奈月の思い編前編。
あの人は優しかった。私にだけではなかったが、家族を、兄を失った私に。
いつしかあの人を目で追うようになった。



今は、真木大尉が実家に戻されそうになった真木さん呼び戻し編の最後の方から始まる。

戦隊長室で真木大尉を連れ戻す過程で奈美も説得にあたったが、心配した奈月とゴーストも隣の副官室で
いざという時にすぐに動けるように待機していた。

どうやらその心配はなかった。そしてその人は唐突に現れた。

戦隊長室のドアを橘がノックする。
橘副官「橘副官入ります、斯衛のお客様をお連れしました。」



橘に伴われて上月が入ってきたのを見た沙奈江は驚く。

真木班長「か、上月!元気になったんだな!」


上月副官「はい、おかげさまで元気になりました!今日は真木舞香中佐の護衛で参りました。」



そう話している中で、抱きしめ合っていた舞香がこちらに近づき言った。
真木舞香「早雲戦隊長、謝罪に来たのにお願いがございまして。この上月拓巳中尉を斯衛軍の連絡係。
いえそれだけじゃない、沙奈江の副官として側にいさせて頂けませんでしょうか?」

亜美戦隊長「よろしいのですか?私としては、斯衛と連携が取れるのも嬉しいですし、
何より真木整備班長の為になるのであればとても嬉しいですが。」
と答える。



真木舞香「えぇ、お願いしたいわ。そうでしょう?上月中尉?」
上月副官「はい!大尉のお側におられるなら、私は構いません。」

それを見た奈月は
奈月中尉「に、兄さん...。」
そう呟いた。そっくりと言う訳じゃない、確かに違うはずだが兄の冬人に似ていた。



となりの戦隊長室で亜美が姉妹の秘密の件についてどうすべきか真木と上月副官と話し合っていた。
そしてその話は保留となった。

亜美と奈美は隣の副官室で待機していた奈月の思いが聞こえた。
二人で微笑みそうしようと心の中で話す。

亜美戦隊長「奈月少尉、話は終わった。ちょっと出てきてくれるか。」

奈月少尉「え..あ、はい。入ります。」

上月のことを考えており上の空だったが、亜美の声に気付き入る。

奈美はそれに気が付いて。。心の中で亜美に声をかける。
(奈月お姉ちゃん、上の空です。これは気になってますよ。)
亜美もそれに答える。
(そうね。可愛いんだから。妹の為にできることをしてあげよう。)
と奈月に声をかける。

亜美戦隊長「真木大尉の元副官であった上月中尉副官が復帰された。
そして戦隊付きになり、これからは真木少佐の片腕として
整備班付き件斯衛軍との連絡将校となってもらう。今退出されてしまったが、
すぐに追いかけて基地の案内を頼めるか。

紫音にお願いすると言っていたが急な異動であるからこれから手続き等を行うのでできない。
頼める?」
と言う。

真木はおや?普段の亜美らしからぬ行動だなと思った。
何やら奈美も奈月にさせてあげたいような感じに見えた。

奈月少尉「は、はぁ。何故私でしょうか?真木班長に頼めば良いのでは?」

真木班長「あぁ...アタシも整備班を仕切るので忙しいんだ。
丁度手の空いているのが、奈月アンタがいるからね。頼めるかい?」

亜美戦隊長「ごめんね、奈月。みんなちょっと忙して。申し訳ない。」

奈美准尉「新しい方と交流もできるし、ちょうどいいのでは、ね。奈月お姉ちゃん。」
と言う。

奈月少尉「分かりました、私が承ります。」
既に戦隊長室から出て行った上月を追いかけ、声をかける。

奈月少尉「上月中尉、私が基地内をご案内します!」

上月副官「ありがとうございます、弥栄少尉。宜しくお願いします。」

こうして、奈月は上月副官を案内していく。
まずは戦術機待機部屋へ第四支援小隊が待機していた。
菅中尉「あら、奈月少尉どうしたのですか?あらそちらの方は斯衛の?
(南條中将が仰られていた真木さんの副官の方ね。実際に見ても優しそうな方、大丈夫そうね。)」

