『前を見て歩きなさい』と母親。
前よりも下に転がってる危険の方が多かった。
どうせ前を見たところでくすんだ汚いモノが広がっているだけで、見ないですむなら俯いていたくなった。
頭ん中はいつもすっきりしないけどどうしてなんか考えもしなかった。
だって物心ある頃にはセットだった。
異物だとか異常だとは思わなかった。
世の中の人が醜く見えておぞましい。
人が苦痛で顔を歪めるのが好き。
その存在は悪魔と等しい。
悲しいニュースに笑っていた。
酷い人間だった。
誰も傷つけることなく子供時代を終えることができたのは、沢山いた自分で不調和音を調律していたのだろう。
その変わりに自分が傷つけばいいと思ったのだろう。
『あの日から愛はやがて憎しみに変わる』
なんで…
『あたしを誰も愛してくれない…あたしが悪いの?』
なんで…
『愛されることもないのになぜあたしが生まれてしまったの…』
こんなあたしなんか…
『もっと苦しんで痛い目に合えばいい』
自分で自分の首を絞める。
そうやって自分を嫌い…何年も生きてしまった。
朝焼けや夕陽や花が美しいという意味が理解できなかったんだ。
弟とは違って『汚い心の子』と言われた。
愛されたくて愛して欲しくて…綺麗だと思い込んだ。
今は綺麗だと思うけれどやっぱり汚い物が混ざってる。
真実が複雑すぎて素直とか純粋とかそんなんじゃなくて…ただ単に霞んでしまうんだよ。
