
(Sherlock Holmes bear)
ある医大で、糖尿病の診断に関する実習が行われた時のことだ。
教官は、学生たちの前に立ち、尿の入ったコップを示しながら
「医者には熱心な探求心が必要です。例えば、私はこの検体の
性質を確かめるためにはここまでやります」
と言ってコップに指を入れると、その指を舐めた。
「どうです、皆さんに同じことができますか?」
満足げな顔で、教室を見渡す教官。
すると負けず嫌いなある学生が前に進み出て、教官が手に持つ
コップの中に指を浸すとそれをぺろりと舐めてみせた。
得意げな顔で教官を見返す学生。
ところが、教官はさらに得意げな顔で学生を見ながらこう言ったのだ。
「医者には鋭い観察力も必要です。もう一度私がやる事を見るように」
すると、教官は今度はゆっくりとさっきと同じ動作
自分の中指を尿につけて、人差し指を舐めるという動作
を繰り返してみせた。
医大や医学部に伝わっているジョークです。
この話の元は、シャーロックホームズの生みの親であるコナン・ドイルの恩師、
ジョセフ・ベル教授のエピソードとして知られています。
もっとも、ベル教授の話では尿ではなくひどい味の試薬となっているようですが・・・
面白いですね(笑)

Dr. Joseph Bell (ジョセフ・ベル教授)
シャーロック・ホームズのモデルとなった人物。
エディンバラ大学の医学部主任教授で、ドイルの師である。
鼻が高く端正な顔立ちで、人を射るような灰色の目をしている。
体は痩せていて細く、角張った肩、そして落ち着きのない歩き方をし、
声は甲高くて耳障りなほどだった。
ベル教授は外科医として優れた腕を持っていただけでなく、
患者に対する観察力が極めて優れていた。
ベル教授が学生達の前で普通の服を着た外来の患者を診察した所、
軍隊勤務をしていた事、除隊してから間もない事、
任官将校だった事、スコットランド高地連隊に所属していた事、
西インドのバルバトス諸島に駐屯してた事などを次々と言い当てた。
そして、ベル教授は学生達に向って説明をする。
「この患者は立派な感じの人であったが、帽子を取らなかった。
軍隊では脱帽しないからだ。しかし除隊してから長かったら、
普通の市民の作法通り帽子を取ったはずである。
態度には威厳があり、明らかにスコットランド人。
この患者の病症は像皮症だが、これは西インド諸島に特有のもので、
我が英国に生ずる病ではない」…と。
こうしたベル教授が患者を診察する際に披露する独特の推理や、
その学識にドイルは強く魅かれ、彼から多くの事を学んだ。
ホームズがワトスンと握手をしただけでアフガン帰りを見抜く場面や、
ホームズが依頼人を見てその職業等を言い当てる場面などは、
このベル教授が患者に対して実際にやっていた事なのである。
コナン・ドイルとジョゼフ・ベルの運命的な出会いが、
不朽の名探偵・シャーロック・ホームズを生み出したのである。