八島准尉「お、弥栄少尉殿お疲れ様です。(敬礼)そちらの方は?」
と二人は話す。

奈月少尉「はい、真木さんの副官である上月拓巳殿です。戦隊長に基地内を案内する様にといわれたんです。」

上月副官「斯衛から出向した上月拓巳中尉であります。真木大尉共々宜しくお願いします。」

菅中尉「これはご丁寧にありがとうございます。戦隊の戦術機部隊第四支援小隊長の菅中尉と申します。
宜しくお願い致します。(敬礼)」

八島准尉「同じく第四支援小隊所属の八島准尉であります。よろしくお願いいたします。
真木大尉殿の副官という事はもしかして同じ九州出身でありますか?
(弥栄少尉殿の表情がなにか嬉しそうに見えるな。良いことでもあったのだろうか、それなら良いな色々あったから。)」
と話しつつも心の中では思う洸騎であった。

上月副官「はい、私も九州出身になりますよ。」

八島准尉「おお、私も九州出身でありますよ。元第八師団戦術機部隊所属でした。。
しかし、うれしいであります。弥栄少尉殿も、真木大尉殿も上月副官殿も同じ九州出身とは。
、、、いずれ奪還したいでありますよ。九州は。。」
と二人に思いを打ち明ける。

上月副官「はい、奪還したいですね。」

奈月少尉「うん、帰りたい...。」

八島准尉「思いは同じですね、奪還作戦にはぜひ真木大尉殿を含めて皆で参加したいと思います。」
と言う。

菅中尉「(みんな、若くて熱意もある。いい部隊になるわ。この戦隊は。)、、、八島准尉?そろそろ上月副官を
離してあげないと、基地の案内中みたいですから。他の戦術機部隊の方々はまた明日にでも
演習や出撃で不在ですので。」
と奈月に即す。

奈月少尉「そうなんですよ。中尉、そろそろ次へ...。」

上月副官「そうだね。それでは菅中尉、八島准尉。今後とも宜しくお願いします。」

そう言って2人は出て行った。

次に案内したのは、、、医務室であった。
渋い顔をして上月副官に司軍医長の事を話す奈月。
奈月少尉「司軍医長についてなんですが...。」

言い淀んでいた奈月を手で静止して、上月は言った。
上月副官「司軍医の事は知ってますから大丈夫ですよ。今更改めて言う事はありませんから、次へ行きましょうか。」

その言葉を聞いてじゃあと奈月は戦術機空挺輸送機隊の詰め所に案内する。
葉吹大尉が部下を訓練でしごいていた。
葉吹大尉「日ごろからパイロットは衛士と同じく体力はつけないといけないから、色々訓練しますわよ。」
と藤田中尉達輸送機パイロットに指示を出して自身も一緒にやっていた。



訓練を見ていた2人に気づいた藤田は、近付いた。
藤田中尉「弥栄じゃねぇか。其方の斯衛ヤロウは誰だよ?」



奈月少尉「この方は今日から配属になった上月拓巳中尉殿です。今は基地内を案内してます。」

上月副官「宜しくお願いします。貴方が輸送機パイロットですか?頼もしそうなお方で安心しました。」

藤田中尉「はん、言ってくれるじゃねぇか。せいぜい振り落とされない様にしてくれよな?」

葉吹大尉「こら、藤田中尉、斯衛の方に失礼よ。(この方お強いわね。)
戦術機空挺輸送機隊を任されてます葉吹大尉ですわ。どうぞよろしくお願いいたしますわ。」

藤田中尉「で、でもよ葉吹の姐御。輸送隊だから舐めた態度取られない様にする必要は俺はあると思うンダが...」

槙村中尉「とか言って単に威張りたいだけだろ?失礼だからちゃんと謝れ。」

藤田中尉「んだと!」

やれやれと思う香里。
葉吹大尉「この方お強いですわよ。槙村中尉の言う通り、ちゃんと謝りなさい。
なんなら、今度対戦でもしてもらったらどう?。
もちろんですわ。上月中尉、どこにでも運びますわ私たち輸送機隊は。」
と言う。

