初めて外で一人酒をした。
特に理由はない。ただ自分の知らない世界に足を踏み入れてみたかった。

20時くらいに店に行って、カウンター席に座って3杯くらいビールを飲んだ。カウンター席にはタバコがよく似合う、という勝手な考えのもと、やたらとハイライトに火をつけた。
中村航という作家の小説に出てくる、かわいらしいキャラの女の子の「(主人公)君には、なんかハイライトがよく似合うよね」というようなセリフを見て以来、タバコを吸ってみるようになった。びっくりするくらい単純な理由。今でも別に美味いとは思わないが、ひまつぶしには便利だ。
ハイライトはタバコの中でもタール量の多い種類でおそらく健康には最低の影響しか及ぼさないが、俺もかわいい女の子にそんなことをささやかれる日を夢見てニヒルな表情を浮かべながら吸い続けている。

隣に一人でいたやたらと声の高いおばさん。学生時代にだいたいの若者が自由に憧れて一度は彼の本を読むという高橋歩と働くお兄さん。手打ちそばをごちそうしてくれた弁護士のおじさん。普段の生活では接点のない人たちが、そこにはいた。
カラオケで「時代おくれ」を歌ったら、一体何歳だとなじられた。人の心を見つめ続ける男に憧れる23歳です。
最後は会社の先輩がキープしてたアーリータイムを勝手に飲んで、慣れないウィスキーの味に具合悪くなって23時ころ帰宅。
きょうの経験で、大人の仲間入りができたとか、一皮むけたとか、人生悟ったとか、いきなりモテ期がきたとか、まったくそんなことはない。相変わらず知らない人と話すのは得意じゃないし、布団にもぐる時間が一番好きなのも変わらない。
ただ、フラフラしながら歩いて家に帰る気分は悪くなかった。たまにはこういう夜の過ごし方もありかな、と思った。