鳳凰 盛り上げ彩色 | 義峰工房のブログ

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仏像製造・修復の義峰工房(近藤義正商店)の職人達の日々の雑記です。







こちらはご依頼頂きました厨子の幕板の元のお写真です。



今回のご希望は完全な再現ではなく、

元のイメージを残しつつ良く仕上げてほしいとのことでした。


自分の感性で仕事をさせていただくということは、

とてもとても緊張しますが、

楽しみでもあります。



元々がどのようなものであったかを話し合い、完成までの段取りを決めて作業開始です。



私たち彩色士は

筆を持つに至るまでの時間がなかなか長く、

いわゆる“本番”までに

どれだけしっかりとイメージを固め、

準備をするかがとても重要になってきます。




まずは鳳凰の下絵を決めていきます。










微調整をしながら、

自分の納得がいくまで何度でも書き直します。




下絵が描けましたらようやく幕板へ彩色していきます。



今回の幕板の鳳凰は盛り上げ彩色で行います。


盛り上げ彩色とは、


奈良時代から仏画や日本画に見られる彩色技法のひとつで、

顔料を何度も塗り重ねることで厚みを出し、

その上から彩色をする方法です。


仏像彩色でも度々みられる立体的な表現方法です。








顔料を膠と練り、何度も塗り重ねながら鳳凰を描いていきます。







とても根気のいる作業ですが、

ここでの精度が仕上がりに影響するので

丁寧に進めていきます。




鳳凰を全て描き終えたら、

その上に金箔を押します。




近くで見るとぷっくりと盛り上がっているのがわかるかと思います。









幕板全体にはわずかではありますが、

黄みがかった緑系統の顔料が残っていましたので

そちらに合わせて落ち着いた緑を入れました。




鳳凰の後ろに雲を飛ばし、







最後に金箔部分に薄く淡彩色を施して完成となります。













いかがでしょうか。



盛り上げ彩色をするかしないかで大きく印象は変わってきますし、

そのたいへん地味な手間暇を含め、

とても楽しい時間でありました。



よく見ると、

お仏像の衣の花柄、唐草、紋様などに

度々盛り上げ彩色がされていますので、

機会がありましたら是非探してみてくださいね。