藤田中尉「分かったよ姐御...上月、すまなかった。輸送なら任せとけよ。」

そんな粗暴な謝罪を受け取りつつも、笑顔を崩さない上月。後ろから見ていた奈月は、
上月の後ろ姿を亡き兄 冬人とダブって見えてしまって仕方がなかった。

奈月少尉「に、兄さん...。」

意識した途端、奈月は言われもない悲しさが遅い、突然しゃがみ込んだ。

上月副官「ん?弥栄少尉、どうしたんですか?体調が悪いんですか...?」

奈月少尉「い、いえ...大丈夫です。」
そう言って上月へ向け、顔を上げると

上月副官「なら何故泣いているんですか?強がらないでください。」

奈月少尉「え...?」
奈月は自覚なく、涙を流していた。

奈月少尉「あれ?何で...?なんで、涙が止まらないの...?」
自身も困惑していた。

香里は事情を知っているのでこっそり上月副官に話す。
葉吹大尉「(弥栄少尉の兄は大陸で弥栄少尉の目の前で戦死されてます。それに家族も彼女は守れなかった。。九州で。。
たぶん上月中尉を兄にダブらせてますわ。可能でしたら慰めてあげてください。)」
と小声で奈月に聞こえないように言う。

上月はそれを聞いて、奈月を抱きしめた。
奈月少尉「え、上月中尉?」

上月副官「泣きたいなら思いっきり泣いて良いですよ。貴方の履歴は読ませて頂きました。辛かったでしょう?
悲しかったでしょう?貴方は思いっきり泣いて良いんですよ?」

そう言われ、奈月は兄が生前こうやって抱きしめて慰めてくれた事を思い出し、大泣きする。
奈月少尉「私、私...辛かったよ。皆んなを助けられずに私だけオメオメと生き残って、
死神と言われて...更に酷使されて...兄さん...兄さん...!」
上月を兄さんと呼び泣き続けた。

葉吹大尉は思った。戦隊長が連れてきてからだいぶ良くなったとはいえ、つらい過去は消せないものね。
と思いつつ。
藤田たちに小声で訓練に戻るわよと、察してその場を離れる。

泣き止んだ奈月は、直ぐに上月から離れた。
奈月少尉「上月中尉!す、すみません!」

上月副官「気にしてないよ。そんなに君のお兄さんに似ていたかな?」

奈月少尉「その、そっくりではありませんがかなり冬人兄さんに似ていましたね...。」

上月副官「そうなんだね...君が良ければ兄さんと呼んでも良いんだよ?」

そう言われ、恥ずかしくなる奈月。
奈月少尉「え?そ、それは...すみません!急用を思い出しました!代わりの人を呼んできますね!」
そう言って逃げる様にその場から去る。

こっそりパイロットの広い視野の目線で訓練しながら見ていた香里はあちゃーと思いながら
上月副官に近づいて話す。
葉吹大尉「申し訳ありませんでしたわ。斯衛という事は真木大尉殿付きとお見受けしますが、
整備班へ私がご案内しますがいかがいたしますか?」
と言う。

