第零独立強襲戦隊興亡記~本編2-1:佐渡島防衛戦前編~

 

第零独立強襲戦隊が結成されて京都防衛戦よりその後、戦力は十分といえないが戦隊としての戦力は整った。
そして京都防衛戦が失敗したのち南條中将の部隊と戦隊は仙台にある日本帝国陸軍の基地へ移動命令が。

そして佐渡島防衛戦の3週間ほど前の夜。
奈美は非番で自室で寝ていた。
悪夢を見ている。少し未来のような。。。



戦隊の戦術機部隊が佐渡島防衛戦に増援部隊で行く、だがアメリカ軍の支援もなく、他の陸軍部隊の支援もない。
戦隊の衛士たちが民間人を退避させるために次々に戦死していく。そして最期は佐渡島のとある地点で亜美姉さんと共に
奈美も一緒にBETAに喰われて終わる。でも真木さんは、ちょうど足の再生手術で後方の病院にいる。
そこで目を覚ます。

嫌な汗を流し、涙を流す。でも真木さん達が無事ならそれでいいとも思った。
前世と違ってここまで両親に、南條叔父様、三芳叔父様、そして真木さんに愛されて育てられた。
ならばと、寝巻のまま、亜美のいる戦隊長室にふらふらしながら行く。

呆然とした目をした状態で、戦隊長室に入る。
夜間執務を行っていた亜美がびっくりして、奈美を迎える。
亜美戦隊長「奈美、一人でこんな夜中に駄目よ。それにその姿。どうしたの。」
と優しく声をかける。



奈美准尉「、、、少し先の未来が見えました。私達、そこで終わるみたい。。。
でも真木さんはちょうど足の再生手術で後方にいるようです。。。」
とぐったりしながら話す。。

ついにこの時が来たのかと思いつつも奈美の頭をなでて言う。
亜美戦隊長「、、、そう。そんな事が。あがいては見るけど。真木さんや奈月達は巻き込みたいくないわね。
それならその様子なら、真木さん明日足の事で報告に来るかもね。だったら長く療養してもらって
ぜひとも生き残ってもらわないとね。」
と奈美を戦隊長室にある簡易ベットを出して寝かせる。
とても疲れたのか、そのまま寝落ちする奈美。
しばらく手を握っていたがその手を布団の中に入れて、執務を再開する。

そして翌朝早朝。
戦隊長室へ真木が訪れた。
真木班長「失礼するよ。左足の再生手術の予定が決まったから伝えに来たんだが、今はいいかい?」



徹夜明けの亜美は来ることが解っていたような顔をして迎える。
執務机の隣には奈美がまだ寝ている。

亜美戦隊長「もちろんですよ、再生手術良かったですね。で期間はどれくらいですか。
落合整備兵も班長代理ぐらいは務まるはずですから、これを機会に実家での話し合いも含めて長期休暇を
どうぞ取ってくださいよ。このところ、戦隊が発足してから整備班にはかなりの激務でしたからね。」
と話す。

真木は亜美の言い方に違和感を覚えるも答える。
真木班長「あぁ、落合には次期整備班長の為にも経験を積んで欲しいからね。
...いやいつどんな事が起きるか分からない、手術が終わり次第戻ってくるよ。」

そこに、二人の声が聞こえて目を覚ました奈美。
奈美准尉「、、、、真木さん。ちゃんと家族と特にお父様と話し合ってきてください。
いつどうなるかわからないご時世ですから。整備班の方もみんな一時的であれば大丈夫だと思いますよ。
それにこんな時こそゆっくりしておいた方がいいです。リフレッシュしてきてください。」
とやつれたような顔をしているが笑顔で話す。

真木班長「なぁ、そう言ってくれるのは嬉しいが2人とも何か隠してないかい?
まるでアタシを戦隊から暫く離そうとしているね...。アタシには、話せないのかい?」

亜美と奈美はドキッとしたが二人とも顔には出さずに。
亜美戦隊長「そんなことないですよ、本当に真木さんには一度ゆっくりしてほしいのと、家族と話し合ってほしいから
そう言ってるだけですから。」

奈美もうなずき。
奈美准尉「もちろんですよ、本当は一緒にいつもいて欲しいですが、家族の事を優先してください。
そういった意味ではお早いお帰りを、、、とではなくゆっくり療養してください。
事を急いで、足がまた使えなくなったりしても困りますから。
すみません、私は、医務室で少し診察してもらってきますね。体調がよくないので。」
と隠していることを言わざるを得ない状況になる前にふらつきながら戦隊長室を出る。

亜美戦隊長「ああ、もちろん上月副官も一緒に連れてって良いですからね。
真木さんの補佐をしてもらわないと。」
とにっこりしながら話す。

鎌をかけた結果、明らかに隠している事を確信した真木だがこれ以上の事は言わなかった。
真木班長「...、分かったよ、ちゃんと家族と話してくるさ。お土産も何か買ってくるよ。上月も勿論同行させるさ。」

嘘が下手な姉妹はもう心の中では謝りつつ、冷や汗をかきそうになっていた。
亜美戦隊長「ああ、それはお土産は楽しみですね。何かみんなで食べらるのも買ってきてくださいね。
ああ、もう奈美は一人で行動して。。。。菅中尉がいるからいいようなものだけど。」
と奈月に連絡して護衛してもらうように連絡をする。

真木班長「実は...、明後日に手術になってよ。これから立つから。じゃあ、行ってくる。」

亜美戦隊長「あ、そうなのですね。早い方がいいですね。では1ヶ月程度の特別休暇を真木大尉と上月中尉に与えます。
どうぞリフレッシュしてきてください。」
と言う。

真木班長「あぁ...行って来る。(本当に、何も言ってくれないんだな...。嫌な予感がするね...。)」

そして真木は戦隊長室を退出し、落合、砂原、菊間の3名に引継ぎを行い基地の正門から手術のために出ていく。
それを遠くから見守ってる奈美、泣きながら心の中で。
奈美准尉「、、、(今まで有難うございました。真木さんのおかげで絶望から救われて本当に先に進みたいと思いました。
大好きな真木さん。。。さようなら。ちゃんと生き残ってくださいね。)」
と泣き崩れる。

奈美を心配してきた亜美。
亜美戦隊長「大丈夫、全滅はさせないわよ。せめて、若い子たちは撤退させないとね。」
と奈美を抱きかかえる。

基地の駐車場に停めてある、一般車の助席に乗り込んだ真木は、運転席に座っている上月と話した。
上月副官「大尉、まさか明後日手術なんて急ですね。戦隊長はなんて仰ってましたか?。」



