世界一有名な日本料理人-山本征治さんの料理法にどんな工夫がされているかを分析するの4回目です。今日は一般的な名前で言うと、「鮎の塩焼き」です。

でも、山本さんが普通に鮎の塩焼きを作る訳がありません。今回の大きな工夫ポイントは3つと言えそうです(私がわかった範囲なので、本当はもっとあるのですが…)。そのポイントの一つが料理の名前に入っていて「泳がし鮎の炭火焼」なんです。ここでも、山本さんが目指すのは「素材のおいしさを究極まで引き出すこと」です。

ここ小田原でも、シーズンになると酒匂川は鮎釣りをする人でにぎわいます。だから、そんな人達は毎年沢山の鮎を食べていることでしょう。そんな人達でも、この山本さんの3つの工夫をどれだけ知っているかは?だと思います。



では、まずその工夫の1番目。動画の鮎釣りシーンのすぐあと、「取って来た鮎を海水に泳がせてから焼く」です。この画像の水は海水なんです。
$観察力/想像力を鍛える図化のブログ-泳がし鮎
淡水魚の鮎をなんでわざわざ海水で泳がせるのか?
その目的は「海水の中で泳がせることで、エラの間やお腹の中にまで塩をし、外と中から塩味を付けること」だそうです!みなさん、そんなこと考えたことあります?
やってることは単純ですけど、「鮎を海水中で泳がせる」なんてどうやったら思いつくんだか…

それから、次の工夫は動画の4:00過ぎくらいから始まる「鮎の口を開く」です。

$観察力/想像力を鍛える図化のブログ-鮎口開き
何故か?「口から頭の部分の水分を逃がして圧倒的なカリカリ感を実現するため」だそうです。
わたしゃ動画を見たとき、単に見栄えだけかと勘違いしてました。う~~ん、深い。

そして、3番目は4:20あたりにある、もっと過激な「鮎の胸のあたりを突き刺す」でした。

$観察力/想像力を鍛える図化のブログ-鮎胆のう刺し
よーく見ると、刺し傷の穴から緑色の液体が流れているのがわかります。目的はこれなんです。
緑色の液体は胆汁。つまり、胆のうを刺して胆汁を逃がすことで「胆汁の強い苦みを薄めて上品な香りをまとわせる」ことをやってるそうです。

あー、どれも自分の感覚で確かめられていないのがもどかしい!

何だか、どんな発明原理が使われているかを想像するのがどうでもよくなって来ましたが、気を取り直してやってみます。

最初の「海水中で鮎を泳がせる」のは、「鮎の体の中にも塩をする」のが目的なので3.局所的性質の応用と言えますね。あと、淡水魚を海水中で泳がせるという見方をすれば、13.逆発想とも言えます。
それから、2番目の「鮎の口を開いて水分を逃がす」のは、「カリカリ感を妨害する物質の影響をなくす」ので22.災い転じて福となす ですかね。
3番目の「鮎の胆のうを刺して胆汁を逃がす」のは、「強過ぎる苦みを中和する」ということで、上と同じく22.災い転じて福となす でしょう。

鮎で初めて発明原理の13,22が出て来ましたね。素材に求められることによって、少しずつ使う発明原理も変化すると考えられます。それにしても、山本さんの発想は凄い。



※40の発明原理は以下を参照下さい。
http://ishiirikie.sakura.ne.jp/sblo_files/ishiirikie/image/C8AFCCC0B8B6CDFDA4CBA4C4A4A4A4C6.pdf