上月副官「お気遣い感謝します。ですが、此処からは自力で基地内を回ってみます。
この部隊の一員になるんですから、早く場所を覚えておきたいので...」

葉吹大尉「そうですか、もうしわけありませんでしたわ。でも可能であれば
今後も弥栄少尉の事を気にかけていただければ幸いですわ。兄として。

戦隊は家族、姉妹、兄弟ですから、これは戦隊長のモットーですから。」
と母親のような優しい目つきで上月副官に言う葉吹。

上月副官「なるほど、分かりましたそうさせて頂きます。」
そして上月副官は色々戦隊基地内を回り律儀に挨拶を方々にして整備ハンガーへ行った。

その夜。
逃げ出してしまった奈月は自室で考え込んでいた。

奈月少尉「確かに上月中尉は、兄さんに似ているけど兄さんじゃない。
呼んで良いとは言っても...コレじゃあいつまで経っても振り切れない...。」

そこに、コンコンとドアを叩き、奈美が声をかける。(用心のために近くにゴーストはいる)
奈美准尉「奈月お姉ちゃん、遅くにすみません。ちょっと良いですか。」



奈月は直ぐにドアを開けて、奈美を招き入れる。
奈月少尉「良いよ、いらっしゃい奈美。」

奈美准尉「ありがとうございます。」
と奈月の個室に上がる。

そして二人は座り。
奈美から話す。
奈美准尉「亜美姉さんからの言付けです。上月さんの案内を押し付けてごめんね。と言ってました。
でも、、途中で放り出してしまうのは、、仕方ないですが。
でも少しは気分が晴れたと思うのですが、大丈夫ですか?

振り切れないのは仕方居ないと思います。私も前世の事からいまだに振り切れて無いのです。
夢を見るとその事が多くて。。。

いつも私は奈月お姉ちゃんに支えられてます。

でも奈月お姉ちゃんも私や亜美姉さんでも、上月さんでも良いのですよ。頼ってください。
私は、、頼りなくて奈月お姉ちゃんに迷惑をかけぱなしですが、、、。」
と話す。

奈月少尉「うん、此れでも頼ってるよ?少なくとも抱え込んではないんだけど...。
ふと、思い出しちゃってね...上月中尉の案内の件、途中で投げてごめんなさい。」
少し俯きながらも話した。

奈美准尉「大丈夫ですよ、上月さんも含めて誰も怒ってませんよ。
皆、奈月お姉ちゃんの事を心配してるのです。だから頼ってくれて良いのですよ。
元気出してくださいね。

じゃあ、夜も遅いので私は戻りますね。
明日、上月さんに謝りに行くのが行きずらかったら良かったら私も一緒に行きますよ。
あの時(菅中尉の思い編の時の事)は奈月お姉ちゃんに勇気をもらいました。
だから私で良ければ一緒に行きますよ。」

奈月少尉「そうだね、お願いするよ。」

奈美は手を振って奈月の部屋から出る。



そして翌日。
戦術機部隊の待機室にいる奈美とゴースト。
ゴースト准尉「奈月さん大丈夫かな。。でもいい方向に行ってると思うし。」



奈美准尉「大丈夫ですよ、亜美姉さんもそこの事を考えて今回上月さんの案内を任せたのですし、
それに泣くことも必要です。私もそうでした。」

ゴースト准尉「だといいけど。(上月副官が奈月さんの心の隙間を埋めてくれるならいいけど
それは押し付けちゃダメだしなあ。でもいい感じに見えるが。違うのかな?兄として?かな)」
と思った。

奈美准尉「、、、そうですね。応援はしたいと思いますが。上月副官さんではないのかも。」
(優しく見守ってくれてるのは、、、確か。)
と考える。

ゴースト准尉「(これは戦隊長も奈美さんも何か解っている事有りそうだな、でも
馬にけられてなんとやらにはなりたくないからほどほどに見守っておくか。)」
とゴーストは思った。

奈月が待機室に入って来た。
奈月少尉「2人ともおはよう。」
考え事をし続けて寝不足なのか、あくびをしていた。

ゴースト准尉「おはようございます。寝れなかったのですか?
何か相談に乗れることがあったら自分で良ければ聞きますよ。」

奈美准尉「おはようございます。奈月お姉ちゃん。

色々考えていたんですね。今は私たち時間ありますのでどうしますか?
何か手伝えることあれば手伝いますよ。」
と奈月の手助けを申し出る。

奈月少尉「そうだね...一緒に上月中尉の所に行ってくれないかな?
昨日のことを謝りに行きたいけど、1人で行ったらまた逃げてしまうかもだから...。」

ゴーストは察して、
ゴースト准尉「では、私は少し素振りでもしてきます。
奈美さんの事をお願いしますね。終わったら。戻りますので連絡ください。」
と一人でグラウンドの方へ行く。

奈美准尉「もちろんですよ。一緒に行きましょう。」
と奈月の手を握って一緒に行こうとする。

奈月少尉「あ、ありがとう奈美。」

奈美准尉「もちろんです。いつも奈月お姉ちゃんに助けてもらってますし。
これぐらい迷惑でなければさせてください。」
と優しそうに微笑み、言う。
そして整備ハンガーへ。

