マミさんという信頼できる先輩と出会ったことで、断食も苦痛ではなかった。

 

ただ、翌朝に驚くようなことがあった。皆が朝6時になると、私が受付をした家に集まらなくてはいけないらしい。私も慌てて着替えて、皆とその家に向かった。何やら、皆さんは正座をする人もいて、これから何が始まるのだろうか!と、いくらか不安にもなった。小さい小箱が手渡しで人から人にまわって来る。私にその小箱はまわって来たので、グズグズしていると、誰かがあなたがひとつ取ったら、他の方にまわして!

小箱から取ったものは、小さめのお経本だった。そのお経本にある

『般若心経』を読まなければいけないらしい。始めて会うここの断食道場の主催者である中年女性が現れた。皆で挨拶をしたあと、『般若心経』を読経し始める。私は『般若心経』という名前は聴いたことはあったが実際に読んだことはない。こうして、毎朝6時過ぎから主催者と『般若心経』の読経をするということがわかったのである。

 

 

読経も終わって、部屋に帰ると私は皆に「やっぱり、ここは宗教団体だったんだ!」と私は気嫌いするように言い放つと、マミさんが代表で私にわかりやすく話してくれる。「ここは、表向きは宗教団体だけれど、本当は断食道場なのよ!」私は「どういうわけ?」というと、マミさんは「宗教団体としておくのであれば、税金は免除されるーつまり、無税なのよ!支払わなくていいの!ところが、断食道場としてしまうと税金を払わなくてはいけないから、たいへんなのよ!だから、あのメギツネは主催者のことね!払いたくないから、宗教団体にしたけれど、さすがに宗教団体なのにお経のひとつも聴こえなければ、近隣に知れ渡るので、取り敢えず、毎朝『般若心経』を皆に読経するのよ」

 

 

もう一人の断食体験者は言う「本宅の部屋から、主催の部屋へと繋がっているらしいんだけれど、以前に断食体験者に掃除を頼んだらしい。掃除をした断食体験者が驚いたことは、誰もいない部屋から

カセットデッキのテープから、『般若心経』のお経が流れていたらしいわよ!カセットは終われば裏面にも『般若心経』がテープに入っているから、テープが終わって裏面・表面とテープは繰り返すので、永遠に『般若心経』は終わらないということ。つまり、ここは間違いなく宗教団体だと近隣に知らせたいわけなのよ!」

「なるほど、そういうことなんだ!」と、私は感心してしまった。

 

この断食道場は曰く付きらしい。まだまだ、奇妙な噂があるという。

 

えーまだ、あるの?!と、再び驚いていた私だった。

 

いったい、ほかに何があるのだろうか?