朝の歌舞伎町を散歩して | 夜、走ってく、隅っこへ

夜、走ってく、隅っこへ

ループマシン・アコースティックギター・声を使う
アコースティックソロユニット「アナン」
[日本語の濃淡、ループ音楽の可能性、十人十色の夜を語り辿る。]

そういうやつの、日記だ。



新宿はいつだって汚くて、いつだって臭いところが僕は好き。

青黒としてただろうコンクリートも、吐しゃ物のマーブル模様がいつの間にか着飾って、
雑に駐輪された自転車のサビのコントラストと合わせて無常の景色となってく。

信号機に待つカップルの、汚いハグと汚いキスが、
所狭しとぎらぎら落ちてる。


汚い街。臭い街。
馬鹿みたいだし、でもそれこそが本能的なんだろう。


ディミさんとも話して、曖昧に僕の傷やら本能やらを触らずに話してたけど、

振り返ればきっと、僕も仕方ない動物で、
寒ければ寒いし、暑ければ暑い。
寂しければ肌が欲しいし、嫌われちゃうのは好きになれない。

それが糞ほど動物的で、理性やロジックでどうにかこうにか生きてこうとしている僕の性分が、
きっと許さないし、悔しくなってしまう。

歌舞伎町のそれのように、
必死こいて身銭を叩いて、
寂しいからと肌を引っ張ってこれてしまえば、
動物的な充足はすぐやってくるし、金銭に対するモチベーションもきっと色濃く変わるのだろう。



僕みたいな人間でも、
死んだように歩いてても何も言われない歌舞伎町が、好き。

木を隠すなら森の中。
僕もごみ箱ですっかり収まってられるのだろうね。

6:00で並ぶラーメン屋の列や、
肌の浅黒いお兄さんデルタ陣形での更新とか、
きっとモザイクのように卑猥で、それでいて絵になる。

僕はモザイクの1区画に収まって
ゲロと老人と並んで、死んだように立ってるだけなんだよ。いつも。




まあ、思ったより、心は治ってないから、
朝も嫌いだし、全部嫌い。
嫌われることは辛いし嫌い。
忘れられるのも寂しくて嫌い。

僕のお歌は、また今日もどこかのスピーカーとかイヤホンとか頭の中とかで
ふよふよと浮かんでくれるのなら、
きっと世界から僕は死ねないから、安心はするね。たぶん。



きっとなんだっていいんだよ。
時間をより人間的に、考える葦のように過ごそうとして、
どうでもいい悩みをさも真摯に受け止めて真剣を抱えて生きてこうとしてるだけ。


ただ、何も考えず、
やりたい音楽を責任も持たずのうのうとし続けるよりは、一層ましだよ。僕にとっては。

酒飲むための音楽ではないから、
友達を作るための音楽でもないから、

音楽を通してお酒を飲むのも、友達を作るのも好きだけど、
自分たちの音楽に無責任を託けて、
曖昧な酒の場で、傷をよしよしと舐め合うだけは、僕はくそほど嫌いだから。

かと言って、別に塩塗りたくるのも好きじゃないよ。もちろん。
楽しいことをしたいよ。
目隠しして生き抜こうとするのは、僕は楽しいことじゃない。だけー。





向いのマンション、壁が白いから、
朝日に照らされて僕の窓に陽を流し込んでくるのが、
日々を無理強いしてるようで、毎日慣れないんだよね。くそう。



死んだように生きてる。
これでいいのかなって怖くなる。

けど、僕の音楽は生きてる。
僕をきちんと引っ張って、上へ上へと連れてってくれる。

だから僕はやってける。




ごみを漁ったカラスがタクシーのクラクションにもたじろぐこともしないことに、
どうして敬意を表せばいいのかなって思った帰路。
くちばしの先の食べかすが、勲章に見えてしかたない。

ごみのような街は僕のような人をきちんと受け入れないから、大好きだ。
好きにしろ。ただ受け入れないぞって言ってくれるのが大好きだ。

一人を一人とみてくれるから、死んだように生きてる人に応援も侮蔑もせずに、
ああ、お前は死んだように生きてるな。って言ってくれてるみたいで、
大好きだ。新宿。


くそ汚くて、くそ臭くて、
曖昧な愛だの恋だの口に沿わせて、
意味も分からないくせに深いキスをして、
ゲロまみれのサラリーマンを嘲笑って安心して、

絵にしてももらいゲロしてしまうくらい、汚い街が、
僕は大好きだ。





午後ティー、うまうま。