見ると、上月副官が真木の隣で整備兵に指示を出してる。

奈美准尉「どうしますか?一人でお話ししますか、居て良いのでしたら私も一緒に。
一人でお話しするのであれば私は真木さんにお声がけしてきますよ。」
と優しく奈月に話す。

奈月は奈美の手を無意識に強く握り、言う。
奈月少尉「一緒にいて?1人で話すのは自信ないから...。」
そう言っている間に、奈月達を見つけた上月は真木に一言行ってこちらに向かって来ていた。

にっこりと微笑み答える奈美。
奈美准尉「もちろんですよ。一緒にいます。奈月お姉ちゃんのお役に立ちたいですから。」

上月副官「2人とも、いや弥栄少尉が私に用があるみたいですね。どうかしましたか?」

奈月少尉「あ、あのう昨日、逃げてしまって申し訳ありませんでした!」
深々と奈月は頭を下げる。

上月副官「気にしてないですよ。弥栄少尉は、昨日の夜大丈夫でしたか?」
自分のことよりも、奈月の事を気にかけていた。

奈美は思った。とても素敵な優しい方だなと、自分の事より相手の事を思いやれる方。
この方が奈月お姉ちゃんを支えてくれたらうれしいなと。でも兄としてかなとも。
無理強いはできないので言わずに、奈月の斜め横に少し下がって控えている。

奈月少尉「はい、大丈夫です。あの余り言わない方が良いとは思っているんですが...。」

上月副官「さん付けでいいですよ?」

奈月少尉「はい、上月さんが亡き兄の面影が見えてしまって、
直視できないと言うか...何故か物悲しくなると言うか...。」

上月副官「昨日お話しした通り、貴方がお兄様を亡くされている事は聞いてます。
貴方が良ければ、私を兄と呼んでも良いんですよ?」

奈月少尉「確かに、貴方を兄と呼べば私の気持ちは軽くなるかもしれない...。
ですが、いつまでも兄の影を追う訳にも行かないです...なので、すみませんが...。」

奈美の手を握りながら奈月はそう言った。


奈美は心の想いを聞いて優しくさらにギュッと奈月の手を握り直す。


上月副官「なるほど、ですが強がらなくても良いんですよ?貴方が私を兄と呼んで心が軽くなるなら...
私は貴方のお兄さんになっても構いません。本当に良いんですか?」

奈月少尉「はい...そう決めましたし、何より守りたい妹分と、頼れるお姉さんがいますから。」
そう言って、奈美を見つめ微笑む。

嬉しそうに微笑み奈月に話す奈美。
奈美准尉「有難うございます。それが奈月お姉ちゃんのしたい事なら
私はついていきますよ。そして心を支えられるのなら、私でよければ。」
と言う。

そしてこっそり実は亜美は奈月の思いに気が付いて
整備ハンガーの入り口付近から見ているが、これなら大丈夫かと執務から離れて見守ってた。
(上月中尉には余計なことをしてしまったか、、、)とちょっと思いつつ。

奈月少尉「もちろん。私を救ってくれたのは奈美、貴方だから。」

上月副官「どうやら、私の提案はお節介みたいですね。失礼しました。」

嬉しそうに微笑み2人を見つめて話す奈美。
奈美准尉「奈月さんうれしいです。そして、上月副官さん申し訳ありませんでした。お節介ではないですよ。
できれば戦隊のお兄さんとして居ていただけるとうれしいです。」

そんな会話をしていた2人を見ていた亜美に、隣から真木が寄って来た。
真木班長「ったく、少し心配したが大丈夫みてぇだな。亜美、アンタもなんか抱えてないかい?」

亜美戦隊長「ですね、私は、大丈夫ですよ。紫音もいますし。それに真木さんがいつも支えてくれてますから。
ちょっと上月副官には悪かったかなあと。。ま、余計なことをして西のようにはなりたくないので見守ってますが。」
と嬉しそうに奈美と同じように微笑む。


