平家中尉戦隊合流編

樺太基地居住エリアの庭にて
、、、寒い、なんでボクはこんな所でこんな事をしているのだろうか?
寒さに震えながら大人と同じ大きさの太い大太刀を振っている。

平家時子中尉(ひらが ときこ)の幼い頃から始まる。

幼い彼女には解らなかった。
隣には帝国陸軍の父と母が太い大太刀を同じく一心不乱に振っている。
父「時子、遅い、もっと素早く、力強く背筋を使って振るのだ」

母「頑張るのです。いずれ解ります。その時が来たらあなたも私達の様に戦わなければならないのだから。」
と少し悲しそうな顔をしながら3人で大太刀を振るっていた。

父と母は軍人で武家の出と聞いている。
でも親戚や両家の祖父母にも会った事が無い、どうも譜代と外様とかのような?
敵対勢力同士で仲が良くなり駆け落ちしたとか噂がある。
だから斯衛になれなかったとかなんとか、陸軍の衛士になったらしい。
二人は仲睦まじい感じはあるけど。二人共厳しくも優しい両親であった。
幼い頃は寒さと大太刀を毎日飽きもせず振らされる事にうんざりしていたが。

時子はその後、両親と同じく軍人となるべく軍の士官学校に入り卒業後はその後衛士として防衛戦が得意で
仲間を守りながら戦うスタイルで信頼も厚かった。

そんな時子も選抜隊として大陸に派遣される。

瞬く間に半島はBETAに押されまくり、撤退の日々であった。
撤退しつつ避難民を守りながら時子の部隊は撤退している。

戦術機部隊隊長代理「、、、もう無理だ。なんとかここで防衛して避難民の光州への移送を行う。」
時子は思った。もう、どうしようもないか。ならばここで思う存分暴れて終わりにするかと。
同僚で仲の良かったのも1人だけ残ってたった3機でここを死守する。
それも良しかと。

秘匿回線で同僚が声をかけてくる。
女性衛士少尉「ときちゃんは大丈夫だよ、いつもそうじゃない皆を守って自分も乱戦の中生き残る。ちゃんと生きて帰れるって。」
と、心の中がわかってる同僚が声をかけてくる。
平家少尉「あなたいつもそうね、ボクの心の中なんでわかるの?」



女性衛士少尉「もちろん、士官学校からの友達じゃない。ときちゃんの考えてることなんてお見通しよ。」

と、そこにBETAの集団が現れる。
この数は、、、持たせられないかもしれない。
と時子は思った。

戦術機部隊隊長代理「フォックス1とフォックス4(女性衛士少尉)でツートップ、撃ちまくるから
フォックス5(平家少尉)が近接防御してくれ。」

女性衛士少尉「フォックス4了解。」
平家少尉「フォックス5も了解。」

こうしてBETAは何度となく押し寄せてくるが何とか撃破していたが、、、
すでに弾薬は尽きていた。隊長代理と女性衛士少尉の機体も中破以上、二人は重症ですでに動けない。
時子もすでに突撃砲の弾は無く、長刀とひん曲がった楯のみで二人を負傷しながらも護りつつ戦った。
平家少尉「(時間は存分に稼いだはず。ボクたちの行いで難民たちは光州に逃れたのだろうか。」

女性衛士少尉「、、、ときちゃん、貴方だけでも光州に撤退して。まだ機体は動かせるはず。」
平家少尉「そんな事はボクはできないよ。隊長代理もあなたも置いてかない。
一緒にここで粘るよ。」
とBETAに囲まれ、突撃級に楯を吹っ飛ばされても戦車級に張り付かれても引かずに長刀一本で
戦い続ける。
そして機体は押し倒され、モニターは真っ暗になる。血だらけになりながら戦車級に管制ユニットをこじ開けられ、、、
平家少尉「(ああ、ボクはこんなところで仲間も守れず戦死してしまうのか、父さん、母さんごめん。」
と目を閉じたその時であった。

