過去の日記を元に書いています。


2023.2.20

6ヶ月2日



数年前の6月か7月。
鈴木さんと一緒に早朝からの活動を終え、11時過ぎから早めの昼食をとった。

よく行く美味しい蕎麦屋さん。

信州の蕎麦屋さんのようにすっきりと薫り高いお蕎麦。
私はごくごく平凡な舌しか持ってないけど、やっぱり美味しいなと思う。

限定◯食のお得なセットがあり、お刺身や混ぜご飯、お惣菜、だし巻き卵などが500円ほどでつく。
値段に見合わないボリューム感だ。

限定なのだが、遅い時間帯に行っても売り切れていたことはない。
きっとサービスでやってくれているのだろう。

ふたりで舌鼓をうち、満足して車に乗ると彼が言った。

「まだ時間あるでしょ?
 スイーツ行こうか。」

えーー!

嬉しい!
嬉しいけど、そんなに私を甘やかしていいの?
などと思う。

「桃のパフェにしよう。」

高級な桃のスイーツが流行り始めた頃だった。彼はお店を下調べしてくれていた。

繁華街まで30分ほど車を走らせる。

コインパーキングに車を停め、歩いていると新しい店の前を通りがかった。

栗のお店のようだ。

絞りたてモンブランというのを提供している。
専用の機械で栗を絞り出している所をお客が見ることができる。

ガラス張りの店の中に目をやると、
ちょうど注文したものが運ばれているところだった。

とてもゴージャスで美しいモンブランのパフェが若くて綺麗な女性の目の前にそっと置かれた。

その女の子は頬を上気させ、嬉しそうに彼氏に微笑んでいた。
嬉しさを隠しきれないといった表情。

その一場面を彼と見つめていた。

「あの女の子はとても嬉しそうだね。」
ふたりでそう言い合った。

「このお店でもいいよ。
ふゆさんの好きな方で。」

優しいね。

私は迷いに迷った挙げ句、桃のパフェにした。

高級フルーツ店だった。

運良く店内は空いていて、極上の桃を味わった。
暑い日だったので店内の涼しさと桃のジューシーさが嬉しかった。

世界一幸せだ。
こんなに幸せでいいのだろうか?


「今度はモンブランにしようね!」
と約束した。


あれからモンブランの話は何度も出た。別のお店で食べることはできたが、あの頬を赤く染めた女の子のお店には行くことができず、その後閉店してしまった。



そして土曜日、あの時と同じ繁華街に来た。

あの栗の店はもうないが、もう一軒別の絞りたてモンブランの店がある。
人気のお店でいつも行列が絶えない。

そこでモンブランを買った。
さすがに店内で一人で食べる勇気はなかったのでテイクアウトにした。

カップルや家族連れ、友達同士の若者の列に一人で並んだ。

おばさんが一人並んでいるのは周りからどう見られるのかなと思ったが、気にしないことにした。

並んでいると、道行く人が何の列かジロジロ見てくる。
「わー美味しそうー!」と言いながら通り過ぎていく。

そんな中大きな声で
「この手のモンブランの店って今はどこにでもあるよね!」と並んでいる人にも聞こえる声でとげとげしく話す女性がいた。

みんな楽しみに並んでいるのに、何故そんな水を刺すようなことをわざわざ言うのだろう。

気の毒な人だな、きっと不幸体質だろうな。


無事に絞りたてモンブランを購入。

近くの小さな公園で噴水の縁に腰掛けて食べた。

大阪で言うとアメリカ村の三角公園みたいな場所だ。

座った時に鳩の糞が服についたかもしれない。

寒かった。

周りに人がたくさんいた。
不思議なタイプの人が大勢。
都会はいろんな人を引き付ける。

栗の風味が濃く滑らかで美味しかった。
一人だとすぐに食べ終わってしまう。




ねぇ鈴木さん。

やっとモンブラン食べたよ。
店は違うんだけど。
あなたもきっと近くにいるよね…
一緒に食べたかったよ。
とても美味しいんだ。
あなたは栗大好きだよね。

空を見上げた。
冬の空は薄ぼんやりしている。


そのまま立ち上がり家に帰った。