真木班長「アタシとアンタに一カ月の長期休暇だってよ...、そんな余裕は無いはずなんだけど...。」
上月副官「考えすぎ...、ではないですよね?大尉、今貴方は凄い怪訝な顔をしてますよ?。」

真木班長「やっぱりかい?戦隊長、亜美は何かを隠してる。

憶測だけど、近々本土にBETAが攻めて来ると考えるべきかね...。」
上月副官「まさか、そんな...、戦隊長はそんな予知能力的な力があるので?。」

真木班長「詳しくは言えないけど、特殊な力があるとだけは言っておくよ。
おちおちベッドに寝ている訳にはいかないようだね。とりあえず出して。」
上月副官「はい、何もなければ良いんですが。」

2人の乗った車が出たのを見送る菊間、実は戦隊長室に盗聴器を仕込んでいたので話は彼に筒抜けだった。
菊間整備兵「...BETA侵攻の可能性ありって所か。此処に潜入して随分経つが、
クーデターの可能性は無し。私の任務もこれで終わりだが、このまま離れるのも忍びないですね。」
そう1人ごちていると、菅中尉が来ていた。
菊間整備兵「菅中尉、遅くなりましたが再就職おめでとうございます。整備兵として御用ですか?」

やれやれという表情をして、
菅中尉「再就職?もう、嫌みなの(苦笑)。とりあえず有難うございます。
またまた、そんなわけないでしょう。貴方ねえ、戦隊長室に盗聴器仕込んで、、、。
特に南條中将から菊間整備兵にはしなくてよいと言ってたから静観してたけど。
それがなかったら貴方を拘束してましたわよ。」
とあきれながら言う。



いつもはしない和かな笑顔を張り付かせた菊間は答える。
菊間整備兵「中将殿とは色々と密約を交わしてますし、私の飼主との関係も良好ですからね。
これもクーデター防止、詰まるところの国防に当たりますから、内緒ですよ?
さて、改めて何用で?」

その和かな顔をしている菊間を菅は怪訝な顔つきで話す。
菅中尉「姉妹の事を報告するの?状況によっては、私は私の思う行動をするわよ。
クーデターを起こすようなことはしないわよ。あの子達は。
それよりもこの居場所をつぶすのであればそれは見過ごせないわ。
私は娘を2回も死なせたりすることは見過ごせない。」
と拳銃に手をかける。

菊間整備兵「貴方が他に飼われていた時に、私が言った事を思い出して下さいよ。
私はあくまでもクーデターをするかの情報を流すだけです。
確かに姉妹の秘密を探れとも言われましたが、中将殿の介入もあって、私の任務は完全に形骸化してます。
此処まで戦隊に居たのは、居心地良かったからですよ?」
などと言い、拳銃に反応するが、無視して言い切る菊間。

菅中尉「そう、じゃあ戦隊はクーデターを起こすことは無いと言う事を報告するでいいのね。
それだったらもうこのまま戦隊の整備兵になりなさいよ。真木さんもいることだし。
そうしてくれると嬉しいわ。」
と拳銃にかけた手を放す。

菊間整備兵「そうしたいんですが、一度飼い主の所に戻らねばならなくなりましてね。

もしかしたら戻って来ないかもですよ。
それに、面白半分で姉御が乗った車にも盗聴器を仕掛けたら、飼い主に伝える必要があるのが聞けましてね。

眉唾物ですけどね。」

菅中尉「そうなのね。また会えるといいけど。
、、、それは早雲姉妹の事?二人を酷い目に合わせないであげて。できれば静かにさせてあげて、お願い。
二人は、、、。いえ、それがあなたの任務なのね。頼む筋合いではないわ。その時敵でなければ、、いいわね。」

菊間整備兵「近々本土にBETAが侵攻するとか言う話、そして姉妹がそれを察知できる能力者である...。
眉唾物ですが、手土産が増えましたよ。
勿論、中将殿と飼主の関係は良好ですから?大事にはならないとは思いますがね。」

驚きまさかと思いつつも。
菅中尉「そんな話が、、、大事にならない?政治的にどうなるか。。

それにあなたの飼い主かなりのやり手ですからね。
まあ、仕方ないわ。その時は私も姉妹を護れることをするわ。」

菊間整備兵「これ以上は貴方の言う通り、政治の話です。私も姉御達の後を追って斯衛に戻りますよ...。

菅中尉、お達者で。」
そう言って、菊間は物陰に消えていった。

その消えた菊間の方角を見て菅は思った。
菅中尉「(、、、姉妹を護ってあげたいけど、これは私個人では無理ね。南條中将に報告しておくとしますか。)」
と考えて南條中将と連絡を取ろうとするのであった。

真木は上月の運転する車に揺られ、仙台の斯衛基地に到着した。
兵士に敬礼で迎えられ、車から降りて出迎えた自身の母、真木舞香が出迎えた。
舞香少佐「いらっしゃい沙奈江、上月さんもお疲れ様。直ぐに手術を始められるわよ。」

真木班長「お袋、ありがとう...。」
上月副官「ありがとうございます少佐。私は大丈夫です。」

とそこに、司軍医長もいる、いつもの一升瓶を片手に珍しく服をちゃんと着て白衣を着ている。
司軍医長「沙奈江ちゃんの負傷した左足の手術したの私だから来ちゃった~。
ちゃんと状況も伝えないといけないからね。
私は戦隊の主治医だからね~。」



舞香はニコニコしながら話を続ける。
舞香少佐「あらあら、沙奈江はいい主治医を見つけたみたいね。貴方もいらして下さい。
準備は既に終わっているから、後は沙奈江次第よ?」

真木班長「断る訳ないだろ?アタシは足を治すために此処に来たんだ。
断る理由はないし、早く帰る理由もさっき出来た。お袋、頼む。」

そんな中で、舞香の後ろから斯衛軍服の男が現れた。沙奈江の父親、真木正宗だ。
真木正宗「沙奈江...、久しぶりだな。」
真木班長「...良く顔を出せたな、クソ親父。アタシの決めた事を頭から否定しまくって、
出て行った事を何も言わなかったのに、今更父親ぶりやがって。」

真木正宗「あぁ、確かに沙奈江の決めた事を否定していた。
だがこれはひとえにお前の為を思ってやった事だ、後悔はない。」
姉妹の事を信じて少し話そうかと思ったが、結局沙奈江の思った通りの返しが来て内心落胆する。