こうして奈月は家族に思いをはせながらも精神的にも成長して強くなっていくのであった。
そして、、月日が流れ佐渡島防衛戦の三週間前の事であった。

奈月は姉妹の行動に違和感を感じた。
あの真木さんを、足の手術とは言えこの時期に1ケ月も休みを取らせ遠ざけるのは、、、
それに何か橘副官やゴースト准尉達もそれを支えてあげたいと行動しているように見える。

真木を見送る姉妹。泣き崩れる奈美。
亜美戦隊長「大丈夫、全滅はさせないわよ。せめて、若い子たちは撤退させないとね。」
と奈美を抱きかかえる。

そして亜美は体調が悪い奈美を医務室へ連れていく。
そんな光景を見ていた奈月は違和感を覚えるだけじゃなく、確かな確信を抱いて2人の後を追う。
奈月少尉「2人とも...死ぬ気なんだ...なんで?何でよ...。」
そう呟く。

亜美は奈月が追ってくるのがその思いが聞こえていたが心の中で詫びつつ、奈美を司軍医長に任せて
戦隊長室へ戻る。

それを見送った奈月は、医務室に入った。
奈月少尉「司さん、奈美に会っても良いですか?」
そう司に聞いているが、否とは言わせない雰囲気を醸し出していた。

明日香はその表情を見て答える。
司軍医長「、、、戦隊長からは面会謝絶状態にしてと言ってるけど。。
まあ、いいわよ。でも睡眠導入剤を飲ませてるから寝てるけど。
ただ、かなり衰弱してるから無理をさせちゃだめだよ。
そこまでするなら、、軍医として面会はさせられない。」
といつもと違って真面目に話す。

奈月少尉「司さん、いつもと違いますね?普段の貴方ならそんな言い方は絶対しない...何か隠してますよね?
奈美の護衛兵である私でも話せないんですか?」

明日香は困った顔をして言う。
司軍医長「、、、戦隊長命令だよ。これ以上は言えない。
軍医として言えるのは奈美ちゃん衰弱してる。だから無理はさせないで。」
と伝える。
(とは言え夢見の話を聞いたわけではなく、奈美を奈月と話をさせないでと言われたぐらいなので困惑している)

奈月は納得せずに吠える。

奈月少尉「大方、戦隊長に奈美と合わせるなと言われたんですよね?
その顔、司さんも疑問に思っているんじゃないんですか!
2人とも私達に隠して、死にに行くとかならどうするんですか!」
涙目になりながら吠え続ける奈月。

明日香は奈月を抱きしめて話す。
司軍医長「ごめんね、そう言われた。何か決意をしてる顔をしていた。
でもね。私は軍医、医者なの。たとえ二人がそうするのであっても止められない。
ここで自殺をするのなら止める権限もある。

だけど作戦が発案されて承認されて動いているなら私にはそれを止める権限もない。
だから、奈月ちゃんに任せるわ。これしか話せることが無いのも事実。

それにくどいけど、今本当に奈美ちゃん疲れ切って寝てるの。
そこは配慮してね。それができないのであれば医者として面会はさせられない。」
と奈月の思いに、軍医としてではなく、明日香の個人的な思いも含めて答える。

奈月少尉「...分かりました。配慮します。」
そう呟いた。

明日香は奈月の頭をなでて奈美が寝ている部屋に連れていく。
司軍医長「ここよ。私は外で待ってるから。」
と本来は付き添いをすべきだが明日香はそうした。

奈月少尉「ありがとうございます司さん。」


司軍医長「うん、奈美ちゃん労ってあけまてね。」

と答えてその場に留まる。

そう言って奈月は奈美の寝ている側に行く。奈月はいつもの様に手を握り見つめた。

奈美はうなされている様だった。
奈美准尉「、、、奈月お姉ちゃん、、ごめんなさい。嫌、嫌。皆死なせたくない。
私に出来る事、しないと。。」
と涙を流しながら呟いていた。