戦車級は薙ぎ払われ、彼女の機体前に黒い瑞鶴が両手に長刀を持ちBETAに立ち塞がる。

真木大尉「其処の機体に乗ってる衛士!くたばってないだろうね!死んでないなら返事しな!」

瑞鶴に乗っているのは、第三独立守備戦術機中隊 中隊長 真木沙奈江大尉だった。



こじ開けられた管制ユニットから瑞鶴の機体が見える。
平家少尉「こ、のえ?。う、ボクたちはもうだめです。早く転進、して。」
と気を失う。

真木大尉「おい!肝心な所で...コイツだけでも連れて帰る!」

そう言いながらBETAの相手をしていると、後続から中隊副官 上月拓巳中尉が部隊員を連れて来た。

上月副官「大尉!光州への撤退命令が...生存者はいたんですか?」



真木大尉「其処の機体の衛士はまだ助かるかもしれない。コイツも連れて撤退する!拾える命を、みすみす見逃さないよ!」

上月副官「了解です大尉。各機、接近するBETAを殲滅し後退する。良いですね!」

真木大尉「野郎共、取りこぼす真似なんぞするなよ!アタシに続け!」

真木の言葉に雄叫びに近い様な了承の言葉を隊員達は返し、迫り来たBETA群を殲滅。

後続のBETA接近前に平家を連れ、光州へ撤退を完了した。

時子が目が覚めたのは国連軍の光州基地の病室だった。
平家少尉「う、ボクはどうしてここに。そうだ、、防衛戦で確か玉砕したんだ。」
とガバッとベットから体を起こそうとするがそのままベットから落ちる。

とそこに、司軍医が来る。
司軍医「あー、無理しちゃだめだよ。まだ安静にしてないと。。。」


平家少尉「う、皆は?難民はどうなったのでしょうか?」

明日香はベットに時子を戻し、うーんと思い。携帯端末で真木に連絡を取る
司軍医「ごめん、私じゃわかんない。沙奈江~、居る?助けた子目を覚ましたよ。
なんか状況どうなってるか聞きたいみたい。」
と連絡する。

真木大尉「状況か?これでも良いが...せっかくだし其方に行く。安静にさせておいてくれ、直ぐに向かう。」

司軍医「ごめんね、忙しいところ。うん。安静にさせておくよ。」
と通信端末を切り時子に伝える。

司軍医「今ね、助けてくれた真木大尉が来るからそっちから話を聞いてね。」
と言う。

病室のドアが開き、斯衛軍一般衛士の証である黒い斯衛軍服を着た真木が入って来た。
真木大尉「待たせたね。アタシがアンタを助けた斯衛軍大尉の真木沙奈江だ。具合は悪くなさそうで良かったよ。」



司軍医「じゃあ、私は他の衛士達見ないといけないから行くね。沙奈江ちゃんあとよろ~。」
と言って出ていく。

斯衛の制服を見た時子は驚く、こんな最前線に斯衛がいるとは。。最後に見えた瑞鶴は幻ではなかったんだと。
敬礼して伝える。
平家少尉「助けていただきありがとうございました。私は陸軍所属の平家時子少尉です。
斯衛の方が最前線にいるとは思ってもみませんでした。
所でボクの所属部隊の仲間はどうなりましたか、あと逃がした避難民はどうなりましたか。」

真木は少し言葉に詰まるが、答えた。
真木大尉「部隊は...アンタ以外は既に手遅れだった...避難民は多少の被害は出たみたいだけど

なんとか避難出来たよ。
すまない。アンタらの覚悟を踏み躙る事になるかもしれないが、
アタシ達がもっと早く到着出来れ救える衛士がいたかもしれない...」

間に合わなかった罪悪感を拭えず、真木は平家に頭を下げた。

慌てて、答える時子。
平家少尉「、、、いえいえそんなことないです。頭を上げてください。真木大尉殿達のせいではありません。
ボクたちがふがいないからBETAを止められませんでした。そうですか、ボクだけ生き残って

みんな駄目だったんですね。
避難民が退避できたのなら、それは良かったです。それに助けて頂いたそれで十分です。」

真木大尉「そんな筈はないだろう...だってアンタの顔は悲しそうにしている。
本当は、泣きたいんじゃないのかい?」

図星だった。仲の良かった友達も部隊の皆の助けられなかった。
泣き顔は他人には見せるつもりはなかった。それに私だけ生きていては、靖国に逝かなければ。
悲しそうな表情がバレてしまったがそれでも、斯衛の方に迷惑はかけられないと思った。
平家少尉「いえ、そんなことはありません。ぼくは、、大丈夫です。」
と答える。

真木大尉「アタシの前では、我慢しなくて良い。泣きたいなら存分に泣きな。」
そう言って、平家を抱きしめた。
真木大尉「こうすれば、アタシからは見えない。気にしないでいっぱい泣きな。アタシが許すよ。」