真木班長「ケッ、そうかよ。話は後だ、アタシは足を治すために来たんだ。」
真木正宗「そうか、ならば早く治すといい。真木家の為、日本の未来に貢献する為にな。」
真木班長「やっぱり、アンタはクソ野郎だよ。」

それを見かねた司は。
司軍医長「はい、はい、そこまで。お父様ももうちょっと本心いいなさいよ。
こんなご時世なんだからどうなるかもわからないのよ。沙奈江もね。リラックスしないとね。」
と普段は絶対に言わないまじめな事を言う。

真木班長「分かってるさ。行こう、くそ親父は無視しよう。」
真木正宗「ふん...。」

舞香少佐「貴方ね...。ごめんなさい。気にしないでいいから。さあこっちよ。」

司はやれやれと苦笑し思った。
(こんな時こそ奈美ちゃんいたらいいのにね。そしたら沙奈江ちゃんのお父さんの内情わかるかもしれないのに。。)
と司も付いていく。

舞香に連れられて、真木達は病院内部に入る。
舞香少佐「沙奈江、執刀医に言われるけど言っておくわ。再生手術が成功して、足を取り戻しても衛士に戻れるとは限らないわ。
それだけは分かって頂戴。」

真木班長「あぁ...分かってる。けど、アタシは可能性があるなら賭けたいんだ。」
舞香少佐「言うと思ったわ、行きなさい。そしてどんな結果になろうと、あの姉妹の元に帰るのよ。」

司軍医長「大丈夫だよ、ここの軍医長優秀だから。私もいるしね。ちゃんと亜美ちゃんと奈美ちゃんの所に帰ろうね。
目を覚まさなかったらちゃんと酒をぶっかけても目覚めさせるよ。」
と声をかける。

場所は変わって南條中将の執務室へ。
南條中将が通信端末で菅中尉より報告を受けている。
南條中将「予想していた範囲内だよ。先方とは、それなりに伝えて牽制はしている。
タイミングが合えば姉妹に協力させてくれとは言われて、その時が来ればとは言ったが...。
早い話になりそうだな。」
南條は冷静に言葉を紡ぎ、今後の展開を考えている。



 

とそこに亜美戦隊長が面会で来ていると衛兵から連絡がくる。
南條中将「大方今の件だな、構わない。通してくれ。」

衛兵に通されて南條中将の執務室に行く。
亜美戦隊長「早雲大尉です。少しお話があります。申し訳ありませんが時間を少しいただけますか。」
と南條に伝える。

南條中将「勿論だ大尉。何かね?」

敬礼して南條の執務室に入り話を始める亜美。
亜美戦隊長「2点あります。
まず1点目です。第零独立強襲戦隊の戦術機部隊の編成がとりあえずは整いました。
出来れば9個小隊まで増設したいですが、6個小隊+戦隊本部小隊の7個小隊で戦隊として動けそうです。
今後の戦闘での指揮順列といざという時の戦隊保全の為の後退優先部隊の許可を頂きたいです。」

と、南條に資料を渡す。
それを見ると、亜美に何か有った時の指揮官序列(①西大尉②甲本大尉➂菅中尉)と
後退優先部隊に第二中隊(第二小隊以下偶数小隊)が記載されているが
第六警戒小隊は記載されていない。

南條中将「分かった許可しよう。資料には第六警戒小隊の記載がないが、これは2点目と関係あるのかね?」

亜美は覚悟したような眼をして南條に話す。
亜美戦隊長「はい2点目は、すでにもう情報は伝わっているとは思いますが、早雲准尉の夢見で解ったことですが
1ヶ月以内に離島防衛戦が起こります。
佐渡島です。ここが防衛できないと本土防衛戦になります。

そして早雲准尉の話では、、アメリカ軍はおそらく日米同盟を破棄して支援部隊は来ません。
さらに、日本帝国軍も戦術機部隊の支援は出せません。むしろ、佐渡島の防衛部隊が引き抜かれてます。
支援に行けるのは、、遊撃部隊である我が戦隊のみです。海軍の支援はありますがそれでも支えられません。
民間人は絶対に本土に送る必要があります。ですから遅滞戦闘を行いますが、
HQと情報収集、部隊連携の通信等に第六警戒小隊は必須です。
ですから後退優先部隊には入れてません。」

と姉妹がここで戦死することは言わずに答える。
南條中将「なるほど、私の空挺部隊も投入しよう。部隊派遣についても問題ないが、
大尉。君は佐渡島を死に場所にするつもりかね?」
亜美の表情から佐渡島に部隊派遣するだけではない事を察して、鎌をかける。
南條中将「言っておくが、まさか私を誤魔化せると思ってないだろうね?」

亜美はその言葉に動揺するが、、、
亜美戦隊長「ぐ、南條中将相手に誤魔化せるとは思ってはいません。
ですが、、、離島防衛戦にだけに戦力はつぎ込めません。
中将麾下の空挺部隊は中部方面からのBETAの部隊の防戦で手一杯になるでしょう。
出来る限りはあがいてみます。ですが、、今の状態では私は民間人と部下を護るのが第一優先です。
その思いは奈美も変わりません。ですから真木整備班長も遠ざけました。」
と答える。

南條は、資料から目を離して両眼を擦った後続ける。
南條中将「大尉、そんなに部下が頼りないかね?君の部下達は少なからず修羅場を潜り抜けて来ている。
生き残れると信じてやれないのかね?
真木班長だって、それを聞いたら悲しむぞ?
それに、みすみす死にに行かせる許可を私が出すと思うかね?」

覚悟した顔で言う亜美。
亜美戦隊長「いえ、もちろん信じています。そこまで部隊を鍛え上げたつもりです。
ですが、これは変えられません。奈美の夢見で外れた事はありません。
そうなる状況になってしまいます。ですから私は両親と同じく出来る事をいたします。」

一瞬後ろめたいのか、話すのを中断するが続ける。
亜美戦隊長「真木さんには、、、嘘をつきました。ですがあの方は得難い存在です。
これからも、、、ですからこれでいいのです。」
と寂しそうな、諦めた表情になる。自分たちの運命は変えられないと。。
亜美戦隊長「あと、民間人退避後は戦隊の戦術機を持ち帰りたいので、戦術機母艦を1隻手配お願い致しましす。」

