逃げようとむかしは必死 No.6 | ぎんgのおしゃべり

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とぼけた坊やとマムのひそひそばなし

伸ばした髪がさらさらとあたしの顔に落ちてくる。

それは ノリだった。

ノリの腕の中にすっぽりと包まれてしまった。ノリは小さな声で「好きです。ごめんなさい。好きになってしまいました」と言った。

あたしはまだ恋愛は怖い。恋愛を怖がってる女じゃノリを傷つけてしまう。丁重に断る言葉を探してみた・・・。どちらにしても傷つけることになりそうだった・・・

ノリは「何も求めません」と言った。あたしの動揺を感じたようだった。


その夜家までノリは送ってくれた。静かに「バイバイ」と言って帰って行った。あたしが戸建に住んでいるから家族と住んでいると思ったらしい。

家に帰ってもドキドキは収まらなかった。「何がどうなってるんだろう?」


次の日オフィスビルの外にノリがいた。「おかえり」と言ってくれた。スーツのノリと歩いてるとすれ違う女性はノリに熱視線。「あ~やっぱり、かっこいいんだ・・」と。妙な気分だった。

「今夜デートしてくれますか?」突然にノリが言った。デート?夜の?怖くなった。ノリがあたしの顔を覗き込む。

「そういうイミじゃないから・・でも、キスはしたくなるかも(笑)」とからかわれた。ゲーセンで遊んで、食事した帰り道、ばったりマークンに会った。「付き合ってるの?」とマークンがたずねた。ノリが「僕の片思い・・」と言った。「可哀想」とマークンは言った。「これから僕たちの寮に来ませんか?」とマークンが続けて言った。彼らは会社の寮で生活をしていた。あたしのオフィスから30秒のところに寮があった。3LDKに3人で住んでるという。マークン・ノリ・竜くん・・。女の子が遊びに来たことがないとボヤいてた。悩んだけど行ってみた!

すごくきれい・・じゃなかった。

ダイニングで3人ともずっとしゃべってた。そろそろ帰ろうとした時に突然マークンが「僕たち会社辞めるんです」。辞めて故郷に帰るんだと。・・・だから、今夜デートに誘われたんだとやっと理解できたのもつかの間「ここにはあと10日しかいられない」とマークンがマシンガントークになった。「せめて10日間恋愛ごっこに付き合ってやってください」とたのまれた。あたし、放心状態。竜くんは残るらしいが寮がなくなるから生活できないだろうなとマークンは心配してた。ノリは「何も求めません。10日間、一緒に居てください」と言って泣いてしまった。こんなときどんな言葉で返答しなきゃいけないのか?必死に考えてみたけどわからない。あたしは「みんなで楽しもう!」とアホな言葉を言ってしまった・・。別れが見えてる恋愛なんて出来るわけないじゃん・・。それが例え「ごっこ」だとしてもノリがかわいそうだ・・・アレ?あたし自分を守ることをやめてる??自分が傷つくよりノリの心配してるよ?おかしい・・・。そうなんだ。あたしはノリに惹かれはじめてるんだ・・。

「ノリ、あたし多分ノリのこと好きだよ・・」・・言った瞬間、マークン号泣・・。ノリは「ありがとうございます。今、死んでもいい。」とまた泣いてしまった。

次の日から毎日ノリがオフィスビルの前で待っててくれた。2日で名物になり社内で「かっこいい人が入り口にいるんだよ」と噂になった。同じ部署の先輩たちは知ってたのでクスクス笑ってた。極力残業せず、ノリを待たせないように先輩たちをコキ使った。毎日、デートしてた。残りの5日間は有給を使うつもりだった。随分久しぶりの長い休みだな。

日曜日にデパートへ行ったときノリは一緒に服を選んでくれた。「僕が選んだからプレゼントしたい」と言っては買ってくれた。あたしはノリに時計をプレゼントした。「これじゃイミがない」とノリが怒った。

次の日待ち合わせに初めて遅れたノリは後ろから抱き付いてきた。「後ろ向いてて!」ネックレスをかけてくた。ノリはしゃがんで「僕にも(照)」とあたしに催促してポケットからネックレスを出した。ペアネックレスというやつだった。抱き上げられているところを社内の人に目撃され、恥ずかしかったな。

ノリは残業が増えて少ししか会えない事を不満に思い、故郷に帰るのを5日間延ばした。その5日間はホテルに宿泊すると決めていた。それならば、あたしも合わせて有給をずらした。

カウントダウンが始まってしまった。

その夜ノリはとても優しかった。

朝食はルームサービス。バスローブが気に入らないと言ってシルクの白いパジャマを買ってくれた。

動物園に行ったり、渋谷で買い物したり、サンシャインに行ったり、遊園地に行ったりデートらしいデートを満喫した。何も考えずただただ、満喫した。

そして、最後の夜、ノリは「朝が来なければいい」と言って泣いてしまった。


真っ青に澄み切った快晴。ノリは故郷行きの新幹線に乗った。「絶対に迎えに来るから待ってて!」発車のベルでノリの声が消された。ドアが閉まりとうとう発車してしまった・・。

あたしは大声で「わーんわーん」泣いてしまった。駅員さんに「大丈夫ですか?」と声をかけられるまでひとりでホームに突っ立ったままずっと泣いた。やっぱり傷ついてしまった。そして・・ノリを泣かせてしまった・・。

次回乞うご期待汗