驚く時子、だが嘘をつくのは限界だった。
平家少尉「、、、うわあああああああ。。ボクは、ボクは友達すら助けられなかった。。
何が防衛が得意な仲間思いの平家だ。皆散って靖国に逝った。皆に顔向けできない。」
と泣きわめく。

真木大尉「違うさ、確かに友を救えなかったが避難民を守れた。顔向けは出来る、アタシが保証するよ。

胸を張りな。」



平家少尉「有難うございます。ここで終いにしようかと思いましたが、仲間たちの遺品を持って帰ります。
でも、、、その前に大陸は、、もうだめですね。こんな戦いをしていては。。」
とすっきりしたのか、真木から離れ話す。

真木大尉「そうだね...だが現状そうするしかない。やるしかないさ。」
そう哀愁を漂わせ話す。

真木大尉の暖かい性格に救われた時子であった。
こうして時子は体の回復につとめ、それ以降は真木とは会うことはなかった。

そして仲間の遺品を持って日本に帰国。
壊滅した原隊留守部隊には一人だけ生き残り、味方を見捨てた卑怯者の烙印を押された。
なぜ一緒に玉砕しなかったのかと。。友人や部隊のみんなを生きて返せなかった悲しみの中、
自決を強要させてもいたし、どうでも良くなって愛刀の大太刀で首を落としてしまおうと
思ったがふと真木大尉殿の仰ったことを思い出した。

(真木大尉「違うさ、確かに友を救えなかったが避難民を守れた。顔向けは出来る、アタシが保証するよ。

胸を張りな。」)
平家少尉「(、、、このままでは両親に顔向けできない、それに真木大尉殿の言う通りだ。

これからも仲間は守る、もう友人たちを護れないのは嫌だ。

ボクはこの両親から教えられた平家流で仲間を護りたい。)」
と思うのであった。

そして傷が癒え、平家少尉は帝都京都防衛戦に投入された。舞鶴方面で展開している中国地方防衛部隊の

残存兵力に組み込まれた。
両親たちの部隊は絶対防衛線に投入されているらしい。忙しく防衛構築のため、連絡も取れていないが、

一緒に戦いたかった。

そして、味方は総崩れ、臨時で配属された部隊もほとんどがBETAに喰われ、自爆していく、

その中で時子は重軽傷者の衛士達を護り遅滞防衛戦を展開しつつ後退していた。
平家少尉「大丈夫、ボクが殿になる、皆逃げて、ボクが、言ったと言えば誰もが納得する。

あいつが見捨てたからしかたないと。
大丈夫、玉砕しちゃだめだ。生きて、生きて民間人を守って。」
と一人でBETAの集団に切り込む。

今度こそ、終わりだと思った。
平家少尉「(、、、父さん、母さんごめんなさい、ボクは最期まで平家家の汚名を着たまま終わる。
でも本当はそんな事してないから。)」
とBETAを切り刻む。
機体はボロボロになり楯は吹き飛び長刀はもうひん曲がり、目の前には要撃級の群れがこちらに来る。

だが要撃級の群れの横から突撃砲の20mm弾の雨で、薙ぎ倒された。平家機の目の前に一個小隊規模のF-15イーグルが現れた。

??「Is the aircraft there safe?」

通信が入り、平家はそう言われたが何を言っているのか分からず困惑していると。
??「...失礼した。其処の戦術機、これなら聞こえるか?私は在日米軍空挺部隊所属のジム大尉だ。

聞こえるなら返事をしてくれ。」
翻訳機越しではない、流暢な日本語が聞こえて来た。

平家少尉「米軍?まさかこんなところに展開しているとは。。大尉殿有難うございます。
ボクは帝国陸軍第342臨時混成戦術機中隊の平家少尉です。
助かりました。もうどうにもならなくて、味方を逃がした所です。日本語流暢ですね。」

ジム大尉「あぁ、日本人とのハーフでな。そんな事よりも、こちらも原隊から散り散りになってしまい

撤退場所を探している所だ。平家少尉、場所を知っているなら教えて欲しい。」

平家少尉「、、、ハーフなのですね。素敵です。

そうですか、、、撤退するなら舞鶴基地に行くのが良いかと。
日本海側に我が帝国海軍が展開しているので

それ経由でお願いして琵琶湖に展開中の米軍の第七艦隊に合流されては。
陸路は危険です。もうこの辺りもBETAの大群が迫ってます。
助けてもらってなんですが、ボクは撤退できません。ボクは汚名をそそがなくてはいけないので。