南條はそれを聞いて、目を細めた。
南條中将「そうか、これ以上は何も言わんよ。退出して構わんよ。」

亜美は敬礼し、退出するために南條に背を向ける。ドアから出る前に振り向かず話す。
亜美戦隊長「南條叔父様、ごめんなさい。そしてありがとうございます。こんなにも私達を慈しんでくれて、、、。
だから私達姉妹は出来ることを最期まで諦めずに行います。それでも駄目ならごめんなさい、、、。
もう、お父さんとお母さんのような悲しいことは嫌です。だから私たちが出来る事をします。」
と言ってそのまま南條中将の執務室から退出して行く。

南條中将「...何が夢見だ、何が運命だ。
そんな事が確実なら、今こうやって足掻いている我々は道化でしかない。
運命は足掻き、そして変える為にある。姉妹には悪いがその運命は絶対に変えてみせるさ。
そのための布石を、打っておこうか...。いや既に打ってあったな。」
退出した、亜美といない奈美を南條は思う。

場所は変わり、斯衛基地へ。
真木が次に目を覚ましたのは、病室のベッドだった。
上月副官「大尉!手術は成功しましたよ!。」

真木班長「そう、なのかい?。」
付き添っていた上月に言われ左足を見ると、確かに金属ではない生の足があった。

九州でBETAに喰われた筈の自身の足だ。

真木班長「アタシの...。アタシの足だ...。どれだけ夢見た事か...。」
真木は嬉しくて涙を流す。

隣で祝い酒だとがぶ呑みしている司も喜ぶ。
司軍医長「良かったね。沙奈江ちゃん。これで完全復帰できるね。しばらくリハビリ頑張ろうね。
でも急いじゃだめだよ。前みたいに。。ゆっくり確実にもとに戻さないといけないからね。」

真木班長「相変わらずだなヤブ医者。確かに...。でも、何か胸騒ぎがするんだ。
亜美と奈美に何か嫌な事が起きそうな予感がするんだ、何故そう思うのかは分からないけど...。」

司軍医長「それならなおさらだよ。沙奈江がそう思うなら何かあるんだと思う。
だけど急いじゃダメ。確実に治すことを優先しないともとに戻らない可能性もあるから。」
と困った顔をする。。。

そんな中で、上月が口を挟む。
上月副官「なるほど、私が戦隊や南條中将に連絡をとってみます。大尉は落ち着いてリハビリをして下さい。
もし何かあったら衛士として助けに行けるように、今は急がないで下さい。」
真木班長「上月...。あぁ、任せるよ。アンタがいて良かった。」

 

場所は変わり、工兵部隊の部屋に移る。
最近の戦隊は何かおかしい、戦隊長が特に何かを隠している気がする。
と丸芽は思った。

秋村特務少尉「空挺降下が出来る部隊の皆さんは大変ですね。」
君原少尉「空挺できない私らにはかかわりがなさそうな話だ、残念ながらな。」

空挺降下訓練が繰り返されていることについて少尉二人が駄弁っている裏で、丸芽は畑中副官の小言を聞いていた。
畑中副官「隊長、さすがに練度が低下するリスクが大きすぎます。
無理を言ってでもあの訓練に参加した方がいいのでは?
空挺部隊に混ざって地上で状況に参加してもいいと思うのですが。」



丸芽特務大尉「待て待て、それは浅慮にすぎるだろう。戦隊長、俺たちには何も言ってこないが明らかに何かある。」


畑中副官「どういうことです?」


丸芽特務大尉「畑中、お前にしては珍しいな。こういう時のお前は真っ先に気づくはずなのに。」
畑中副官「もったいぶらないで教えてくださいよ。」

丸芽特務大尉「そうだな……。」

秋村特務少尉「二人とも、夫婦漫才しながら真面目な話をするのはやめてください。」

二人は同時に答える。
丸芽特務大尉「夫婦じゃないぞ。」
畑中副官「こっちから願い下げですね。」

丸芽特務大尉「まあとにかく、俺はこの演習の裏には何かしらの重大事項があると思うのよ。」
畑中副官「重大事項……とは?」

丸芽特務大尉「さあな。そこまでは知らん。」
畑中副官「そうですか、頼りにならない直感ですね。」

丸芽特務大尉「そうだな、お前も気づかなかったんだからお互い様だが。」
畑中副官「そもそもそんな重大事項なんて存在しないかもしれませんけどね。」

丸芽特務大尉「いや、ほぼ確実にあり得るな。俺は、そう確信している。」

君原少尉「そこまで言うなら確かめに行けばいいじゃないですか。」

丸芽特務大尉「そうだな、戦隊長室に行こうか。」
畑中副官「本気ですか?」

丸芽特務大尉「本気だよ。ここで詮議してても埒が明かない。
みんな、ついて来るんだ。戦隊長室に行くぞ
丸芽が立ち上がって言うと、室内の皆がそれを追って立ち上がった。

戦隊長室へ行き、丸芽が声を掛ける。
丸芽特務大尉「失礼します。戦隊長、少しお時間良いですか」

亜美は即応対応ができるように色々指示を出し、来るべき離島防衛戦の準備に取り掛かってた。
戦術機部隊は空挺降下での支援を行なえるように日々防衛戦の訓練を。
奈美も何度も戦術機で降下訓練を行い、気絶せずに作戦行動に耐えられるようになっていた。

少しやつれたような感じで答える亜美
亜美戦隊長「丸芽特務大尉?構いませんが。」
と丸芽の心うちを聞き違和感を感じて、さらに工兵全員が居ることが解り戸惑いつつも答える。
丸芽特務大尉「単刀直入に聞かせてください。ここのところ進められている空挺訓練の裏に、

我々には伝えていない重要な事項があるのではありませんか?戦隊長のご様子、

ここのところおかしいんですよ。まるで、何かを隠しているようです。」 

ドキリとするが、それは心のうちにしまい、丸芽にバレかけているのを納得させるために答える。
亜美戦隊長「いえ、いまは戦隊の空挺降下の練度を高めるためにもう訓練を行っています。
奈美准尉が特に必要ですからね。失敗が無いように色々地形等を変えて対応させているのですよ。
第一、第二中隊全員ができなければいけませんからね。」
少しやつれた表情をしながら答える。

丸芽特務大尉「そうですか、確かにそれはそうでしょう。ですが、果たしてあの訓練で対応する相手は、

どこから来るかすらわかっていない。
それなのにあそこまで具体的な訓練を行うことが、果たして有効なのでしょうか?

