拙著『救世主トランプー”世界の終末は起こるか?』書評 | GII REPORT

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 国際問題評論家の宮崎正弘先生が御自身のメール・マガジン6033号(4月1日配信)で拙著『救世主トランプー”世界の終末は起こるか?』に関して以下のような素晴らしい書評を書いてくださいました。宮崎先生に心から感謝申し上げますと共に、多くの方々の御参考にして頂ければ幸いと存じます。

 

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 国際政治学者であれば、本書に頻出するような「域外のボキャブラリー」を使うことをおそらく躊躇するだろう。
 なにしろトランプは「救世主」であり、優柔不断のライアン(共和党前院内総務)のジグザグぶり、その迷走ぶりたるや、最終決断をできない指導者だった徳川慶喜か近衛文麿に似ていると、一見奇想天外な語彙で、事態を比喩するのだ。
 救世主の意味はふたつあって、トランプの場合は仕切り直し、ルールの卓袱台返しと取る。シリア内戦はしたがってウエストファリア条約体制の崩壊とみるのも、ユニークな比喩である。
 現在の複雑怪奇な米国の政治情勢は、従来の共和党vs民主党という二大政党を基軸としての分析ではもはや追いつけない。なにしろトランプの強引に進めるメキシコとの壁建設は三島由紀夫の『文化防衛論』に匹敵するという。
 こうした氏の独特な分析の極みが、次の情勢判断ではないか。
 「トランプ政権をささえる人々は、不死身の男達の用である。この調子ならトランプの再選は難しくないように思う。政治資金も選挙テクニックも問題はなく、それ以上にすぐれた真の意味での智恵の持ち主である」。
 その背景にある思想とは、AI文明が行き詰まり、人類の滅亡が語られるときに偽の理性を克服する真の理性が必要とされる時代になる。それがトランプの当選に象徴される政治の地殻変動だったと分析する。
 トランプは政権発足当時、保守基盤というより福音派が支持母体であり、ウォール街は反トランプだった。
 また安全保障政策立案の中枢部はフリン、マクマスター、そしてジョン・ケリー首席補佐官とマティス国防長官という現実主義の砦という観があった。
 トランプはリアリストだが、じつは反理性という真の理性を求める政治を追求している。従って、政権内部の人事刷新を、外交政策遂行より前にやってのけたのだ。
 時間をかけて、トランプは安全保障担当大統領補佐官をジョン・ボルトンとし、つぎに左翼に妥協的だったセッションズ司法長官を、バアと交替させ、選挙対策を仕切ったマニフォートらを放擲し、忠誠派で帷幄を固め、ティラーソン国務を更迭してポンペオに交替させるなど、これこそは「ワシントンの内戦」であり、影の主役にスティーブ・バノンの影が濃厚にあるとする。
 仕上げが中国融和派の駆逐、クドロー、ナバロの重視、交渉役にライトハイザーと、つまり制度的には財務、商務両長官の立場をこえて強力な反中国路線に舵取りをしているのは、トランプの思想に近いかれらの活躍にあると見ている。
 ともかく日本のメディアのアメリカ分析はあまりにも皮相であるばかりか、リベラルに偏りすぎて、ワシントンで本当は何が起きているかをしる報道機関とはとても言えず(そもそも日本のワシントン特派員は不勉強だ)、内部情報を丹念に拾って解析をすすめてきた本書は、日本人がまるで知らない、深層のアメリカの一面をえぐり出した。
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宮崎正弘先生メール・マガジンURL :  http://melma.com/backnumber_45206_6803933/

 

拙著購入用URL :  https://www.amazon.co.jp/dp/4421009261/ref=cm_sw_r_other_apa_i_-VCNCb7E3ZAH0