長刀があれば融通していただけると嬉しいです。」
と悲しそうに言う。

ジム大尉「悪いが、撤退するなら君もだ少尉。
仲が悪くなっているとはいえ、まだ日米同盟は生きている。それ以上に、同じ敵と戦い今も生きている戦友を見捨てるなど、私には出来ない。」
そう言うと同時に、同小隊の2機からも通信が入る。
ライダー2「そうですよキャプテン。国が違うとしても、俺たちは同じ衛士。此処で見捨てるのは出来ません。」
ライダー3「私もライダー2と同じ意見です!
此処まで生きて来れたなら、帰還して次に生かさないと!」

平家少尉「、、、皆さんありがとうございます。ありがたいですが、、ですがボクはこのままでは両親に迷惑どころではない汚名を押し付けることに。
大陸でボクは仲間を誰も助けられなかった。その汚名をそそがなければもう生きていても意味はありません。
ここでも仲間は転進させましたが、それも汚名の一つになりますので。

こうなってしまうと次に生かすことは帝国軍人にはないのですよ。」
と言って迫ってくるBETAに突撃しようとする。

ジム大尉「ならば...我々も付き合おうか。ライダー小隊各機、いけるか?」

そう言うと、2機は答える。

ライダー2「愚問ですよ。少なくとも、目の前の群れを倒さなければ後退も出来ませんよ。
生憎弾は有り余ってます。在庫処分には持ってこいですよ。」

ライダー3「此処で聞くのは無粋って奴ですよキャプテン!
こうなれば、あの強情な日本人を引き摺ってでも連れて行きましょうよ!撤退?クソ喰らえ!」

小隊のイーグルは臨戦態勢を取る。

ジム大尉「と言う事だ。君が我々と撤退するまで、我々も共に戦う所存だ。
撤退、クソ喰らえだ。」

焦る、時子。
平家少尉「そ、それは(汗 ボクに付き合う必要はないです。撤退してください。
あなた方は帝国軍ではない、米軍です。そんなことしたらそれこそボクは切腹しなければいけない。
それだけは。、、、解りました。一緒に撤退します。お願い致します。

でもまた生き延びたボクを大尉殿達はどうしていただけますか?
できれば懲罰大隊送りに推挙していただければ。」
と言う。

ジム大尉「...それは撤退してからにしよう。行くぞ少尉。」

平家少尉「、、、承知しました。

(皆いい方ばかり。米軍の方は大陸でもお世話になったできれば今後も仲良くしたいな)」
と時子は思った。
 

そしてジム大尉大尉達と無事に舞鶴基地に到着。
もうすぐBETAの大群がここにも押し寄せてくるなか基地も混乱していた。
 

司令部要員に相談するも壊滅した戦術機部隊のそれも汚名付きの1少尉の話など戻って玉砕してこいと門前払いだった。


悔しさで泣きそうな時子。
平家少尉「ジム大尉殿、部隊の皆さんここまで有難うございました。

ボクはやはり前線に戻らないといけません。
ジム大尉殿達は米軍司令部と連絡を取って撤退してください、さようなら。」
と敬礼して立ち去ろうとする。

南條中将「其処の衛士達待ちなさい、私が話を聞こう。」
離れようとした平家を呼び止めたのは、着崩した軍服姿の将官姿の南條だった。



ジム大尉「失礼ですが、上官殿とはお見受けするがどなたですか?」

南條中将「君は在日米軍か。私はこの舞鶴基地の司令に値する、日本帝国陸軍中将 南條恭次郎だよ。
其処の陸軍衛士、何か伝えようとしていたね。聞かせてくれないか?」

敬礼して答える時子。
平家少尉「は、はい、ボクは第342臨時混成戦術機中隊平家時子少尉であります。
こちらの米軍の方に助けれれました。原隊に戻りたいようなのでご手配お願いできませんか。。
あと、壊滅した所属部隊に所属していたボクを懲罰大隊への異動命令をお願いいします。
罪状は、、、ジム大尉殿達が知っています。」
と簡潔に報告する。

南條中将「との事だが、大尉。知っているのかね?」

ジム大尉「はて?私は平家少尉が殿を務めていたと見えましたか。
実際彼女に合流する前、その場を離脱していく戦術機が見えた気がします。」
惚けるようにジムはそう伝えると、

