第零独立強襲戦隊興亡記~外伝1998年:菊間整備兵の思い

戦隊が佐渡島防衛戦より戻ってきた後の直近の話です。
ある夜、菊間は飼い主からの命令を考えつつ、基地内を姉妹が本当にスパイもしくは

海外への情報流出や飼い主の敵になることは無いと思いつつも情報を集めに翻弄していた。

菊間整備兵「(第一印象としては姉妹共々そうは見えないが...それを調べるのが仕事ですからね。
先ずは...妹の奈美准尉からですね。護衛兵がいるとしても、ある程度の信頼は勝ち取ってはあります。

それとなく聞きますかね。)」
菊間はそう思い奈美は確かこの時間は第六警戒小隊がアラート任務中で
衛士待機部屋にいたなと移動する。

衛士待機部屋に行くと奈美とゴーストが居る。ほかはいない様だ。
奈美は携帯端末で何か事務作業をしている。


ゴーストは瞑想しているのか、寝ているのか隣で目を閉じでいた。



菊間整備兵「お二人ともお疲れ様です。おや、今はお忙しいですかね?」
そう話しかける。

奈美准尉「あ、菊間さん。どうされたのですか。大丈夫ですよ。先日の報告書と言うか、はい。
反省文ですね。菊間さん有難うございました。真木さん達が駆けつけられたのは
菊間さんのお陰ですよ。それに真木さん足が再生されてほんとうに今生き生きとされてます。」
と優しく微笑み頭を下げる。

それを横で目を開けて誰か来ていたぐらいは解っていたようなゴースト。
ちゃんと寝ているようで周りの事は見ているようだった。
ゴースト准尉「お疲れ様です、今は待機中なので忙しくは無いですよ。」
と答える。

菊間整備兵「いえいえ、私は大した事はしてませんよ。
(特に隠している様には見えない...が、姉妹は心を読めると聞く。証明する為にも、何か私の思っている事を読ませてみるか...)」

考え事をしている?菊間を見てきょとんとしつつ奈美が答える。
奈美准尉「いえ、菊間さんのお力がありましたから。それで?どうかされましたか?

整備班も夜は基本交代制勤務で今はスクランブルコールがなければ
待機ですよね。こんな夜中に何かありましたか。」
と答える。

菊間整備兵「あぁ、丁度その気になったので今の所の機体の不調やら、こうして欲しいとかの案はあるかなと思いましてね。
(試してみよう...OS関係は未だに進捗が厳しい...申し訳ないな...)」
菊間はそう強く思いながら、聞く。

奈美はあ、と思いつつ答える。
奈美准尉「いえ、さすが斯衛の整備班出身の方ですよ。稼働率も高くて。今の状態でも十分ですよ。
整備班あっての私達です。ですから体をいたわってくださいね。」
と心を読み取って答える。

ゴーストは菊間整備兵らしいくないなと思いつつ同意する。

菊間整備兵「心遣いありがとうございます。(...決まったな。姉妹は心を読める。
だが果たして彼女が国家転覆計画をするだろうか...これ以上聞くとボロが出る、又は心を読まれるかも知れない。
引くとしよう。)そうですね、私も休ませて頂きますよ。失礼しました。」
そう言って即座に退散した。

怪訝に思う奈美。
奈美准尉「どうしたのでしょうか、菊間さん。何か考え事をしているようでしたが。
何かOS絡みで開発が上手く行ってないのでしょうか。佐渡島防衛戦で全力出撃してますから
整備班の方々にはご迷惑をお掛けしてますし。
出来ることがあればまた食べ物差し入れしたいです。」
とゴーストに伝える。

ゴースト准尉「そうですね、そうしましょう。(何だったんだ?何か探っていたような)」
と少しうわの空で答えていた。

その後姉亜美に聞きに行く前の数日間、姉妹の周りに起きた事件を収集した結果。

菊間整備兵「...スパイに見られないための自作自演の線が考えられるとは言え、異常な姉妹達への、
特に妹奈美の拉致やら暗殺計画の数...彼女達がスパイ又は国家転覆をする様な輩じゃない事を証明するには十分だな。」

経過報告として、彼の"飼い主"に報告した結果。
先に南條恭次郎中将との会合での説明と、菊間の情報により、早雲姉妹のスパイ疑惑は無くなり、姉妹の力を利用する考えも、
南條中将との話し合いにて、斯衛軍の作戦にて第零独立強襲戦隊が必ず協力すると言う形で決着が着いた。

菊間整備兵「...流石"飼い主"良い着地の仕方です。
さて...南條中将から、戦隊長に私の正体が知られているでしょうし、もはや意味はありませんが、一応最初に受けた任務はこなしましょうかね。」

そう菊間は、戦隊長室へ向かう。

いつものように書類の山に埋もれて、眉間にしわを寄せて書類整理を行っている亜美。
菊間の気配を感じてドアに目を向ける。



菊間整備兵「失礼、戦隊長はおられますか?大事なお話があります。」

亜美戦隊長「どうぞ、入ってください。」
と声を掛ける。

菊間整備兵「いらっしゃいましたか、失礼します。」
菊間は入室し、椅子に座る。

休憩を兼ねて亜美も執務机から離れて長机の椅子に座り話を聞く。
気を利かせて紫音がお茶とお茶請けを2人に出し亜美の隣に座る。
有難う紫音といいつつお茶を飲む亜美。

そして菊間に問いかける。
亜美戦隊長「で、重要な話とは。」

菊間整備兵「私がスパイであることは、以前バラしたのでそこは改めて言う必要はないでしょう。
重要なのは、私が受けた任務内容です。
内容は、貴方方早雲姉妹が日本帝国の国家転覆などを企むスパイではないか調査しろ、との任務でした。」
いつになく真剣なら眼差しで亜美を見る菊間。