奈月少尉「奈美...大丈夫。私が何とかするから...真木さん達と協力すれば必ず大丈夫だから。」
奈美に優しく良い、少しの間寄り添う。

その言葉と優しく手を握ってくれたことが安定につながったのか
奈美はうなされているのが止まり穏やかな表情になった。
と、思ったが目を覚ます。
そして、奈月を見つめる。だが奈月には違和感を覚える。
(確か、前にもこんなことが、これは。)

奈月少尉「奈美...じゃない。誰、なんですか?」
困惑しながらも、警戒している奈月。

??「、、、ごめんなさい。奈美の体に負担がかかるので手短に。
奈美の母です。この子も亜美もあなたを心配してる。だから遠ざけてしまったわ。
でも、、、それは間違い。ですが、私たちは戦死してしまった。

変えられないかもしれない。それでもお願いです。あなたにお任せします。
二人をお願い、皆を死なせなくて動いてる。」
と奈月の手を握りしめ伝える。



奈月少尉「奈美のお母さん...はい、頑張っても2人が死んでしまったら、
意味がありませんから...2人を死なせませんから。」

嬉しそうに微笑む亜紀。奈美とも違った微笑みだった。
亜紀「うれしい、でも亜美と奈美が言っている通りあなたも私たち夫婦にとっても

3人姉妹で次女の娘ですからね。死んではダメですよ。3人で、、生きて。」
と抱き着き、頭をなでて目を閉じる。吐息が聞こえる。奈美に戻ったようだ。

奈月少尉「ありがとう、奈美の...いやお母さん。3人で生きてみせます。見ていて下さい。」

嬉しそうな涙を流して寝言を言ってる。
奈美「お父さん、お母さん。。。」

奈月少尉「真木さんの予想は的中していたんだ...皆が生きていても貴方達が死んでしまったら、
戦隊の意味も、私が生きている意味も失う...そんな事はさせない。」
奈月は奈美をベットに戻し、決意を新たに病室をでる。

司軍医長「顔つきが変わったね。うん、これなら大丈夫そうだ。
もし錯乱したら、ベットに縛り付けて私のお酒に付き合ってもらうところだったんだけどなー。残念。」
と本当に残念そうに言うw

奈月少尉「そんな事を言っている暇はないですよ。
とにかく2人が死にに行かない様に、真木さんや他の協力者を集めないと。」

司軍医長「そうね、、私達は作戦についてけないから。。
ここで万が一の時の想定で準備は万全にしてるわ。それに協力者は近くにもいるよー、
ねー、やっしー?」
と後ろを振り向き通路の角を見て言うと。



苦笑しながら八島准尉が通路の角から出てくる。
八島准尉「だからそのあだ名はやめてくださいと何度も言ってるのに。
、、、弥栄少尉殿。今、何が起きてるのですか、自分には何も情報はありません。

ですが、ゴーストがあいつが何か苦しんでる気がする。
戦隊長もいつものように見えてるが、奈美准尉も二人とも心が悲しんでるように思えます。」
と奈月に話す。

奈月少尉「八島さん...そうだよね。ここまで来て仲間外れは嫌だよね。
簡単に言うと、戦隊長と奈美、橘副官とゴーストさんは戦隊員を死なせないために、4人とも犠牲になるつもりみたい。
何も言わないのと隠しているのは、バレたら上手くいかないかも知れないのと自分達以外の犠牲が出るかも知れないから...八島さん。
私達は、4人にそうして貰う程弱いかな?」

洸騎は首を振る。
八島准尉「いや、そうではないと思います。戦隊長達は弱いからとか思ってないと思いますよ。大切な仲間を護りたいんですよ。
BETAは数が多い、大陸や九州、西日本での戦いを見ていると、、、全員玉砕する事もあり得えます。
ゴーストは、戦隊長達は大切な仲間をそうさせたくないのでしょう。
ですが、我々もそれは同じ思い。攻めるも守るも後退するも戦隊全員で、ですよね?弥栄少尉殿。」