南條中将「そうか...平家少尉。君は立派に殿を務めた衛士であると、私は判断したよ。」
南條はそう答えた。

死にたがっている時子は懇願する。
平家少尉「違います、ボクは皆を見捨てて一人で逃げたんです。

大陸でも誰も助けられず一人で逃げてきたのです。
だから。。。いえ、ボクの事はどうでもいいです。ジム大尉殿達をお願いします」
と会釈式で最敬礼してお願いする。

南條中将「死に場所を求めているなら、少なくとも今ではない。それに...。」

タイミング良く、秘書官の七瀬が南條の元に駆けつけた。
七瀬秘書官「貴方が逃した衛士達からの裏付けは出来てますよ、平家少尉殿。

貴方は自ら殿を買って出たのだと。」


南條中将「それで生き残ったのならば、此処で無駄死にさせられんよ。私の元へ来なさい。

もっと良い死に場所を用意するよ。」

それを聞いた時子は。。。
平家少尉「、、、有難うございます。ありがたいことです。でもできれば、絶対防衛線に行かせて下ください。
両親と共に玉砕したいです。」
と答える。

南條中将「この先の日本の、いや人類の勝利には経験を積んだ衛士が必要だ。

そんな優秀な衛士である君を失うのは大きな損失でしかない。
玉砕するよりも、それを誰かの為に使う方が余程両親のためになる筈だ。それに...」

南條が言い切る前に、通信兵が現れる。
通信兵A「中将!絶対防衛線が破られました!」
南條中将「だろうな、時間の猶予はない。平家少尉、私は君を必要としている。ジム大尉、君達もだ。」

平家少尉「絶対防衛線が、破られた。。。そんな、じゃあお父さんやお母さんは。。。」
と愕然とする。もうどうすれば。でもこの中将なら私の死に場所を用意してくれるかもしれないと思った。


腰に装備していた太い大太刀を外し、南條中将に渡す。
平家少尉「中将殿にボクの命託します。いかようにもお使いください。」
と。

南條中将「君は大事な戦力だ、しっかり使える場所を私は知っている。其処に配属させよう。

ジム大尉、君はどうする?」
今度はジムに向かって言う。

ジム大尉「私はBETA供を日本から追い出す為に来ました。命令だからではないです。
なので、BETA供を日本から追い出すまでは米国の土を踏む訳には行きません。
恐らく、原隊に戻れば其れを叶える前に本国へ撤退すると言われかねませんから。」

南條中将「なるほど、大尉頼みがある。私の部隊に部隊長として入ってくれ。
君みたいな軍人がウチに欲しかったんだよ、こんなゴタゴタの中だ、米軍にはなんとか説得できるだろう。」

ジム大尉「了解しました。閣下、貴方の指揮下で働かせて頂きます。」

こうして時子は南條中将預かりとなり

ジム大尉は南條中将所属第17独立守備戦術機中隊の中隊長となるのであった。

時は進み、京都が陥落後亜美が戦隊を創設し、影縫少尉を西大尉がお持ち帰りした後日。
戦隊長室でいつものように書類の山にうずもれながら亜美は思案していた。
亜美戦隊長「(、、、第三防衛小隊の隊長をどうしよう、防衛戦の指揮をとれる、殿を任せられる小隊長クラスの人員が欲しいが、
候補がいない。一層の事、第三防衛小隊は無くして影縫少尉は戦隊本部小隊所属にすべきか)。」
と悩んでいた。


とそこに南條中将より連絡が来る。

南條中将「やぁ大尉。戦隊の状態はどうかな?
実は私預かりの優秀な衛士がいるんだがね、戦隊に大いに活躍できると思うんだが。」

亜美戦隊長「中将、お疲れ様です。
優秀な衛士ですか。実はあと一人防衛戦に特化した小隊長を任せられる人材を探してまして。
どこもこういう人材はいなくて困っていたのですが、私の探している人材に当てはまるでしょうか。」

南條中将「あぁ、どんぴしゃりなのがいるよ。
大陸帰りの防衛戦が得意な衛士だ。帝都防衛戦で死に場所を探していた所を、なんとか引き留めたんだ。」

すぐさま人事情報を確認する。
亜美戦隊長「、、、これは。。どうしてこんな衛士が、いや噂や頭の固い上官のせいですね。これは。
ぜひとも私の考える第三防衛小隊の小隊長に欲しいです。お願いできますか。」