何か我々工兵隊に隠されている情報があるのでは?」

亜美戦隊長「南條中将と話しているがBETAの侵攻は基本、西日本からです。
何かあるとすればそちらに工兵部隊はお願いしたい。
我々空挺降下が出来る部隊は本土だけではなく、大陸からの直接攻撃も視野に入れて海岸線防衛の事も考えている。
ですから空挺降下での訓練を行っているだけです。特に何かあるとは考えてはいません。
と離島防衛戦については話さなかった。

丸芽特務大尉「あの動き、空挺降下の流れを考えると奪還戦の計画ではなさそうだ。

西日本以外のエリアからの侵攻を考えてのものだと思いましたが……

その意図はない、ということで?」

さすが歴戦の特務大尉。鋭いと思いつつもかわす亜美。
亜美戦隊長「、、、特に具体的にここからとは想定しておりません。
どこにでも行けるように様々な場所を想定して演習を行っているだけです。」
と答える。

丸芽特務大尉「なるほど……わかりました、それでは。」
納得がいかない丸芽はこれははぐらかされている上に何かあるなと確定し、畑中達を連れて出ていく。
黙ってやり取りを聞いていた畑中たちが通路で話す。

秋村特務少尉「なんで私たちを連れてきたんですかね?。」
畑中副官「大方証人を用意するためだろう。」
と工兵の部隊部屋へ戻っていく。

部屋に戻った丸芽は歴戦の特務大尉としてどうすればいいか考え、行動する。
丸芽特務大尉「畑中、至急上月副官に連絡を取りたい頼めるか。」
畑中副官「解りました。今連絡してみます。」

感心する二人。
秋村特務少尉「さすが隊長、動くのは早いね。」
君原少尉「そうだな、こういうとこは機敏だ。」

畑中副官「繋がりました。どうぞ。」

丸芽特務大尉「上月さん、ちょっとお時間をいただいても良いですか?整備班長と話したいことがあるのですが。」

上月副官「今、真木大尉はリハビリ中ですので私が話を聞きます。
どうされましたか。」

丸芽は戦隊長達が何か独自に動いていると上月副官に話す。

ちょうど戦隊の状況を聞きたかった上月副官は答える。
上月副官「なるほど、やはり何かありますね。解りました。私からも戦隊長に話をしてみます、
あと南條中将にも連絡を取ってみますので戦隊で何かありましたら連絡取り合いましょう。」

丸芽特務大尉「ありがとうございます。一緒になんとかしましょう、
その時が来ても我々はおそらく前線に出られないでしょうが」

上月副官「そこは仕方がありません、我々と機体と武装も任務内容も違いますから。
ですが、それでも戦友です。共に戦っています。宜しくお願い致します。では。」
と連絡を切る。

丸芽はやれやれと思いつつ、戦隊の為にできることをやっていこうと思ったのであった。

そして、場所は斯衛基地の上月側へ。
上月副官「戦隊長、お疲れ様です。上月中尉であります。
真木大尉の手術が無事に終わり、これからリハビリを開始するところです。
そちらは今どんな状況でしょうか?」

亜美は心苦しく思ったが、嘘をついて話す。
亜美戦隊長「お疲れ様です。上月副官。それは良かった。うれしいですね。
こちらは今は通常訓練を行って、部隊全体の連携と練度を高める訓練を行っています。
整備班も落合整備兵と砂原整備兵達を中心に頑張ってくれてますので問題ありませんよ。
ゆっくりリハビリしてください。
真木さんはお父様と仲直りもしてほしいですからね。ゆっくり焦らず真木さんをお願いしますね。」
と言う。

上月は真木の嫌な予感を聞き、亜美が何か隠しているのではと思い少し深く聞く。
上月副官「分かりました...、ですが他に何かありますよね?
例えば、私や大尉に黙って死にに行くような場所に出撃するとか。」

亜美はドキッとするが、何とか平常心を保って答える。
亜美戦隊長「いや、そんなことないですよ。今直前で緊急事態も発生してませんし、
いざとなりましたら南條中将の支援も今は基地が隣接してますのでそんなことは起こりませんよ。
それこそ東日本にBETAが西から一斉に動き始めたらかなり厳しいですが、
今時点ではそれも無いですし、アメリカ軍も日米安保でいますからね。大丈夫ですよ。」
と心の中で謝りつつ答える。

上月副官「そうですか、そこまで話していただけないのですね...。分かりました。
大尉のリハビリに専念させて頂きます。」
上月は電話を切った。
上月副官「確かに...、戦隊長は何かを隠している。中将は話していただければ良いが。」

上月副官に一方的に通信を切られて、私は嘘をつくのが下手だなと思い、
それでも二人は護りたいからこれでいいのだと涙を流したがそれを拭い亜美は執務を再開する。

そこに冷たいお茶を持って副官室より亜美を心配して出てきて紫音。お茶を置き。
橘副官「、、、亜美、これで良かったのですか?。後悔しているように見えますよ。
私は、貴方に何を言われてもついて行くので良いですが。。。」



亜美はたまらず、人前ではほとんど見せない泣き顔を紫音に見せて胸に抱きつく。
亜美「もう、、、心が痛くて。真木さんと上月さんに嘘を言うのは心苦しいわ。
でも、、奈美がせっかく助けてあげてくれた。。。それに真木さんは私達姉妹の
理解者であり、よき先任士官であり、お母さんであり、お姉さん。上月さんもお父さんと思える方よ。
そんな方を死なせたくない。だからこれでいいの。
それに凜大尉や奈月達若い次世代の優秀な若手も戦隊保全の為に何かがあっても生かしてあげないと。」
と咽び泣き紫音の胸で泣く。それを優しく抱きしめよしよしと背中をさすり、優しくキスをする、紫音。

そして演習が終わって一区切り中の待機室にいる第六警戒小隊のゴーストと奈美。
奈美准尉「、、、(心が痛い、でも。これでいいの。真木さん達はもう死なせない。
私達姉妹が出来ることがあるならそれをしたい。
南條叔父様達もそう。ここまで良くしてくれたのに、、それに奈月お姉ちゃんにも、、、だから恩返ししたい。)」

ゴーストは最近寂しそうな、思い詰めている奈美が気になって状況を聞いているのと
姉妹の秘密を知っている者として亜美から全容は聞かされている。
今回の件では姉妹の秘密を知っている者でも限られた数名の人員にしかさらに伝えられていない。
※奈月にもゴーストも奈美も今回の演習内容以外の詳しい内容は伝えられていない。



