『大人の言うことが聞けない子供はろくな人間にならない』
いつも言われた。
知恵遅れ・問題児という勲章を与えられ、少年に対する排除の機運が高まった。
そんな中、知恵遅れを証明する思惑に反してIQテストの結果は常人の2倍に近い成績だった。
問題児を証明するために送られた施設の監察官が出した評価は『この子は黒を白ということに強制されることを拒んでいるだけで、決して反社会的な人物ではない。』だった。
その結果は学校や周囲の大人を驚愕させたらしく、IQテスト結果は口外されないはずなのに先生方は『不正によって得た点数ではないか』と騒ぎ立て(何度もやり直しが行われた)、排斥派は『監察官の前でだけ猫の皮を被っていたに違いない』と言った。
これを機に状況に変化があった。
皮肉を言われはしたが、少年を締め出そうとする動きは息をひそめた。
彼らにこの少年をとことん排除するだけの覚悟も勇気もなかったためであろう。
そして既に一人存在する天才少年とならべられ、勲章の名称は異人に変わった。
この既存天才少年は学術・運動能力が超越していた上に人格者であった。
社会は彼の能力のみに関心を持ち、その崇高な人格は同級生のみが知るところであった。
ともあれ天才は二人になった。
一人は正統派天才、もう一人は尊厳を奪われた異人。
社会が異人を排除しようとしていた時、大人たちの顔色を伺うことなくこの異人を「ただの人」として認めてくれたのが、この正統派天才だった。
天才と異人にはいくつか秘密の合意点があった。
『世の中に平等などない、そしていじめは永遠になくならない。』
これらの合意点はお互いの心の中に留めておく事にした。
教育では平和平等を唱えながら戦後の無念から解放されていない社会。
教育ではピカソや路傍の石などを称賛しながら異人が排除される社会。
平等などありはしない、平等を求める言葉に真実などありはしない。
彼らの美しい言葉は危険な集団陶酔の麻薬でしかない。
彼らの絵空事よりも大切なことは"コニちゃん"が歌う歌詞の中にある。
『みんなちがってみんないい』
天才は異人に借り物でない言葉をくれた。
『真実は私たちの近くにあるのに見えない。真実を手にした者は、真実を得られない者から排除される。そして真実を得るには勇気がいる。』
嗚呼、こいつには永遠に届かないだろうな。
そう思いながら、そのことがとても嬉しかった。