精神科臨床における心理アセスメント入門

津川律子

金剛出版


読了。

精神科臨床はしたことがないので、正確には理解できていない面は多々あるものの、それでも普段の臨床にいかしたいと思ったことはたくさんあったように思える。

これまで読んだ本とまったく違う、といった感覚はなかったものの、やはり、同じようなことを何度も色々な本を通して学ぶことは、知識の定着には大切なように思った。

あとは、この知識をいかに実践に結び付けていくか大切なのかも。


以下、個人的に大切だと思った事を羅列してみた。


・マルチモダル・セラピー

「マルチモダル=多面的、多様な」という意味。

ラザルスが考えた。

サイコセラピーのはじめに「the seven modalities」についてアセスメントすることが必要。

the seven modalities

B …behavior(行動)

A …affect(情緒)

S …sensation(感覚)

I …imagery(イメージ)

C …cognition(認知)

I …interpersonal(対人関係)

D …drugs/Biology(身体的・生理的要因)


・よい→悪い→よい

クライエントのパーソナリティの描写をするにあたっては、よいところ→悪いところ→よいところの順で書いて、

そのあとに援助方針を書くのがよいらしい。

確かに、色々と課題を挙げることは簡単かもしれないけれど、

クライエントが受け入れられる形や量でなければ。

あとは、逸脱ばかりに目を向け過ぎないように。


・目標の立て方

(1)とりあえず次に病院に来るまでもちこたえられる方法…短期目標

(2)サイコセラピーのなかでまず扱える援助目標…中期目標

(3)優先順位をつけて3~5個の課題…長期目標

※具体的・現実的で、できれば他の人と共有しやすい援助目標を。


・精神科臨床における心理アセスメントの6つ+1つの視点

①トリアージ

トリアージ(対処優先性の判断)…いま目の前にいるクライエントが心理的な聞き状態にいるのか(自殺しそうか)どうか、という判断。

自殺予防の最大の手段は、この問題について治療者と患者あるいは家族とのオープンなコミュニケーションを継続すること。アセスメントをする際に、腰を引かないこと。


②疾患

身体的な疾患などを軽視しないようにする。症状性を含む器質性障害から真っ先に疑って、だんだんと精神障害としては軽症のほうへ向かっていくという方向性でスキャニングしていくことが大切。逆ではない。


③病態水準

病態水準と適応水準は違うこともあり、またその水準は変化する。また、知的な水準を調べる際に特に注意したいのは、動作性能力。「家事がめんどくさいからしたくない」と言った場合に、「めんどくさい」→「したくない」のかもしれないけど、「動作性能力が低い」→「めんどくさい」→「したくない」となっている可能性がある。みおとしがちだけど、気をつけるべき。


④パーソナリティ

パーソナリティ特徴は意識的に良い素質に着目することが大事。

また、自己・他者の認知の特徴をつかむことも大事。

クライエントは様々な苦痛を語るけれども、何とかそれに対処している部分があるはず。だから、その部分をちゃんと聞いていくことが今後につながる。最初は「我慢」とか言うことが多いけど、ちゃんと聞いてみると、色々あることがある。

内省力は、必ずしも記憶力や後天的知識とは相関しない。

感情状態のアセスメントが大切なのはいわずもがな。ただ、「不安」「抑うつ」という言葉に集約することなく、クライエントの喉元の気持ちに寄り添うことが必要。ここをどれだけきめ細やかな日本語でとらえることができるのかは、臨床能力のひとつで、アセスメントにとっても外せない視点。


⑤発達

平均的な発達や年代ごとに特徴的な心理的な悩みについて知っておくことは大切。また、子どもと大人の発達障害に触れる機会が多いほうがよい。


⑥生活の実際

現実の生活がどうなっているのかに関しての視点は大切。たとえば、地域的な特徴、経済的・物理的な面、生活リズム、家族関係を含む対人関係など。社会福祉の専門家に見習うところが多い。


⑦here and now

うつ病のAさんに会う、ではなく、今日のAさんに会う、という気持ち。10年合い続けている人であったとしても、今日のAさんとは初めて会う。