南條中将「勿論だ。直ぐに手配、いや既に其方に到着している頃だろうね。平家少尉...いや中尉を頼んだよ。」

亜美戦隊長「え、すでに手配済。有難うございます。平家中尉ですね。

すぐに戦隊所属の受け入れ手配に入ります。では、失礼します。」

南條中将「あぁ。」

すでに影縫少尉の一件で私の考えていることは解っていたのかと、さすが南條叔父様と感謝しつつ。
亜美戦隊長「紫音、平家中尉と言う方が戦隊に着任する。第三防衛小隊の小隊長にするわ。
手配して。もう到着しているみたいだから迎えに行ってくる。」
とバタバタして戦隊長室を出て行った。

橘副官「まったくやれやれ、あわただしいことですね。またほおっておけない方が来られるのでは。
仕方ない亜美の望みなら喜んで、手配しておきますよ。」
とつぶやく。

正門で衛兵にそんな話は聞いていないと、戸惑っている平家中尉。
そこに亜美が来る。
亜美戦隊長「申し訳ない、貴方は平家中尉ですね。南條中将から今話を聞きました。私はここの部隊、第零独立強襲戦隊の
戦隊長早雲亜美大尉です。
どうぞ入ってください、衛兵、この方は戦隊の戦術機部隊に異動となった平家中尉よ。入れてあげて。」

と言うと慌てて衛兵は敬礼して平家中尉を通す。
時子は驚く、部隊長自ら迎えにくるなんてと。

亜美にアテンドされて戦隊長室へ行く。
亜美戦隊長「ようこそ、我が第零独立強襲戦隊へ。南條中将より聞きましたよ。
防衛戦が得意とか、私も大陸での戦闘系経験がありますが、よくあの戦線を生き残れましたね。
我が部隊では第三防衛小隊の小隊長としてその能力を発揮していただけると助かります。」
と言う。

平家中尉「、、、斯衛の真木大尉殿と仰る方の部隊のおかげですよ。ボクは仲間も守れず、

ただ助けれただけです。
帝都京都防衛戦でも、何もできずに、両親は絶対防衛線でかなりの仲間を後退させて二人は戦死。
ボクだけ生き残ってしまいました。南條中将閣下に言われてきましたが、ボクに務まりますでしょうか。」

戦隊長室の長机に時子を座らせ、紫音にお茶請けを出させて人となりを確認する。
亜美戦隊長「あの、どうしようもない大陸撤退戦を戦いぬいたいのですね。
しかも真木さんとお知り合いとは。世間は狭いですね。
私もです。戦歴を見ました。難民を国連軍光州基地へ護送して、平家中尉は奮戦していたと。
それに京都防衛戦を含めて必ず殿を志願し、仲間を民間人を護る戦いを。
貴方のような戦域を見極めて戦える方を探していました。

戦隊の戦術機部隊、第三防衛小隊の小隊長になって欲しい。
相方の2番機は影縫少尉。彼女も楯を使った防衛戦が得意、戦隊で二人で仲間を守って欲しいわ。

それとここではあなたの事を悪く言う方はいないわよ。人事情報は見ました。
貴方は仲間を見殺しにも敵前逃亡もしていない、ちゃんと南條中将閣下より聞いています。
仲間思いの衛士よ。それと、、、友人とご両親の事はお悔やみ申し上げます。
 

私も、中国地方防衛戦で、育ての親を戦死させてしまいました。
私も解るつもりです。思いは同じです。悔しいです。でもうちの戦隊は家族です、兄弟、姉妹です。
みんな暖かい方です。だからみんなと相談して一緒に進んで言って下さい。」

時子は驚いた。こんな事を言う上官は今までいなかった。

それに周りに言った事が無い心の中までボクの思いが解ってる。
なぜ?表情には出してない。いつも邪険にされていたのにもこんな素敵な上官は斯衛の真木大尉殿と

南條中将以外見たことがなかった。

亜美戦隊長「では、まず機体の初期セットアップね。整備ハンガーに行きましょう。」
とくらい顔をしている時子をの手を引っ張って連れていく亜美。

橘副官「ああ、もう亜美、決済書類がまだいっぱい、、、まあいいか。私がすれば。
あんなに平家中尉を励ましてあげたいですよね。奈美准尉と一緒。だから皆から慕われる。
でもね。自分の事も労わって欲しいな。後で休憩させないといけませんね。」
と愚痴を言っている。



時子はああ、この方は。。もう、魅力ある上官だなあとあきらめつつ手を引っ張られて
整備ハンガーに連れていかれる。

亜美戦隊長「真木整備班長いらっしゃいますか?ちょっと話があります。
お忙しいところ、申し訳ないのですが、お願いできますか。」
と声をかける。
時子は驚く、真木?真木ってもしかしてボクを助けてくれた方?

