小林愛里さん(小山内美和 役)

大統領師匠の家元&兎座の役者、小林愛里さん。初めまして、でした。


研究所の事務員で、認知症の父を母と介護している美和さん。私の中で、一二を争う健気キャラです。


美和はいつから諦めてしまったのでしょう。


「締観」美和を観ていると、この言葉が浮かびます。美和には欲が無いように見えます。認知症の父親がいて、故郷の島は地獄と繋がって閉ざされ、出会いもなく…異常な日常を、その日を生きるのに精一杯で、欲を持つ余裕も無いのかもしれません。イケメン研究員桐野やイケオジ研究員三谷、イケ鬼の鬼太郎という男前に囲まれてるというのに!

家族に気を遣い、研究所で気を遣い、美和の本音を聞いてくれる人はどこに?と、観ていて苦しくなりました。

母親までおかしな言動をするようになり、美和の苦悩は深まるばかり…。弟が死んでいることを母親に確認するところは、苦しくて悲しくて、そっと鼻をすすってましたぐすん


それでも


美和は芯が強い!

両親が電話帳で結婚相手を決めている時「誰になるんだろう……」と締観の笑み?なぜかこの場面で「強いひとだ」と私は感じました。

島を脱出した島民の中で、唯一、観客に近い正気を保っている美和。研究員の琴子とは違う、揺るがない強さを持っているからだ、と思います。

脱出する直前、「そういえば関さんは?」と問う母親に「優作の腹ん中だよ!」と言い返す美和に、やっと本来の彼女が見えた気がしました。なぜかそこ、ホッとします。


美和って柏手とはまた違う、メンタルキツい役だと思います。劇中8割方、眉間にシワ寄せてるし。私達観客に一番近い日常を送ってる役なのかもしれません。これを決して大袈裟にならず、淡々と演じられる小林さんは凄いです。

美和が三谷と話しつつ、下手から出てくるところ、大好きです。あそこは話す内容日替わりでしたでしょうか。初日の「長谷川博己みたいな人、島にいませんかね、私、塩顔が好きで…」と千秋楽の「父がグランドキャニオンて言うから何のことかと思ったら、私だったんですよ!」が特に好きです!小林さん、あそこは話す内容どの様に決めてらしたのでしょうか?


小林さん、とてつもないこの舞台を、創ってくださって本当にありがとうございました!!

今度は小林さんの快活なお役も観てみたいです。