

・パーソナリティ障害…偏った考え方や行動が生活を壊す

・依存症・嗜癖行動…快楽の欠乏を薬物などで解消する


●発達障害の発火を促す心理社会的要因

・親のネグレクト・虐待を受けた子どもは、

「第四の発達障害」と呼ばれるような、自閉症に似た症状を呈することがある。


●治療や援助の方法

①心理教育と環境調整療法

・診断を受け入れ、サポートしてくれる理解者を得る

・自分の得手・不得手を尻、周囲の助けを借りる

・日々の暮らしの中でできる9つの工夫

→まずやるべきことをやる、クールダウンできる自分だけの時間と場所を作る、便利なものは何でも活用するなど

・よきライフスタイルを確立する

②心理療法…自分はだめな人間ではないと気付く

③認知行動療法…考え方の枠組みの歪みを直す

④自助グループ…同じ経験や苦痛を知る仲間と語り合う

⑤薬物療法…中枢刺激剤の服用で症状が劇的に軽減する

Vigilant and avoidant attention biases as predictors of response to cognitive behavioral therapy for social phobia


Depression and Anxiety, 28, 349-353(2011)


背景:

社会的に脅威な情報に対する注意バイアスは、実験的に支持された現象であり、

社交恐怖のモデルの中で著しく目立っている(?)。

しかし、これまでこのトピックを扱った研究は全て、注意バイアスのパターンを説明するのに、

グループの平均点を用いている。

社交恐怖の注意バイアスの潜在的なサブグループ(e.g.,接近、回避)について調べた研究はまだない。

更に、治療の結果として、どちらの方向(接近or回避)に注意バイアスがかかっているかということが、

どのように症状の変化を予測するのかということを調べた研究はほとんどない。


方法:

本研究(協力者数27名)では、

①治療前に脅威的な表情に対する接近バイアスを示した群

②治療前に脅威的な表情からの回避バイアスを示した群

…に対して行なった社交恐怖に対するCBTへの反応を比較した。


結果:

②回避バイアスをもつ協力者は、①接近バイアスをもつ協力者よりも、有意に臨床的に高い症状を報告した。


結論:

これらの知見は、

回避注意バイアスが社交恐怖に対するCBTの反応減衰と関連があるかもしれないことを提唱している。



~感想~

注意バイアスの違いを、サブグループの違い、個人差として捉える視点は確かに必要かもしれない。

真偽は置いておいても、これから実験をしてデータを解釈する際に必要な視点の1つかも。

あとでもうちょいちゃんと読もう。