その真剣な目をみて素直に答える亜美。
亜美戦隊長「、、、私は日本人として、早雲家の娘として生きて死にたい。
ですからそんなことはしたくはない。そしてそれは奈美も同じです。
それだけは信じて欲しいです。政治的にソ連に売るのであれば私達は
隠れるしかない、ひっそりと生きていきます。」
と本音を語る。

菊間はその発言に、突如笑う。
菊間整備兵「戦隊長、言ったでしょう?それが任務"だった"と。
既に姉妹は斯衛の、日本に危害を加える疑わしき者ではありませんよ?」

亜美はその本心を聞き一瞬ホッとするが厳しい顔をして答える。
亜美戦隊長「、、、貴官がそう判断していただけるのは本当にありがたい。
しかし、中にはソ連よりな派閥もあるとか。そして、あの第六警戒小隊の演習事件。
政治的な話があればいつ私達が拉致されてどうなるかも解らない。

南條中将と三芳中将が睨みを利かせているから今は何とかなっていると思っている。
そして、私達を無理やり洗脳等で人格を変えられたら、、、どうにもならない事が
起きるかもしれない、それこそ国家転覆につながるかもしれない。
それでもそう思っていただけますか。」
と紫音の手を握りしめて答える。

紫音は亜美の思いをくみ取り優しい顔をして答える。
橘副官「、、、そうはさせませんよ。亜美。私が護ります。そんなこと絶対させません。」

嬉しそうに答える亜美。
亜美戦隊長「うん、そうであれば嬉しいけど。」
と顔を一瞬赤らめたがキリッと表情を戻して言う。

菊間整備兵「うーむ、私の目の前で恋愛物小説的な展開が...まぁいいでしょう。
だからこそ南條中将は斑鳩家と国連の香月博士と手を組んだんですよ。」

亜美戦隊長「はい、ですから今は、菊間整備兵であるならば貴方は信用できます。
敵にならないことを祈ります。」
と答える。

菊間整備兵「ウチの飼い主次第とだけ言っておきますよ。」

少し笑いながら答える。
亜美戦隊長「別にこのまま、整備兵として戦隊にずうーと居てもらってもいいのですからね。」
と本心で言う。。

菊間整備兵「御心遣い、ありがとうございます。
できればそうあって欲しいですがね...」

亜美戦隊長「そうですね。、、、話は以上ですか?」

菊間整備兵「えぇコレからは菅さんと同じく、私も戦隊の防諜担当としても活動して行きます。
その前の、個人的な禊ぎと言う奴です。
ですから今後、調査等必要な事があればお力になれるでしょう。」

亜美戦隊長「有難うございます。防諜に関しては私は無力です。菅中尉と連携してお願い致します。」

菊間整備兵「了解致しました。それでは私はこれで。」
そう立ち上がり、部屋を後にしようとする。

亜美戦隊長「はい、お任せします。」
と執務に戻る。

そして菊間が部屋を出ると、ドアの横に武子が居た。



菊間整備兵「これはこれは西大尉。いや女男爵殿...盗み聞きは行けませんな。」

武子は見える片目を細めて答える。
西大尉「、、、菊間殿と同じだよ、私だって西家の分家とはいえ男爵。
諜報もな。話はついたようだな。しかしあなたの裏の顔がな。
ある程度は知っている。西家の情報網で。だからここで待っていたのだよ。」
と答える。

菊間整備兵「そりゃそうですよ。何せ貴方の子飼い達には、ワザとこちらから流した情報を

掴ませているに過ぎませんでしたからね。
それ以上の事を引き出せるか期待したんですがね...」
と少し挑発めいた発言をする。

ニヤリと不敵に笑う武子。
西大尉「、、、まあな。貴官の過去の経歴ぐらいはおぼろげにつかんではいるさ。ブラフ以外の所でな。。
まあ、そこに興味はない。今はいい。だが今後政治的な話の風向きが変わったら。」

ここで顔つきが一気にだらしなくなる。ニヤソな顔つきになり。
西大尉「私は奈美ちゃんをお持ち帰りしてメイドにして育てるよ。
あーんなことやこーんなことを教えて。
それがお上のお怒りを買ってでも辞めないさ。」
と答える。



菊間整備兵「所詮私は唯の飼い犬に過ぎません。私の過去の経歴を洗ったところで、意味はありませんよ。
メイド云々は、姉御と東野中尉に報告しておきます。」

武子はそれに関しては我関せずとして相手にせず手をひらひらして自室へ戻っていく。
西大尉「、、、構わんよ。過去の経歴で解ることもある。
意味はなくはないな。貴官の行ってきた事が解ればこの先の裏の行動も少しは読める。
いいさ好きに報告すれば、私は亜美とともに、奈美を守るよ。」
どこまで冗談なのか、本気なのか本心が解らない武子であった。

菊間整備兵「まぁ、良いでしょう。忙しくなりますかね...」

菊間整備兵「(一介の整備兵...それも良いですが、私は諜報員です。
彼女達とこれからもこんな関係が続いて行くと良いんですがね...)」
これは菊間の本心で有った。誰にも悟らせない(亜美や奈美にも)思いを
心の中でつぶやいていた。
END