いやいや他にもいるでしょうと思っていると。

来たのは菊間だった。
菊間整備兵「姉御ですか?...此処にいないなら、ハンガー裏手の喫煙スペースでタバコ吸ってると思いますよ。
戦隊長、申し訳ないんですが姉御を呼びに行って貰って良いですか?そして...慰めて欲しいです。」

亜美戦隊長「、、、何があったの。(ピクっと反応する、あ、真木さん心が折れてる。

これは私が慰めてあげたい)


平家中尉、こちら戦隊の戦術機整備班の菊間整備兵です。腕は整備班の中でも上位3名のうちに入る凄腕よ。
 

菊間整備兵、こちら第三防衛小隊小隊長に着任した平家中尉、影縫少尉と同じ機体構成で武装は聞いて
初期セットアップをお願いできますか。その間真木さんと話してきます。」

菊間整備兵「了解しました...すみません、平家中尉も戦隊長と一緒に姉御...班長と話をして来て欲しいです。」
そう言った直後、平家の耳元まで菊間は近づき。
菊間整備兵「平家中尉、貴方の考えは合ってますよ。我らの班長は、貴方を助けた真木沙奈江大尉ですので。」
と耳打ちした。


困惑する時子。
平家中尉「???、なぜそれを。貴方は何者ですか、真木殿に何が。」
と腰に装備している太い大太刀を抜こうとする。

耳打ちの内容が聞こえた亜美。
亜美戦隊長「、、、そこまで平家中尉。私は菊間整備兵を信用してます。問題ありません。」
と言い。


亜美戦隊長「菊間整備兵、解りました。二人で行ってきますね。」
亜美は真木の心の声をたどって真木の所に行く。こっそりまずは様子を少し離れてみる。

喫煙スペースには、地面に座り俯いた状態でタバコを吸っている真木の姿があった。

直ぐそばにはタバコの吸い殻が山のように積まれていた。
真木班長「アタシ、アタシは...なんでおめおめと生きてるんだろう...なんでアタシなんだ...」



いつもとは打って変わり、虚な表情で呟いている。
いつも左足に着けている義足も外して無造作に地面に置かれていた。

亜美戦隊長「(真木さんが悲しんでる。どうしてあげれば)
それを横からのぞき込む時子。
平家中尉「、、、戦隊長。あれは、真木大尉殿ですか。。片足、どうされたのですか。。」
と小声で話しかける。

亜美戦隊長「じつは、、、(九州防衛戦の話と部下を中国地方防衛戦で失ったことを話す)。」
平家中尉「そうですか、ボクには真木大尉殿には恩があります。だから励ましてあげたい。」
亜美戦隊長「そうね、私も同じ思いです。じゃあ一緒に行きましょう。」
と亜美は義足を大事そうに抱え二人で真木の両隣りに座る。

亜美戦隊長「真~木さんどうしたのですか?、らしくもない。こんなところで暗いですよ。
たまには私にも話してくださいよ。少しは気がら楽になれば幸いです。
あ、真木さん、こちら大陸でお会いした平家中尉ですよ。うちの第三防衛小隊の小隊長に今日着任しました。」

平家中尉「お久しぶりであります。ボクです、平家です。

真木殿、貴方のおかげでここまで生きて仲間を護る事ができました。
何度か自決か玉砕したいと思いましたが真木殿のおかげで何とか生きています。」
と正座をして座り大太刀を横に置き頭を下げる。

真木は俯いていた顔を上げ平家を見た。
真木班長「平家...久しぶりだね。アタシも、見ての通り足を失ってこの様だよ。
何が斯衛だ...アタシは足を失って、戦友達を守ろうとする事さえ出来ず後方で見殺しにしたんだ。
夢に見るんだ、仲間達がアタシに助けを求める夢を何度も何度も...」

