山本恵太郎さん(ヨーゼフ 役)

ヨーゼフとはなんだったのか。


幕が開くまで、どんな役か、全く想像がつかなかった役、ヨーゼフ。山本恵太郎さん、初めまして、の役者さんでした。


そりゃ想像つきません。「チンパンジーから進化した中年男性」なんて。

だけど山本さん、ヨーゼフそのもの、でした…


ヨーゼフが登場した場所は上手階段上でした。

その明らかに異様な雰囲気と、階段上に居たことで、「えっ?大きい。脚に竹馬履いてる?大統領師匠すごいな!」と思ってしまいました。勘違いでした。いい思い出です(笑)。


中年男性に進化すると同時に、知性がとても発達したヨーゼフ。元々賢いのでしょう。研究員桐野から言葉を学び振る舞いを学び、その日々はそれなりに楽しかったのかな?楽しいといいな、と思ってます。


人間でも、大勢の人の前で講演するなんて、並大抵のことではないのに、ヨーゼフはそれを生業に出来ている。もの珍しさが先立つとはいえ、ちゃんと話が出来なければ成り立ちません。ユーモアのセンスもある。どれだけ前頭葉発達してるんだ、と。


それだけに、プロモーターのアテンドに屈したこと、自分が未だに「実験動物」として扱われること、屈辱でしたよね。

人間でもそれ以外でも、敬意を持って対応されなければ、とてもとても傷つきます。

ヨーゼフがされたことを考えたらぐすん


しかし、やっていいことと悪いことがある。


桐野がもっとヨーゼフの情緒を育てていれば。

ヨーゼフに信頼できる相手がいれば。


今となっては先無いことですが、どうにかヨーゼフの心を救えないか、考えてしまいます。


ヨーゼフとはなんだったのか。


人間の愚かさの先にある結果?傲慢の産物?

わからない


ただ言えるのは、ヨーゼフには幸福になる権利があった、それは誰にも奪えない。今の私にはそれだけです。


山本恵太郎さんはヨーゼフそのものでした。

やや猫背気味に歩く姿がチンパンジーとヒトの間くらいに見えます。そして何より手の使い方が、チンパンジーのそれと、とても似ている気がしました。頭を掻く時の仕草ときたら!一目で「あ、チンパンジーだ」と思いました。ヨーゼフ、まだ進化の途中なのですね。


山本さんのヨーゼフは、講演する時、殆どまばたきをしない印象があります。講演シーンは照明さんとの協奏曲のよう。お顔の陰影が濃く印象的、そして不気味でした。黒目がキラキラ光り、私にはチンパンジーとヒトの間の生物が、喋っているように見えました。


ハンターに撃たれた左腰のせいで、左足が内側に曲がってしまいましたね。あれは大変ではなかったですか?曲がった姿で歩いていると「あの足どんなカラクリが?」と思い、ずっと観てしまいました。


山本さんの台詞は、いつ聞いても集中してしまいます。それは他の皆さんも同じかと。抑揚、間、テンポ…どれもハッと惹き付けて、劇場全体が山本さんに支配されてる、そんな気さえします。


この衝撃をお伝えするのにふさわしい言葉が見つかりません。兎に角凄い、凄かったです。

山本さん、ヨーゼフを見せてくださって、本当にありがとうございました!!


凄かったので、見て頂けたら嬉しいです。見ればわかる!!