第零独立強襲戦隊の基地にある戦術機の格納庫、その扉から外を見つめる真木班長の姿があった。
真木班長「雨か...雨はやだね...。」



外は土砂降りの雨が降っており、真木班長は悲しそうな顔で見つめていた。そこへ。
上月副官「大尉、こちらにいましたか。そこで黄昏てどうしたんですか?。」
彼女の副官で、斯衛軍から武家出身なのに自分について来た上月中尉がそこにいた。



真木班長「上月か、そうだな...雨を見ると思い出すのさ。アンタが意識不明になり、仲間達が逝ってしまった事を聞いた事を。
無力を感じて、何もかも嫌になった事を...。」
上月副官「大尉...。」

時は、九州が陥落し帝都京都へ部隊が集結しつつある時に戻る...。
姫路にある斯衛軍基地の病棟、リハビリテーション室にて真木はリハビリに励んでいた。

そこへ真木の手術を執刀し、担当医になった司明日香中尉がやってくる。
司軍医「沙奈江ちゃん!また無茶なリハビリを!そんな無茶をしても治るのもなおらないよ、ちゃんと指示にしたがってよ~!。」



真木大尉「それがなんだ!今、帝都で衛士達が集ってるんだ...いつまでもここで、燻っている訳には行かないんだよ!。」
出来たばかりの義足を履き、慣らすために何度も歩行リハビリと、片脚を失ったばかりの患者がしない様な足腰を鍛える筋トレをし、身体を傷付けていた。

見つける度に司は止めに入るが、真木は頑なに聞こうとしなかった。
司軍医「そんな事したら、更に治りが遅くなるよ!そしたら本当に必要な時に戦えなくなっちゃうよ~!。」

真木大尉「黙れヤブ医者!アタシは斯衛衛士として、戦って守らなきゃいけない使命がある。
そして、帝都がいつ攻められてもおかしくない。ゆっくりしていて、仲間を、帝都を、民を守れなかったら...アタシは...!。」
真木は一向に辞めず、自身の身体に鞭を打つ様な真似を繰り返していた。

それから3日後。
真木「くそっ!動けよアタシの足!アイツらが、仲間達が待っているんだ!」
未だに思う様に動かない義足に焦る真木。そして凶行にでてしまう。

砂原整備兵「真木大尉、何勝手に瑞鶴に乗ろうとしているんですか!」
菊間整備兵「無茶です!しかも搭乗許可も下りてないんです、やめて下さい!」
義足を引きずる様な形で、衛士強化装備姿の真木が勝手に瑞鶴に乗ろうとしたのを砂原・菊間が見つけ止めに入っていた。

真木大尉「邪魔するな!アタシはもうコイツに乗って戦えるんだ!これ以上病室にいる訳には!。」
菊間整備兵「誰か司軍医を呼んでくれ!聞く耳を持ってくれない!。」
砂原整備兵「こんな所、柳田のおやっさんに見られたら...。」

3人の背後に、斯衛軍姫路基地の整備班班長 柳田亮治(ヤナギダリョウジ)少佐が現れた。
柳田班長「...乗せてやれ。」

砂原整備兵「お、おやっさんっ!。」
菊間整備兵「正気ですか!マトモに義足を動かせない大尉が瑞鶴を動かしたら、直ぐに転倒するのが関の山です!止めさせるべきです!。」

柳田班長「それで言っても聞かねぇんだろ?
なら、乗せて分からすしかねぇさ。
俺が責任持つから構わねぇ、乗せてやりな。」
砂原・菊間両名は、納得いかないものの渋々引き下がった。
真木大尉「おやっさん、すまない。」

柳田班長「言っとくが沙奈江、テメェが動かせると思ったからあぁ言ったんじゃねえよ。
精々、現実を見てくるんだな。」
柳田班長の辛辣な言葉に目を細める真木だが直ぐに瑞鶴に搭乗しに向かった。
起動し、格納庫から外へ出て行こうとする時点で既に瑞鶴はふらついていた。

真木大尉「どうしたんだいアタシ!これくらいできなきゃ戦闘機動なんて、夢のまた夢だ!」
なんとか格納庫から出ていざ跳躍ユニットを使おうとした途端、ついに瑞鶴は転倒する。
整備兵達はそれを見ていた。