ゴースト准尉「奈美さん、最近は空挺降下もできるようになって、一緒に戦術機でいられるのがうれしいですよ。
よく頑張りましたね。そんな顔しないで、俺も付き合いますよ。一緒なら大丈夫、怖くない大丈夫。
それに真木さん達は絶対に護らないとね」
と手を奈美の手に絡ませる。

奈美准尉「、、、ごめんなさい。付き合わせてしまって。本当は亜美姉さんと一緒に警戒型不知火で
出撃しようかとも思ったのですが、、、。」
ゴースト准尉「、、、それこそそれをしたら私は怒りますよ、、、それに後を追いますよ。
いつも一緒に言ってるじゃないですか。フォワードとバックアップは一心同体と。
だからそれに奈美さんと出会えて本当にうれしかった。ならば奈美さんの思うように動いていいのですよ。
私はできる限り奈美さんの思いに沿って最善の行動をします。」

奈美准尉「(泣き笑いの顔をして)有難うございます。一緒に最期まであがきますね。
でも駄目ならその時はお願いします。」
とお互いに見つめあって言う。

とそこに第四小隊に配属されたばかりのゴースト准尉の同期の桜である八島 洸騎 (ヤシマ コウキ)准尉が現れる。
八島准尉「ゴースト准尉、貴様に用があ、これはお邪魔だったな。後で出直すよ。」



二人は真っ赤になって席を放す。
ゴースト准尉「なんだ、八島准尉。俺に用があるのか、だ、大丈夫だよ。」
と見てて慌てるが答える。

八島准尉「そうか、じゃあ。ここの戦隊は良い感じだなあ。戦隊長は皆の気配りして率先して指揮官先頭タイプ。
でもちゃんと後退する時は指揮官が最後。
整備班は優秀でそして無理なお願いもかなり乗ってくれて、司軍医長は最初唖然としたが優秀だし、夜でも
みんなの心配して酒飲みながらだけど診察に出てる。それに早雲准尉、貴方は皆に優しくて、癒してる。
そして戦術機での支援はいつも助かってますよ。すごいスキルですね。電子戦術オペレーターって。」
と鋭い洞察力で戦隊の内容を伝える。

奈美准尉「(奈美は真っ赤になりながら)きょ、恐縮です。皆さんのお役に立てれば幸いです。」
ゴースト准尉「そうでしょ、そうでしょ。みんな魅力あるいい方々ばかりだよ。ぶっ飛んでる司軍医長とかいるけどw」
と答える。

これ以上はお邪魔だなあと八島准尉はまたの時に話そうと切り上げる。
八島准尉「ごめん、演習で汗まみれだからシャワー行ってくるよ。でわ。お二人さんまたね~。」
とその場を離れる。

そんな待機室に、現在整備班長代理としてハンガーで駆けずり回っていた落合が入って来た。
落合代理「失礼します、ゴースト准尉と奈美准尉は...、いましたね。演習お疲れ様です。
今回の演習で稼働した不知火の調子を聞きたいんですが良いですか?」



ゴースト准尉「落合代理、お疲れ様であります。警戒型不知火の状態ですか?
もちろん絶好調ですよ、整備班のおかげで、本当に連日の猛訓練申し訳ないです。
整備で大変でしょうが、宜しくお願い致します。」
奈美准尉「お疲れ様です。申し訳ないです、真木さんも居ない時にこんなに整備班に無理をさせてしまって、
機器、センサー系にも問題ありませんよ。稼働率が本当に良くて。有難うございます。
後で差し入れ作りますので、良かったら食べてくださいね。」
と二人は答える。

落合は和かに答える。
落合代理「それなら良かったです。班長代理としてやれているのかとは不安になりますが...。
それにしても真木班長が足の再生手術の為とはいえ一月も居ないなんて...、何も無ければ良いんですけど。」
不安そうに2人に言う。

ゴースト准尉「大丈夫ですよ、落合さんはよくやられてますよ。その証拠に戦隊の機体に不調の機体はない。
もっと自信持ってください。私は学がないので整備の事は良くわかってなくて申し訳ないですが、、
それでも機体が不調になってないから、思う存分任務にまい進できますからね。」
奈美准尉「でも、無理はしないでくださいね。この戦隊全機の部隊訓練はもうすぐ終わります。
今ちょうど、第六小隊まで部隊増設が出来たので戦隊連携と、空挺降下が部隊全機で
ミスなくできることを想定して演習を行っていますから。
これが終われば一区切りですよ。もう少し、申し訳ありませんがお願い致します。」
と立ち上がり頭を下げる。
それを見たゴーストも奈美の横に立ち落合に頭を下げる。

落合代理「も、勿論です!整備班が自身を持って整備しますので!。」
そんな中で、奈月が待機室に入って来た。

奈月少尉「奈美、ゴーストさんお疲れ様。落合さんもお疲れ様です。
2人ともまた良い活躍してたね。羨ましいよ。」



落合代理「あ、ありがとうございます。そうだ、ハンガーでまだ作業中なので戻りますね。」
と言い、落合は待機室を後にした。

見送った二人は奈月に答える。
ゴースト准尉「お疲れ様です、奈月さん。それは落合さん達整備班と戦隊の皆のおかげですよ。
奈月さんも部隊に馴染んできましたね。甲本大尉殿との連携もばっちりじゃないですか。
あの速攻や機動防衛戦の動きは見事ですよ。」
奈美准尉「そうですよ。奈月お姉ちゃんの動きすごく良くなりました。
体調もよさそうですし、良かったです。」
と答える。

奈月少尉「ありがとう2人とも、貴方達のおかげだよ。
それにしても、最近BETAの動きがあまり無いような気がするのは気のせいかな?
噂だと佐渡島方面から部隊を割くなんて話が、帝国陸軍であるみたいだけど。」

それについては奈美が答える。
奈美准尉「奈月お姉ちゃんの支援が出来て嬉しいです。そうですね。。
どちらかと言うと名古屋方面からの西からのBETAが脅威ですからね。
いつまたなだれ込んでくるかもしれませんから、、、離島は後回しにするつもりでは。
でも仙台と東京からも支援部隊は即応で出せますから。そういう意味で本土に
転進させていると思いますよ。」
と電子戦術オペレーターとしての能力と閲覧できる、アクセスできる情報からそう判断して
答える。

 奈月少尉「そうだよね。普通なら、西から来るよね...なんだろう。
手薄な場所から来そうな予感がするんだ。心配し過ぎだと思うんだけどね。」
そんな事を言って少し頭を抱える奈月。

