大規模な工場の中央操作室に居る時に、それは起きました。

工場の商用受電と自家発タービン発電が同時に停止して、

工場内が停電してしまった時のことです。

 

両方の電力がなくなっても工場の状況を見るために、

中央操作室のコンピューターは 無停電電源装置からの電力が供給されており、

画面が消えるはずのないシステムになっています。

しかし、消えてしまったのです。

目を疑いました。

 

もともと、二つの電源の両方が 同時に停電するという事は

起きないようにシステムを組む必要がありますが

万に一つの確立では、起きてしまう出来事です。

どこかの原発のように 

あり得ないことが起きたのです。

 

こういう時のために 非常用の発電機などが設置されているのです。

ここでは、この点はまた別の機会に記述することとして

もっと重要な点を記述していきます。

 

こういう商用電源と自家発電の電源が 

同時になくなってしまった時に、

工場の全設備の状況を把握し操作をするための

コンピューター画面が消えたことは、

とても危険なことです。重大な問題です。

 

この点について、長く考えていました。

 

実は、この件はこれ以降、数年間、原因不明となってしまっていました。

何年間も考えて、今になってやっとわかったことです。

おそらくベテランの技術系の方なら

直ぐに予想できることだと思いますが

私には なかなか判りませんでした。

工場に勤務する、まわりにいた何名かの電気主任技術者の方々も

この問題について

口にすることはありませんでした。

 

もしかすると、

その中の誰かは判っていて、

それでも黙っていたのかもしれません。

言いにくい空気だったかもしれない、

そんな工場内の雰囲気も問題かもしれません。

 

実は、その最後の砦の無停電電源装置は、

製造メーカーによって年間の委託点検を行っていたのです。

専門の知識が必要なので

製造メーカーの点検が必要という理由からです。

 

その点検の際には、その時だけ無停電電源装置からコンピューターへの電力供給を

通常電源(この工場では電力会社からの電源と自家発電の電源の両方若しくはどちらかのこと)

からのバイパス給電に切り替えて、

無停電電源装置の点検を行います。

 

それを点検終了後に元に戻してなかったら、どうなるでしょう。

見かけ上は、コンピューターは画面も含めて

通常電源からのバイパス回路で電源供給されますので、

変わりなく工場内の状況監視と操作を行えます。

 

しかし、商用電源と自家発電の電源の両方の電源がなくなってしまいますと

無停電電源装置のバイパス回路からの電気で動いていた

コンピューターは一瞬で停止することとなります。

無停電電源装置のバッテリーからの給電はされないのです。

コンピューターの画面は真っ黒になって

工場全体の状況の把握ができなくなってしまうのです。

 

今回のような中央操作室の操作画面が全く機能しなくなることは、

こういう理由で起きたのだと

私は何年後かに思いつきました。

かなりの初心者の遅い判定ですが

それを工場内で話してみますと

どうもこれが正解のような感じでした。

 

今になって思いますと

こんな簡単なことを 何故すぐに思いつかなかったかという

自分の頭の回転の悪さも露呈されますが

やっと、想定外のことが起きていたんだという事の理由が

判りました。

 

私があるときこれを思いついて、自分的には解決しましたが、

維持管理の電気に強い人の中には気づいていた人が

必ず居たんだろうと思います。

が、誰も発言することはありませんでした。

言えない雰囲気の方も改善しなければならない点です。

 

無停電電源装置の点検をしている委託先をかばってのことか、

工場の維持管理をしている職員として毎日の巡視時に発見できなかったことを恥じてか、

若しくは、無停電電源装置の点検終了時にバイパス回路から無停電電源装置からの回路に

切り替えるのを見逃したことを恥じてか、

それは今になっては 判らないことです。

 

が、こういうことが起きるという事を

工場に勤務する職員全員が知り

それを防止するために 何をしなければならないかを

皆が知ることが必要だと思います。

 

繰り返しになりますが、

判った時点で発言して

自分たちが起こしたミスを 皆で共有して

次に起こさないようにすることこそ

一番大切なことだと思います。

 

この画面が消えてしまうことは

短時間で 電力会社の停電が解消したので

操作画面が表示され、工場の操業が再開されました。

結果としては、何も操業に問題が起きなかったのですが

もし長時間の停電となった場合には、

生産に影響が出ただけではなく、

発電設備の空炊きになるなどして

設備が壊れて大きな被害が出たかもしれません。

 

結論としましては、

無停電電源装置の点検をする際には

メーカーの点検だから大丈夫だと安心して立ち会うのではなく

必ず点検が終わった後で

商用電源からのバイパス回路の電源供給から

無停電電源装置からの電源供給に切り替わっているのか

そこを 確認すること。

そして、毎日の巡視の際には、無停電電源装置からの

電源供給になっているのかを 

無停電電源装置の盤の表示を見て

確認するという事が大切だという事です。

 

それと 無停電電源装置の巡視をする工場の担当者に

こういうことがあるという事を

何度も 何度も 再教育することでしょうか。

 

製造業者の点検だから安心だという事はなく、

その点検をする人の技術力を見抜けるように

自分たちの技術力を日々高めていくことも大切です。