菊間整備兵「それ見た事か!。」
砂原整備兵「やめてくれ大尉!まだ大尉はリハビリが必要なんですよ!。」

真木大尉「五月蝿い...五月蝿い!アタシは行かなきゃならないんだ!斯衛衛士としての使命を果たす為にも、戦友の為にも!
動けよ、アタシの足!瑞鶴!。」

立ち上がる瑞鶴、だが直ぐに倒れてしまう。
真木は苛立ちと悔しさで、涙が出て来た。
真木大尉「畜生...アタシは行かなきゃならないのに...機体を満足に動かせないのか...認めねぇ、認めねぇぞ!。」

再び立ちあがろうとして、通信が入る。応答すると、柳田班長からだった。
柳田班長「そこまでだ沙奈江。機体から降りろ。」
真木大尉「っ!アタシはまだ証明してない!アタシは動ける、戦えるんだ...!。」

それを聞き柳田は切れた。
柳田班長「良い加減にしねぇか!テメェ一人に整備班だけじゃなく、医療連中も迷惑かけてる事を理解しやがれ!
これ以上機体を動かしてみろ、ハンガーに宙吊りにしてやるからな!。」

真木大尉「...分かった。降りるよ、降りれば良いんだろ!。」
真木は渋々機体から降りた。柳田班長は真木に近づき、胸倉を掴んだ。
柳田班長「これで理解出来たはずだろ?テメェが必要な事はリハビリだ。」
真木大尉「それでも、それでもアタシは...!。」

未だに分かろうとしない真木に柳田班長は殴ろうとした途端。真木は誰かに殴られて、地面に落下した。
上月中尉「真木大尉、貴方は...いやアンタは一体何をしてるんだ!。」
真木大尉「か、上月...。」

殴ったのは上月中尉だった、上月は胸倉を掴んで引き上げた。
真木大尉「アタシだって、まだ戦えるんだ。アタシも京都に...。」

上月中尉「あんな醜態を晒してか!私が尊敬している真木大尉は、今のアンタみたいな自分の状態さえちゃんと理解出来ない人じゃない!
戦術機所か、左義足さえまともに動かせないくせに、戦うなんて言うな!
私が、私がどれだけ...どれだけアンタの...貴方の生還を喜んだのか...どんな思いで見舞いに来ているのか...。
分かってそんな事を言ってるんですか!。」

真木は上月の態度と言葉に怯むが、言い返した。
真木大尉「だからこそ、アタシは一日でも早くアンタらの元に戻る為にやってるんだ。
アタシも戦う、上月と仲間達と共に、斯衛衛士として...。」

上月中尉「やっぱり、分かってないんですね...大尉。旧真木部隊は私を隊長に、再編されました。そして2日後に最前線である山口へ出撃します。
今日はお別れを言いに来たんですよ。」
真木は驚くしかなかった。

上月中尉「真木大尉、私は貴方が九州から生きて帰ってきて嬉しかったです。衛士として戦えなくても、幸せに生きて頂ければ嬉しい事はないです。
私を、私達を信用して今はゆっくり休んで下さいと、分かってくれていると思ってました...真木大尉、お元気で。」

上月は真木の言葉を聞かず、駆け足で立ち去ってしまった。
真木大尉「なんだよ...アタシが、アタシが悪いって言うのかよ上月...!」

数日後、土砂降りの雨が降る日。
真木は変わらず無茶なリハビリをしていた。

真木大尉「直ぐに、直ぐに復帰するんだ...。」
そこへ、砂原整備兵が駆け付ける。
真木大尉「なんだい、アタシを止めても無駄だよ?」
砂原整備兵「ま、真木大尉!大変だ!山口に行った斯衛部隊が...全滅したと言う報告が...」

