Drought | オーストラリアの360万坪の牧場から ~Gibraltar~

オーストラリアの360万坪の牧場から ~Gibraltar~

隣の家まで車で15分。
一番近い町まで車で片道40分。
生活用水は雨水と川の水。
そんなオーストラリアの田舎にある360万坪の牧場を経営しています。
日本ではあり得ない日常の様子をお届けします。


先週隣の州で7人のビーフファーマーが自ら命を絶ったそうです。

その内の1人は自分の育てた牛を一頭一頭撃ち殺し、最後に自分に銃口を向けたそうです。

厳しい冬を乗り越えてやっと迎えた春、気温が上がり一斉に草木が緑になる夏。

牛や牧場主にが待ちに待ったこの季節なのに、ずっと雨が降らずに気温はどんどん上昇し草木は枯れる一方。

牛の為に作った人工の池は枯れて、川の流れも止まる。食べ物も飲み物も失った牛はどんどん痩せてしまう。

牛が痩せるという事は、牛を売った際に牧場主に入るお金が減るどころか、体調を崩した牛が春先に産まれた子牛にミルクをあげる事が困難になる。

すると牧場主は泣く泣く牛を売る事になる。本来なら牛が太り、元気になる夏なのに・・・。

しかし、去年の4月ごろより始まった牛の供給過多による牛の価格の暴落が牧場主に追い打ちをかける。

通常なら1頭3万円はついた牛の価格も最近では1頭6000円なんて事もザラになってしまった。

先に書いたこのビーフファーマーは泣く泣く自分の牛をセリに出したのだが、この供給過多の時に、痩せ細った牛を買ってくれる人はおらず、

トラックに載せた牛はそのまま草と水の無い牧場に戻って来てしまったという事だった。
これが、現在のオーストラリアの状況です。

大げさでは無く、各地で同様の事態が起こっています。

当然我が牧場も同じ状況になっている。全体の約3分の1の人工池が既に枯れてしまっており、
牧場のど真ん中を流れる川もクリスマスに止まってしまった。

この川の水は、水道が通ってない我が牧場の貴重な水源であり、水が無くなる事は許されない。

しかし、その後増える事無く、今は水たまりが点々とある状況になっていて、その水を小型ポンプで何とか家に引いている状況です。

下の画像を順番に説明すると・・・。

1枚目は現在の川の様子です。ようするに川底を撮影しています。通常は端から端まで水があり、流れています。




2枚目は大型ポンプの設置場所です。このポンプで通常は畑の水やり、牛の飲み水補充、生活用水の補充を行います。水を吸える状態ではありません。




3枚目と4枚目はいつもの川の光景と現在の川の比較です。3枚目が現在で4枚目が通常。同じ場所から撮影しています。







子供が産まれたのが去年の11月。良く考えるとそれから恐らく3回か4回しか雨は降ってない。

僕も費用と時間をかけて夏の牧草の種を春に蒔いたけど、結局この天候で全て失敗に終わりました。

今は何とか残っている水を牛に与えながら、雨が降るのを祈るのみ。しかし、現実は厳しく、今日も降水確率100%だったのに雨は降らなかった・・・。

この干ばつの被害を助けようと政府がこの周辺の牧場の手助けをすると決めたのだが、その内容がトンチンカンで、本当に冗談としか思えない内容で僕は物凄くガッカリしてしまいました。

その内容は、この周辺を含めた深刻な干ばつ地域のビーフファーマーに以下を援助するという内容。

① エサを買った際に発生する輸送費全額負担

② 水を買った際に発生する輸送費全額負担

③ 牛の売買の際に発生する輸送費全額負担

これが政府が決めた内容です。全く現状がわかってない!! もう怒り心頭です。

まず、エサを与えた牛はいくらで売れるんですか??

水を飲ませて生き延びた牛は本当に買ってくれるんですか??

水やエサって全部でいくらかかるんですか??????

ファーマーの収入は牛の売却によるもの。牛を買ってくれない、牛が1頭6000円。こんな時に誰が水やエサを買えるんですか?????

まったくモーです。モー意味がわからないです。

テレビで首相が干ばつ地域に足を運んで視察するなんてやってましたが、視察する場所は枯れた川や、枯れた草じゃなく、

一頭6000円で買われた牛が、切り刻まれてパックにされて1パック1500円で売られる現状だと思います。

今日、僕が大切に育てた36頭の牛を売りに出しました。僕が自信を持って送り出したこの牛。

トラックに載せる時に、お別れだから泣きそうになっていた子供達の様な気持ちはどんなベテランファーマーでも持っているはず。

そんな気持ちが届くようなシステムになる事を願います。

っていうか、雨降れよボケぇ!!!