いつかブログに書きたいなぁと思っていた題材。
今日も暇なので書いてみます。
20年位前の話。
アメリカ、Formula Dogeの後半戦、ビザの関係で一時帰国していた私は、ホワイトプレーンズのアパートには寄らず、そのままコネチカットのライムロックパーク近くのホテルへ向かった。
そこで今回から通訳として帯同してくれるジミーと出会った。
私は元来人見知りであり、一時帰国した時、好きだった子にフラれたショックもありで、無愛想に挨拶していたかもしれない。
Jimmy Masahiro KITAJI
ジミーと聞いてコテコテのアメリカ人をイメージするかもしれないが、彼は日本人で、でもジミーは本名だ。
マサヒロのほうがミドルネームである。
彼は私よりも年下で、大学を中退し、ヒップホップのアーティストを目指していた。
必然的に風貌もそうなり、そういった方面の付き合いのない私は、余計に人見知った。
だが、彼はその風貌とは無関係に、非常に礼儀正しかった。
初対面のレース関係者たちに丁寧に挨拶をして回っていた。
ジミーは私のことを最初は「トシさん」と呼んでいた。
滞りなくレースが終わり、ホテルでみんなと雑談をしていた。
そのとき何の話だったか忘れたが、私が爆笑を取った。
断片的な記憶では「海草」と言うキーワードの入った下ネタだったと思う。
時折私はクールでスカした奴、もしくは暗い奴に見られることがある。
人見知りが発動したときは、発言も、表情の変化も少なくなるからだろうか?
ジミーもそういう印象を私に持っていたのかもしれない。
でもその爆笑以後、ジミーの私に対する私の印象は大きく変わった様だった。
レース後数日たってから、ジミーから遊びに行こうと誘いの電話があった。
「僕の友達にトシさんと同い年の人がいるんだけど、たぶんこの人トシさんとめっちゃ気が合うと思う」と一人の男性を紹介された。
Daisuke P KAWAMURA
ジミーがだいちゃんと呼んでいたので、私も彼をだいちゃんと呼んだ。だいちゃんもジミーに習い私をトシさんと呼んでいた。
最初は当然人見知りが発動し、うまく盛り上がっていなかった。
でも、猫の話になったときに盛り上がり、次第に打ち解けていき、ジミーにも、だいちゃんにも、私の本性をさらけ出していた。
そして二人とも私の本性を大変気に入ってくれた。
2度目に遊びに行ったとき、ジミーが言った。
「今だいちゃんと話してて、「トシさん」て呼び方イメージに合ってないって話になってさ、「しげさん」もなんか違うし・・・。」
「で、決まったよ。シゲミツのミツからとって「みっちゃん!」、ね、ぴったりでしょ!」
後にも先にもそう呼ぶのはこの二人だけだ。
その後も二人とは良く遊んだ。くだらない事で大爆笑してた。
だいちゃんの彼女のあやこちゃんも紹介してくれた。今二人は結婚してるそうだ。
私はだいちゃんがすごく頼りがいがあるように思えて、同い年だけど、お兄さんにするように甘えた。
だいちゃんとは会うと大げさに握手するって言うのがノリになってた。
ジミーはその後も通訳として帯同してくれた。
私はジミーが本当に大好きで、ジミーが女だったら絶対押し倒していたと思う。
でも、私はいつまでもアメリカにいられない。
最後のレースを前にだいちゃんに言った。
「だいちゃん1回くらい俺のレース見にきてくれよ、俺のレース見たら絶対俺に惚れるからさ!」
だいちゃんは最後のレースの決勝日、あやこちゃんと見に来てくれた。
だいちゃんが到着したとき、私はトイレに入っていた。
だいちゃんはそれを聞いて、私の入っているトイレのドアをガンガン叩いてせかした。
私は満面の笑みで飛び出し、洗っていない手で、いつものノリの大げさな握手をして、手を洗っていないことに気づいただいちゃんと笑い転げた。
レースは私の生涯ベストレースとなった。
最後は大クラッシュに終わり、私は医務室に運ばれた。
どこも痛いところはなかったが、レース生活の終わりを意味するクラッシュに落ち込んでいた。
ドクターが何か言っている。
無視していたら、「どこか痛い所無いかって!」後ろから声がした。
ジミーが通訳として駆けつけていた。
私は質問の返事とは無関係に「ジミー・・・。」と言っていた。
ジミーはレース後の表彰式の通訳のためすぐに行かなければいけなかった。
私が一人医務室からトボトボ帰っていると、前からだいちゃんとあやこちゃんがやってきた。
私はだいちゃんの顔を見て、感情が決壊した。
だいちゃんにすがり付き「ごめん、ごめん」と号泣した。
だいちゃんは困惑しながらも「大丈夫、みっちゃん大丈夫だよ」と繰り返していた。
その夜はジミーの家に泊めさせてもらった。
翌朝私は日本に帰る。
だいちゃんとあやこちゃんとジミーとでご飯を食べた。
だいちゃんとジミーにグローブを片方ずつ渡し、あやこちゃんにはヘルメットのバイザーをあげた。
皆でわいわいやってたのだが、私は疲れていつの間にか寝てしまっていた。
翌朝起きるとだいちゃんとあやこちゃんは帰っていた。
ジミーに道のわかりやすい大通りまで送ってもらった。
「みっちゃんとは絶対また合える気がするから、Good byeは無しだよ」「俺、絶対帰ってくるから」
そう言ってハグして別れた。
日本に着いた私は、羽田空港近くのホテルでPCを開いた。
ジミーとだいちゃんからメールが届いていた。
ジミーからのメールには本当は表彰式に行くのをやめて、医務室に居たかった気持ちや、本当は嫌だったけどみっちゃんが居たから通訳を続けた事。みっちゃんと出会って、もっと本気でヒップホップをがんばろうと思った事など書いてあった。
だいちゃんのメールには、「みっちゃんが気持ちよさそうに寝てたから起こさなかったよ、また会えるし」「帰りにあやこと話してた。みっちゃん見たいに、号泣するほど何かに本気で取り組んだこと無いって。みっちゃんすげーよ」「俺はこれからもみっちゃんを応援し続ける。だって、みっちゃん俺が応援して無いと頼りないもん。」など書いてあった。
メールを読みながらとめどなく涙があふれた。
その後、まだ約束は果たせていない。
ジミーは今、東京で映像関係の仕事をしている。
だいちゃんはアメリカで貿易関係の仕事をしている。
時々、連絡を取る事がある。
いつでも、二人とは連絡が取れる。
行こうと思えば会いにいける。
でも、そうじゃない。
俺はレースの仕事でアメリカに行って会いたい。
絶対戻るって言う約束を果たしたい。