それを聞いた真木は言葉を疑った。
真木大尉「は?何を言ってるんだい?」

砂原整備兵「事実ですよ!上月拓巳中尉を含めた、斯衛軍戦術機一個中隊が山口での撤退支援で全滅したんです!。」
今度ははっきりと言われた言葉に、真木は。

真木大尉「上月が...アイツらが...死んだ...そんな筈ない。大陸から共に戦って来たんだ、死ぬ筈ない...嘘だ、嘘だ!。」
真木は自身でもよく分からない感情で情緒不安定になり、リハビリステーションから飛び出した。
途中で倒れながらも、松葉杖を使い早々に何故か格納庫に向かった。
真木は瑞鶴の元に行くと、左足の義足を左手で掴み力強く握る。そして、徐に義足を外し瑞鶴の方に投げ、地面に義足が落ちる。

真木は膝から崩れ落ち、大粒の涙を流し泣いた。自身の心の中にある芯のような物が、ポッキリと折れたのを真木は自覚した。
真木大尉「上月...皆...左足失って、満足に動けず、アイツと喧嘩して...仲直りも出来ずに、アイツらを助けにも行けずアタシはただ此処で、悲報を聞いただけ...見殺しにしたのと同じだ...アタシは、アタシは何も...何も出来なかった...!何が、何が斯衛衛士だ...!
アタシは、アタシは無力だ...!。」
仲直りしたかった気持ち、友を救えに行けなかった悔しい気持ち、悲しみ等がぐちゃぐちゃに混じって真木は泣くことしか出来なかった。

そこに一升瓶を片手にふらふらしながら現れる司軍医(中尉)。
義足を拾い、そして真木の元に。ドカッと横に座り、一升瓶を開けて一杯ひっかける。
司軍医「やあ、沙奈江ちゃん。元気無いな~。そんなことじゃダメダメだよ。
九州の件でせっかく天才な私が助けてあげたのに。それに、衛士以外にできることないのかな?
あると思うよ。若手の育成とか、機体の状態を見てあげたり、衛士のメンタル相談とか。無力じゃないよ。
ねえ、報告書見たけど、九州で沙奈江ちゃん多分本来の所ではBETAに喰われて終わってたよ。
なぜ生き残れたのか、わからないけど。それでも仲間が逝ってしまっても生きてやれること、
やらなくちゃいけないことあると思うよ。
私もそう、天才だけど、助けられなかった命一杯見てきた。悔しかった。それでもね。医者続ける。
今はいっぱい泣こう。それでいいよ。」
と胸に抱きかかえてよしよしする。

真木はいつもと違うとは思いながらも、今は司の胸を借りて泣いた。
そんな中で柳田班長も現れ、タバコを吸い始めながら話した。

柳田班長「ったく明日香、オメェまた勤務中に酒煽りやがって...看護婦長が怒り心頭だぞ?
神聖な整備ハンガーを酒とゲロまみれにしたらただじゃおかねぇからな。」

それを聞いた司は。
司軍医長「あはは、看護婦長怖いのよね(;^ω^)、でも飲まなきゃやってられないわ。
九州防衛戦と中国地方防衛戦でもう数えきれない衛士や民間人の患者を助けられなかった。
この天才ヤブ医者でもできないことがあるんだって。悔しくて、飲まなきゃやってられないわ。
ゲロまみれにはしないから大丈夫よ。」
酔っているようで、まったくザルな司軍医長はけろっとしている。
むしろやってられなくて飲みまくってるいるようだ。それでも手元は確かで、手術も完璧にこなす。

柳田班長は呆れるも、酒を飲んでいる事は止めなかった。
柳田班長「沙奈江。テメェ、いつまでメソメソしてるつもりだ?
戦友を失って悲しいのはテメェだけじゃない、そこのヤブ医者や俺もそうだ。毎度出撃していく衛士のガキンチョ共が、
傷ついて帰って来るならまだ御の字で、帰ってこない奴のが多い。出来ることをしていても歯痒い、悔しい気持ちはあるさ。」

真木はそれを黙って聞いていた。

柳田班長「ヤブ医者に言われたが、オメェには衛士以外にまだやれる事はある筈だろ?
確かに、片足はない。だが義足を使えば立てるし、両腕はある。絶望するにはまだ早ぇよ。」