奈美准尉「大丈夫ですよ。万が一大陸方面から来ても、、、アメリカ軍もいますし。
戦力的には支援部隊は出せるかと。」
と夢見の事は隠して、答える。

奈月少尉「...だと良いんだけど。」

ゴースト准尉「まあ、悩んでも仕方ないです。できることから対処していきましょうよ。
戦隊長もそれを考えて、演習を行ってるはずですよ。」
と答える。

奈月少尉「そうだよね...。」
奈美は心の中で謝りつつ目をそらす。

奈月は奈美の表情を逃さず見たが、何も言わず。
奈月少尉「私も陽炎の調子を見てくるね。」
そう言って待機室から出て行った。

ゴースト准尉「奈美さん、危なかったよ。今のは。たぶん何か奈月さんにバレたかも。」
奈美准尉「、、、ごめんなさい。嘘はつきたくないでも、奈月お姉ちゃんは護りたいから。」
と項垂れる。

奈月少尉「なんで隠そうとしているのだろう。そこまで私が信用ならないのかな...。
上月中尉が言う真木さんの嫌な予感、もしそれが当たって奈美と戦隊長が犠牲になるなら...。
私が代わりになる。2人は命の恩人、ならこの命をかける。」
実は上月から個別に連絡が来ていた奈月は、そんな決心をしていた。

上月は亜美にはぐらかされたので、今度は南條中将に連絡を取ると、呆気なく答えてくれた。
南條中将「やはり教えていなかったか...。真木君の予感は当たっているよ。
詳細は教えられないが、曖昧だが佐渡島にBETAの大侵攻の可能性大との事をつかんでね。
姉妹は、そこで死ぬつもりだ。」

上月副官「中将、何故戦隊長は教えて頂けないのでしょうか?」
南條中将「恐らく、君達を失いたくないからだろう...。だが、それは君達も同じだ。
それが逆効果だろうに...。もし佐渡島に本当に侵攻があった場合、果たしてどんな対策が出来るかは分からない。
情報も曖昧で、戦力を割けないのが現状だ。すまない。」

と、そこに三芳中将が仏頂面をして南條中将の執務室に押し入ってくる。
通信中とわかると、ドカッと来客用のソファーに居座り無言で終わるのを待っている。



南條中将「すまない来客が来てしまった。また後で話そう、それではな...。
隆文、通信中に入らないでくれないか?」

三芳中将は南條を睨みつけてそれには答えず言う。
三芳中将「、、、恭次郎、お前亜美の部隊に何をやらせてる?情報部と近隣の憲兵隊が苦情を言ってきてるぞ。
演習の苛烈さと昼も夜も関係なくやっていると聞いてるぞ。クーデターでも起こす気か?
まあ、あの早雲戦隊長に限ってそんなことは無いとは思うが、何が起きてる。」

三芳中将「演習内容を精査したが、離島防衛戦を考えていないか?
空挺降下を含めて演習を行っている。帝国陸軍の上層部が考えているプランと何か違う作戦を考えている気がするぞ。」
と言う。

動じず静かに聞いた後、南條は口を開いた。
南條中将「隆文...盗聴や付けられてないだろうな?話はそれからだ。」
南條中将「姉妹の件が強く絡んでるからな。」

三芳中将「無論だ、そこは俺は憲兵隊出身だからな、情報部にも一時席を置いていた。
だからそこは一番気をつけてるよ。」

それを聞き、話し始めた。
南條中将「奈美が例の力で予知夢的なのを見たと、亜美から聞いた。ほぼ確実に佐渡島にBETAの大侵攻が来るとな...。
そして、2人はそこで確実に死ぬとも...。」

三芳中将は愕然とした顔をする。
三芳中将「馬鹿な、佐渡島だと。大陸から来るのか?それは、、、本土は東日本防衛で手一杯だぞ。
しかし、嘘だとは思えない、奈美は昔からその手の予知みたいな事は言ってたのを聞いたことがあるが、、。
だが、、そんな情報上層部には言えないな。姉妹が戦死するだと。。そんな事はさせてたまるか。
恭次郎何とかならんのか、うちは憲兵隊は抑えることはできる。だが、、それ以外手が打てない。」

険しい顔をして南條は言う。
南條中将「勿論、再編した空挺部隊を佐渡島に送る事を考えている。
なるべく佐渡島に戦力を温存するように動いているが...。
それでも本来置くはずの数よりも戦力が少なくなっているのが現状だ。
他にも米軍と国連軍にも掛け合ったが、米軍は救援に関しては言葉を濁され、
国連軍は手が回らないと言われたよ...。後は斯衛しかないが...。」

三芳中将「、、、結局は日米安保も日本が危ういなら破棄を考えるか。アメリカ軍は日本を見捨てる気だな。。
本土すら守れない日本帝国軍にはもう手を貸す理由もないか、、、
国連軍はさすがに無理だろうな。そこまでの規模ではない。
斯衛か、、、だがやつらは姉妹をどう考えているんだ。最悪政治の道具にされてしまうぞ。
そうなったら、あいつらに顔向けできん。。。」
と愕然とする。

南條中将「そうなると...。完全に手詰まりだ。
これ以上はなんとも出来ない、日本だけで解決するなら斯衛しか頼る所がないのは...事実だ。」

三芳中将「、、、ではどうする。姉妹を守りつつ支援を引き出せるのか、
二人を死なせない事が出来るなら俺の首を差し出しても構わんぞ。
どうせ戦闘では憲兵隊で歩兵を率いるぐらいしかできん。
ならばそれでも良いぞ。」
と言う。

南條は全然吸わないはずのタバコを吸い始める。
南條中将「隆文、ふざけた事を言うんじゃない。
お前の首でなんとかなるなら、既にしているさ。
実際、そんな事すれば帝国陸軍内で笑い者にされるさ。」

三芳中将「ふざけてはいないさ。その価値すらないならどうしようもないが、
その覚悟は有るさ。しかし俺にはそれぐらいしかできんからな。」
と答える。

南條中将「まぁまぁ、伝手はある。斯衛軍のパイプがないなんていつ言ったよ?」

仏頂面で答える三芳中将。
三芳中将「、、、お前はなあ、(# ゚Д゚)だから早くそれを言え。」
と同期の桜である南條のいつもの、のらりくらりの対応にいつものように切れかける。
切れかけて、そのまま黙る。
(、、、晴輝がいたらまあまあと抑えて3人でやっていたのが、このありさまか。。。
それに亜紀さんも居たらいい知恵を出してくれた。それがもう俺たち2人だけか、、、。)