奈月少尉「勿論、私達は同じ戦隊の仲間。何をするのも一緒じゃないと、戦隊である意味がない。必ず4人とも生きて帰って貰わないと。」

八島准尉「その通りだと思います。ですが、多分きっちりした戦隊長の事だ。抜かりなく、作戦立案と承認は得ているはずです。
どう我々は動けばそれを覆せますかね。戦場でならと言いたいところですが、事前に何かできることがあれば動きたいですね。
終わったら、ゴーストはとっちめてやる。仲間外れにしたことを(# ゚Д゚)」
と笑ってるようで、静かに怒ってる。

奈月少尉「コレを覆せるのは...休暇に入っている真木さんしかない。
私達の戦術機は戦隊長によって行動が制限されるだろうから。」

八島准尉「、、、そうでありますな。知ってるとすれば実質あと2名、中隊長クラスかと。
なので西大尉殿ぐらいか。だがあの方も戦隊長の同期の桜である戦友、多分ついていくだろうな。
甲本大尉殿は、、若いからむしろ我々側にされてると思われます。。だとすれば真木大尉殿しかありませんね。」

奈月少尉「実は、上月中尉から戦隊長や奈美が変わったことは無いかと聞いていたんだよ。
2人とも、何も知らされてないんだ...知っていたら真木さんが許すはずがない。」

八島准尉「たぶん、もっとも信頼のおける、斯衛の二人だからこそなのかもしれない。
知っているなら、真木大尉殿の雷が落ちて今頃どうなっていることか。」

奈月少尉「とにかく、上月中尉に連絡しよう。それが一番良い筈...。」

八島准尉「そうですね、そうしましょう。それ次第でどう動くか決めましょう。」

司軍医長「ごめんね、私役にたたなくて、、沙奈江に何か言われたら私に言ってくれてもいいからね。」
と司は自分の不甲斐なさから言う。

奈月少尉「大丈夫ですよ司さん。よし、行動に移ろう。八島さん、一緒に来てください。
連絡するとは言っても戦隊長などに見られたら厄介ですので見張り役をお願いします。」

八島准尉「了解であります。戦隊長も奈美准尉も何故かカンがいい時がありますからね。気を付けないと。」

2人は電話を入手し、倉庫の物陰で上月に連絡を取る。
奈月少尉「上月中尉、やはり戦隊長と奈美は、いや橘副官もゴーストさんも死ぬ気です。」

それを聞いた上月は冷静に話す。
上月副官「一番考えられる可能性を引き当てましたか...、こちらも早急にそちらに戻れる様にします。
後、再生手術の為に司軍医が必要だとの事でこちらに来ていただけますか?と伝えてください。」

ひょっこりついて来ていた明日香が横で答える。
司軍医長「上月ちゃーん、、すぐに行くよー。」
と答える。

奈月少尉「はい、私も何か出来ることをしてみようと思います。」

上月副官「分かりました、こちらも同じく自分ができる事をしましょう。では、また会いましょう。」
電話は切れた。

司軍医長「じゃあ、ちょっくら沙奈枝江の足見に行ってくるね~。」
と明日香は離れる。

八島准尉「とりあえずは、上月副官殿にお任せして我々はどう動きましょうか?」

奈月少尉「うん、知らない人がどれだけいるかを把握して、実際に動ける様に意識をするとか?」

考えて答える洸騎。

八島准尉「うーん、戦術機部隊では橘副官と奈美准尉、ゴースト准尉以外はおそらく全員かと。
でも中隊長達は、、話すと大事になるかもしれませんな。あとうちの小隊長殿は、何か知ってる気がします。
菅中尉殿は、、何やらありますよね。私には知らない任務に就いていると思ってます。
弥栄少尉殿はおそらく知ってることがありますよね。自分には言えないのであれば大丈夫です。言わなくても。」
と言う。

奈月少尉「うん、ありがとう...こう考えると詰みの状態かな?。」

考える洸騎。
八島准尉「、、、でありますな。あまり大規模に皆に伝えると動揺が。戦隊が機能しなくなる可能性も。
ここは上月副官殿に任せますか。。。」

奈月少尉「うん、そうだね...。」

こうして奈月も洸騎もいい案がなく、離島防衛戦の演習に参加し、時間は進んでいく。

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