
黒い粘り気のある液体が、辺りに飛び散った。
三人の身体にはもちろん、壁、ベッド、サイドテーブル、ランプ、傍にあった全て物に降りかかった。
流れ出して止まらない液体は、床を黒く染めていく。
その身体は、糸の切れた操り人形のように、その場に崩れ落ちた。
サディトスは、言葉を失った。
尻もちをついたまま、目の前で息絶えた男の身体に目をやる。
つい先程、敵に転ばされ痛みに悶えていた彼は、剣が振り下ろされるその瞬間、サディトスの体を突き飛ばし、自身がその間に入ったのだ。
横たわった亡骸を回り込み、敵がサディトスの前に立ちはだかった。不敵な笑みを浮かべ、彼を見下ろす。
それを見上げる、サディトスの大きな体は石のように固くなり、声を発することもなかった。
鋭い切っ先が顔へ向けられ、そのまま振り上げられる。
サディトスは、強く目をつむった。
「そこまでだ」
振り下ろされようとしていた剣が、すんでのところで止まる。
剣先と脳天が触れるか、触れないかの距離。2人の呼吸も止まる。
一間置いて、敵が剣を引いた。
呼吸を乱しながらサディトスは、ゆっくりと顔を上げた。
1人の男が、部屋の入口に立っていた。その顔は闇に紛れており、はっきりとしない。
男は一歩一歩踏みしめ、サディトスの元へ歩み寄った。
薄暗いランプに、少しづつ顔が照らされていく。
「……君は……」
その先は、降り出した雨の音いにかき消された。
to be continued……