ニコニコしていた南條が、ため息を吐いた。
南條中将「っても、その伝手先の斯衛相手がな...斑鳩なんだよ。
1番関わりあるけど、何してくるかは分からないからね...。」

三芳中将「斑鳩?、、、まさか五摂家の斑鳩崇継閣下か、、、。
それは、、、大丈夫なのか。下手を打てばこちらが粛清されるぞ。」
と焦る。

南條中将「情報省時代からの古い縁になってるね、下手は打たないよ。
もし、そうなるなら...奥の手はあるさ。
言うて戦隊に、彼の首輪付きはいたしね。丁度よく新しいパイプラインにしてもらったよ。」

それを聞いてホッとする三芳中将。
三芳中将「そうか、それなら。。良いが。
確かに亜美の部隊を首輪付にしたくはないな。
それなら貴様にすべて任せる。俺にできることがあるなら何でも協力するぞ。」

南條中将「まぁ、その時は宜しく。」
三芳中将「解った。では、私は戻る。あとは頼む。しかし、晴輝たちが居たらこんなことには
ならなかったはずだったが、、悔やまれる。」
と言い退室していく。

南條中将「...どうだろうな、いつかは子供は親離れをしていく。いても変わらないかもしれないぞ、隆文。」

場所は変わり、斯衛軍管轄 軍病院内のリハビリテーション室で真木は
司にギャアギャア言われながらも、ハイペースにリハビリをしていた。

真木班長「ったく、指示は聞いてるんだからそう喚くなっての。
久しぶりで、しかも戻る事はないと思っていたんだ。早く杖を卒業して歩きたいね。」
以前の絶望から逃れる為に半端自暴自棄でやっていたとは違った。

司軍医長「だからだよ、ハイペースすぎるよ。自暴自棄になってないからいいんだけど。」
と真木の事を心配して言う。

そんな傍ら、上月へ南條から連絡が来ていた。
南條中将「結論を言おう。斯衛軍の古い友人に当たる、斑鳩崇継閣下と正式に協力関係を結べた。
国連極東支部の香月夕呼博士と斑鳩崇継閣下、そして私で対米国及び防諜等の共闘、
戦隊が斑鳩配下の斯衛部隊の作戦へ協力すると言う事で決着が付いた。」

上月副官「斑鳩家と良く協力関係を結べましたね...。一安心と言う所でしょうか。我々は何をすれば?」

南條中将「戦隊への立場は変わらない安心してくれ。君達の希望通りだが、頼みがある。
佐渡島を死に場所に決めた姉妹を、どうか佐渡島から無事に連れ帰ってくれ。」

そんな話を横で聞いていた真木は上月から電話を横取りして、代わりに返した。
真木班長「任せろ中将!アタシに隠してた分を2人に怒鳴り散らさないとコレは晴れないからね!
ちゃんと、貴方の元に姉妹揃って返して見せるさ!。」

南條中将「なら良かった。搭乗機は既に調達してある、安心してくれ。ではな。」
そう言って、通話は終わった。

真木班長「よし!更にモタモタしてる暇は無くなったね!リハビリを再開するよ!」

上月副官「それにしても、私たちの搭乗機は何になるんでしょうか?
我々はあくまでも斯衛ですから、陸軍の機体は乗れないでしょうし...。瑞鶴になりますかね?」
真木班長「その時はアタシ達で、瑞鶴を現地改修でもするか!」

そんな話している中に、リハビリテーション室へ2人は戦隊にいると思っていた菊間が来た。
真木班長「菊間!何故アンタがココにいるんだい!仕事はどおしたんだ!。」

菊間整備兵「中将と閣下に言われて、お二人の機体を調達して来たんですよ...。
まさかここまで大盤振る舞いとは...。閣下も意外と...、いや単にはっちゃけたいだけかも...。
とにかく、2人にピッタリの機体を用意しましたよ。私の事は、姉妹も揃ってから話しましょう。」

真木班長「分かった...。菊間、隠し事をしないでくれよ?」
菊間整備兵「そうですね...、分かりました。」

上月副官「大尉、そろそろ...。」
真木班長「あぁ、リハビリに戻るよ。」

翌日、菊間に連れられて2人は病院に隣接する斯衛軍基地の戦術機格納庫に来ており、
2機の白い戦術機、斯衛軍が誇る最新鋭機 武御雷を見上げていた。

真木大尉「こりゃ...。話には聞いていたけど、まさかこうも早く拝めるとはね。」
上月副官「えぇ、実戦配備されてまだ日の浅い斯衛軍の新型機である武御雷が何故....。」

菊間整備兵「それは姉御達が乗る機体として、中将と私の飼主が誂(あつら)えたんですよ。
私もビックリしましたよ、A型とはいえ武御雷を2機譲るなんてね。
まぁ、お二人は武家の人間ですからコレに乗る資格はありますけどね。」

そんな菊間の発言に、違和感を真木は覚えた。
真木大尉「飼主?そりゃ一体どう言う事だい?。
まさか菊間...、アンタはスパイだったって事かい?。」

菊間整備兵「姉御。それに関しては、早雲姉妹も交えてお話ししますよ。
大丈夫です。逃げませんから...。」

真木大尉「言ったね?待ってるからな。」
影のある言い方をする菊間に、真木はそれだけ伝える。

上月副官「武御雷を頂けるとは...無様な姿を見せられませんね...!。」
真木大尉「全くだよ...菊間、頼みがある。アタシの武御雷なんだけど。機体色を黒くしてくれないか?」
菊間整備兵「な、何を言ってるんですか!それでは武家ではなくて、一般衛士の色になってしまいます!。」

そんな反発する菊間を見ても、真木は動じない。
真木大尉「衛士のアタシは、武家の人間じゃない。ただ国と民を思い、それを守る為に戦う衛士なんだ。
武家の身分を捨てても、それでも斯衛の衛士として盾になりたいから黒の軍服を着たんだよ。
だからさ、アタシの乗る機体は黒じゃなきゃいけないんだよ。頼む、コイツを黒く染めてくれ。」



菊間整備兵「...分かりました。A型を黒くして、他の斯衛衛士になんか言われても知りませんよ?。」
真木大尉「へっ、上等だ。」

こうして真木や南條中将達は来るべき姉妹の戦死する未来を変えようと動き、
亜美や奈美姉妹は絶望の中、仲間を護るために何が出来るか
その事を考え来たる日に備えて行動していくのであった。
運命の佐渡島防衛戦まであと、14日ほど。
END