真木大尉「でも、アタシは...。」

柳田班長「失った事を思い後悔するよりも、残された自信が出来ることを考える方が逝ってしまった奴らの為になる!
上月は奴は、あの時なんて言ったんだ?。」

真木は別れの時、上月が自身が生きて帰ってくれた事を嬉しいと言ってくれたのを思い出した。
真木大尉「アタシは...生きなきゃいけない。アタシが生きていた事を喜んで、アタシを思ってくれた上月と戦友達の為に...!。」
真木はそう思い、司の胸から離れ柳田へ向くと土下座した。

真木大尉「柳田のおやっさん!今までの無礼申し訳ありませんでした!。 恥を忍んでお願いします、

アタシを一端の整備兵にして下さい!。」 

 

柳田班長「...テメェが衛士をしながら整備兵としての知識を得ている事、

戦術機の応急処置が適切で整備兵としての才能がある事は分かってる。 俺が教えるなら、半端な覚悟じゃ着いてこれねぇぞ?」 

 

柳田班長「お前さんの家が整備兵を出している家系で、嫌になって出て来たのを俺は知っている...敢えて聞くが、良いのか?」

 

真木はそれに頷き続けるとこう言った。

真木大尉「覚悟の上です。衛士以外でアタシに出来る一番の事は整備兵である事は、アタシが十分分かっています。 

例え、家が敷いたレールに乗る事になってもアタシに出来る事がそれなんです!。」 

 

柳田班長はにやけ顔になると。

柳田班長「上等だ、俺が直々に鍛えてやる。一端どころか凄腕の整備兵にしてやるよ!精々根を上げるんじゃねぇぞ!。」

それを見た司は。
司軍医「やっぱり沙奈江ちゃんはああでないと、助けたかいがないよ。」
とまた一升瓶を開けてグピッと引っかける。
 

そして。
司軍医「しかし、あんな絶望な状態でBETAに喰われかけてたのに何があったんだろうか。
あれは絶対に生きて帰れない状態だったはずなのに、それに救援に戻った下士官も何か
おかしな事言ってた。。。あの子たちはどうしてるのかなあ。」
と思ったが、考えても答えはでないので真木を肴にまだ飲んでいる司であった。

こうして、リハビリを終えた真木沙奈江大尉は整備兵へと転向。
柳田班長にしごかれながらも整備兵として頭角を出していくことになった。

そして現在へ戻る。
そんな辛くとも懐かしい事を思い出し、上月に話した真木。上月は静かに聞いていた。
上月中尉「私が寝ている間にそんな事が...。」
真木班長「あの後アンタが意識不明で寝たきりである事を知って、アンタが寝ている病室のベッドで泣いていたっけな...。
今こうして戦隊の整備班にいるなんて、かつてのアタシが聞いたら信じないかもね。」

上月中尉「大尉にあんなに喧嘩売ったのに、結局戦友達は逝ってしまい、私自身は意識不明...笑えませんね...。」
真木班長「お互い様さ、こうして話せているのも奇跡だよ...あぁ!辛気臭い話は辞めだ辞め!ヤブ医者の所にでも押しかけて、
隠し持ってる酒をぶん取りに行くよ!。」
上月中尉「全く、真木大尉は...是非ご同行しますよ。」

ちょうどそこに奈美がゴーストと共に整備ハンガーに現れる。
奈美准尉「(、、、二人の思いが聞こえます。九州で助けられて良かった。本当に。お二人がお元気ならそれで嬉しいです。)」
と二人を優しく見つめている。
ゴーストは何か聞こえているんだなあと、見守っている。


奈美がこちらを見ている事に気付いた真木は振り返り、声を掛ける。
真木班長「おう!どうした奈美?なんか用事かい?」
上月も振り返って続く。
上月中尉「奈美さん、ゴーストさんこんにちは。どうされましたか?」

奈美はにっこり微笑んで答える。
奈美准尉「こんにちは。いえ、お二人の優しさが素敵だなあと、見ていて思ったのです。
二人はどちらもかけてはいけえないかけがえのない戦友ですね。素敵です。」
ゴースト准尉「お疲れ様です、真木さん、上月副官殿(敬礼)。私たちの機体の事なんですが、、、」
と話しを始める。



それを見ていた奈美は真木さんは戦友の事で泣くことはあると思うが、それでも上月副官さんが居れば
先に進めると思いそれがとても嬉しく感じた。
END