技術の見える化スペシャリストの古謝です。

前回の記事で、レンジフードに活用されている「コアンダ効果」のことを書きました。コアンダ効果というのは「流れの中に物体を置いたときにその物体に沿って流れの向きが変わる粘性の有る流体の性質のこと」(Wikipedia*)と書かれています。*http://ja.wikipedia.org/wiki/コアンダ効果

確かに「物体の形状に沿って流れの向きが変わる」ことを知っていれば、新しく流れをコントロールする一つの手段を手に入れることになります。でも、どうせ一つの手段を手に入れるなら、これを自分が思うように応用したいものです。そのための手順を以下にご紹介します。物語イメージ法がベースです。

まず、コアンダ効果が起きるための重要な条件である「粘性」に着目してどんなことが起きるか想像してみました。粘性が重要要素であるなら、「粘性がない」流体ではコアンダ効果が起きないことになります。つまりこんな風に、流体と曲面のある物体が接触していても、流体は関係なく流れることになるでしょう。
$観察力/想像力を鍛える図化のブログ-コアンダ粘性なし


では、「粘性がある」流体のときはどうなるかを想像してみます。「粘性」は流体と物体の界面に強く作用します。
$観察力/想像力を鍛える図化のブログ-コアンダ粘性あり①


つまり、界面がねっとりしているので、ここにブレーキがかかるのと同じようなことが起きるでしょう。自動車に例えれば、急ブレーキをかけたときに自動車が前のめりになります。流体の場合には、ブレーキがかかる方に向きを変える力を受けることになると想像されます。
$観察力/想像力を鍛える図化のブログ-コアンダ粘性あり②


その結果、流体は物体をなぞるように向きを変えるでしょう。
$観察力/想像力を鍛える図化のブログ-コアンダ粘性あり③


とまぁ、とりあえず「流体がどうやって曲がるか」の定性的なイメージだけは上の図でだいたい理解できました。これを「自分が思うように応用する」ためには「何をどうコントロールすればいいか」がわかる必要があります。コントロールできるのは「流体」や「物体(曲面)」の性質です。これまで描いた図を眺めて、「流体」の性質と「流体の曲がりの強さ」を想像すると、例えば「流体の密度が大きいほど、曲面に接触する前の慣性が強く働くので、粘性によるブレーキの影響は受けにくい」ことになりそうです。というように、考えてアバウトな相関関係を整理してみたのが次のグラフです(あくまでアバウトな方向性だけ示しています)。
$観察力/想像力を鍛える図化のブログ-コアンダ定性変化グラフ


他にもあるかも知れませんが、図を見ながらちょっと想像しただけで、「流体の4つの性質」「物体(曲面)」の3つの性質」が流体の曲がりの程度に影響することが見えて来ました。

こうして、関係する性質がわかって来ると流体の向きをコントロールするやり方が見えて来ます。流体が指定されているときでも、例えば「曲面をサンドペーパーでこすってザラザラにする」ことでより強く曲がらせることが出来そうです。

「物語イメージ法」をこんな風に使うと、手触り感のある「設計」が実現できると思っています。