平家中尉「、、、そんなことありません。それは真木さんの罪悪感から悪夢を見てるだけです。
ボクは少なくても感謝してますよ。それに真木殿の部下はそんなこと思ってませんよ。
私の友人もあの時笑って靖国に逝きました。夢に見ますが、そんなことはないはずですよ。」

亜美が真木を抱きかかえる。
亜美戦隊長「今はちょっと無理ですが、部下の方々はそんなことこと思ってませんよ。見殺しでは無いです。
部下の方々は真木さんが生きてくれてうれしく思ってますよ。だからそんなこと思わないでください。
それに真木さんが元気でなくては整備班、ひいてはわれら戦隊の人員の士気にもかかわります。
お願いです。元気を出してください。」
と平家中尉がいるので能力は使わず真木を元気づける。

真木班長「すまない、またこうなっちまったね...平家にも不甲斐ない所を見せちまった。」
落ち着いたのか、渇いた笑いをし無理に笑顔を作って2人に向ける。

亜美はその無理な笑顔に、心にズキっと自分の心も痛む。
亜美戦隊長「真木さん。前に言ってくれましたよね。つらい事、悩んでること吐き出してください。
私じゃだめかもしれません。それでも真木さんあっての私達姉妹です。お願いです。」
と真木を抱きかかえる。

時子も同じ思いだった。
平家中尉「真木大尉殿には恩があります。ボクにもできることはありませんか
ボクは真木大尉殿に元気になって欲しいであります。」
と言う。

亜美戦隊長「笑うも泣くも一緒ですよ。平家中尉も両親が帝都京都防衛戦で殿を務め立派に散りました。
思いは同じです。だから真木さん、一緒に泣きましょう。お願い、心の中を吐き出してください。」
とさらに言う。

真木班長「アタシは...守りたかった、アイツらと共に戦いたかった...。」
ポロポロと涙を流す真木。

亜美も時子も泣く。
亜美戦隊長「うん、そうですよね。私も両親と共に戦いたかった。」
平家中尉「はい、ボクも両親と殿で一緒に戦いたかったでありますよ。」
と3人で思いをはせる。

真木班長「...ふぅ、ありがとう。なんとか立ち直れそうだ。」
表情も戻り、和かになる真木。

亜美戦隊長「、、、良かった。真木さんはそうでないと。と、それに奈美も心配してますよ。」
とちらっと通路の門で隠れて泣いている奈美がいる。
どうやら一人で感じ取って来たようだ。

真木班長「また心配させちまったね...せめて近くに来いってんだよ。」

ばつが悪そうに心配した顔つきで真木の所にくる奈美。
奈美准尉「、、、お二人が居たから、私はお邪魔かなと思って。。」
としょんぼりしながら言う。



平家中尉はこの子はと?思いつつこの二人はなんでこんなにも優しく心うちが解るのだろうかと思った。

真木班長「んな気遣いは要らないよ。さて、改めて、平家少尉いや中尉か。第零独立強襲戦隊 

整備班長の真木沙奈江大尉だ、宜しくな。」

奈美准尉「はい、今後はそうしますね。」
と優しい微笑みを向ける。

時子はきちんと正座して答える。
平家中尉「はい、こちらこそよろしくお願いいたします。」
亜美戦隊長「さっそくで悪いのですけど、真木さん平家中尉用に影縫少尉と同じ撃震のセッティングを

お願いします。
装備も同じで良いと思います。何か希望があったら真木さん達整備班に言ってね。

無理な事でなければ大概な事はしてくれるはずよ。」

真木班長「任せときな。少なくとも、アタシ達がいる間の戦術機に不調は起こらせないからよ。」

亜美戦隊長「有難うございます。宜しくお願い致します。
あと平家中尉、この子は私の妹の早雲奈美准尉だ。

衛士ではないが戦術機部隊第六警戒小隊のバックアップ要員だ。
電子戦術オペレーターのスキルを持っている。宜しく頼む。」

電子戦術オペレーター?衛士でもないのに戦術機に乗る?良く解らないが、、、とりあえずは挨拶する。
平家中尉「宜しくね准尉、ボクは本日付で戦隊に配属されたボクは平家時子中尉。」

 

奈美准尉「は、はい。早雲奈美准尉です。戦術機のサポートはお任せください。」
と会釈する。

こうして平家中尉は戦隊に配属された。
皆優しく、誰もが陰口を言ったりのけ者にされず頼りになる部隊で

ここは私にとっても家族のような部隊だと思った。
END