先日見た「夢の扉」というテレビ番組で山本征治さんという方を紹介していました。
レストラン界のアカデミー賞とも呼ばれる「ワールド ベスト レストラン50」に、山本征治さんは3年連続で選ばれているそうです。まさに、今世界で一番有名な日本料理人なんですね。

この人、ただ料理が凄いだけでなく、常にお客さんが一番おいしく食べるための工夫を惜しまないというこだわりの凄さもあるようです。

だから、スタッフ全員が無線で食事の進行を察知し、最もおいしい温度で客の口に入るような工夫もしています。

そして、料理そのものの作り方にも独自の工夫が随所に取り入れられていて、それらのレシピを惜しげもなく全部Youtubeにアップしています!

料理の世界において日本料理は共通言語ではない。この状況を変えたい、もっと世界中の人達に日本料理の奥深さを知って欲しいという思いで、オリジナルレシピを公開しているそうです。

ということで、早速そのうちの一つを拝見しました。
「赤ムツの龍鱗仕立て」




全部で17分以上あります。ジャンルで言うと「干物」でしょうけど、いやいや通常の「干物」の概念からは計り知れないものです。

私、料理の基本的なことは全くわかっていないのですが、ここで工夫しているやり方には本当に驚きです。ご本人に確認しないとわかりませんが、私には、この赤ムツに関して「そこにある食材を全ておいしく使い尽くす」という思想で取り組んでいるように見えました。とにかく工夫だらけです。

今日はそのうちの一項目「中骨の取扱い方」について解説します。
(ビデオの開始からの時間で関連ポイントは、①2:28~ ②6:40~ ③7:15~ ④9:28~ です)
普通の「干物」、例えば旅館等で出て来るアジの干物の中骨なんて、誰も食べませんよね。「中骨なんて食べないのが当たり前」です。仮に食べたいと思っても、固くて食べられません。居酒屋さんで、残った中骨を揚げてもらって、おつまみにしたことはあります。

山本さんのやり方は、「あとから揚げて食べられるのなら、最初からそれを料理の中に取り入れればいいじゃん」っていう風に自由に考えているように見えます。これをTRIZにある40の発明原理の視点で見ると「10.先取り作用」と言えそうです。

同じように、①から④の工夫点を書くとこんな感じになります。
普通なら、「火が通らないから固くて食べられない」中骨に対して、これだけの手間をかけています!!!

①2:28~ 中骨の取り出し(1.分割)
     中骨だけを別に加熱するための準備として、
     中骨をハサミ(!)で切り離します。
②6:40~ 中骨周りの肉取り除き、乾燥、揚げ&焼き
     (3.局所的性質、10.先取り作用)
     中骨の周りを洗って12時間乾燥させ、
     それから、十分に加熱するため「揚げ」てから、
     しょうゆをしみ込ませて、
     更にこんがりと「焼目」を付けます。
③7:15~ 中骨縦割り(1.分割)
     万力(!)で中骨を挟んで固定し、
     小さな電動ノコギリ(!)で、縦に二等分します。
④9:28~ 中骨収納(4.非対称、24.仲介)
     ガラス管(!)を干物の身に差し込み、
     二等分したかまぼこ型の中骨を挿入し、
     ガラス管を抜くと中骨が干物の身の中に固定されます。

自分で説明を書いてみて、その凄さに圧倒されるばかりです。
たかが中骨に対して、これだけの執念で取り組んでいるとは!!

でも、40の発明原理が料理にもいろいろ活用できるということも再確認できました。