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「危ない法案」なぜ相次ぐ 密室協議の秘密保全法案
自民政権時にルーツ 情報独占へ「官」暗躍


政府の情報隠しが合法化される一方で、
国民のプライバシーは丸裸にされかねない
今国会では、秘密保全法案をはじめ、言論・思想を蹂躙した治安維持法まがいの
「危ない法案」が目白押しだ
ルーツをたどると、自民党政権時代に行き着く
裏で動いているのは官僚だ

【東京新聞】 こちら特報部(佐藤圭記者)2012/5/27 より


内閣調査室が会議 お膳立て

2009年7月21日、自民党の麻生太郎首相が衆院解散に踏み切った
欲22日、ある会議が官邸でひっそりと開かれた

会議の名称は「情報保全の在り方に関する有識者会議」
その内容は、民主党政権下で秘密保全法案を検討した
「情報保全のための法制の在り方に関する有識者会議」と酷似していた
お膳立てしたのは、どちらも事務局になった内閣情報調査室(内調)だ

会議のスケジュール案を比べると、いずれも計6回の会合を予定していた
テーマも「秘密の範囲」「秘密の管理」「罰則」と同じ文言が並ぶ
ともに議事は非公開、議事録なしの「秘密会議」だ

自民党政権時の「有識者会議」は結局、2回しか開かれなかった
これは自民党が2009年8月の衆院選で大敗し、民主党に政権を奪われたからだ

民主党政権の「有識者会議」は、昨年1月から6月までに計6回開かれた
8月に公開された報告書では
①国の安全 ②外交 ③公共の安全と秩序の維持 - の3分野を
「特別秘密」に指定
公務員による漏洩があった場合は、5年または10年以下の懲役刑や罰金を科す
公務員への働き掛けも処罰の対象とした

民主党政権が秘密保全法制の検討に着手したきっかけは、
沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突をめぐる2010年11月の映像流出事件とされる

ところが、2つの収支記者会議の経過を見れば、
自民党政権で知り切れとんぼになった議論が、
民主党政権で復活したに過ぎないことが分かる

2つの有識者会議の下には、官僚の検討チームが置かれていた
会議で配布する「事務局案」などの資料づくりが仕事だ

自民党政権時の検討チームは、A4判56ページの報告書をまとめている
民主党政権の検討チームの資料には
「事務局案は、自民党の検討チームの報告書などを踏まえて作成」と記された

つまり自民党政権時代に「たたき台」は出来上がっていたわけだ
民主党政権での非公開資料は、情報開示請求で公になった
しかし、自民党政権時の非公開資料は、情報開示請求をしても
大半が黒く塗り潰されている

法案は、日本新聞協会などが、
国民の「知る権利」を奪うなどとして反対を表明
「こちら特報部」は有識者会議の密室性を明らかにした

今のところ、野田政権は他の法案との兼ね合いから
今国会提出を見送る方針だが、快気の大幅延長があれば
提出する可能性はある



共通番号制法案 納税や医療情報握る

「危ない法案」は、秘密保全法案だけではない
共通番号制(マイナンバー)法案は今年2月、国会に提出
国民一人一人に番号を割り振って納税や年金、医療などの情報を管理する仕組み
行政が個人情報を一手に握る
個人情報の漏洩や番号の悪用に対する懸念は払拭されていない

同様の番号制は、自民党政権時代から検討されてきた
番号制の一種である「グリーンカード」制度は
1980年に法律がいったん成立したものの、反対が相次ぎ、
実施前の85年に廃止に追い込まれた経緯がある

新型インフルエンザ対策特別措置法も問題が多い
新型インフルエンザが発生した場合、
自治体に集会の中止や強制的な土地使用の権限を与える

新型インフルエンザの
危険の重大性が医学的に不明で、人権制限を適用する要件もあいまいだとして
批判があったが、民主、公明両党などの賛成多数で今年4月、可決、成立した

自民党は国会戦術から参院採決を欠席したが、衆院段階では賛成している


情報公開法は改正審議なく

「危険な法案」とは裏腹に、昨年4月に提出された情報公開法改正案は
一度も審議されていない
改正案は国民の「知る権利」を明記し、開示範囲を広げた
成立すれば2001年の施行以来、初の大きな改正となる

これらの「危ない法案」の狙いは官僚による情報の独占だ
日弁連・情報問題対策委員長の清水勉弁護士はこうみる
「情報を制御する者が国を支配する
国民はネットで世界中から様々な情報を得られるようになり、
情報公開制度を利用して国や自治体の情報を入手できるようになった
これにより、国民は本物の主権者になりつつある
福島の原発事故では、官僚は情報隠しでたたかれ、屈辱を味わった
秘密保全法が制定されれば、情報公開法は空文化する
官僚は情報公開法以前の状態に戻したいと意図している」

民主党は政権交代当初こそ、脱官僚を打ち出したものの、
米軍普天間飛行場の国外・県外移設を模索した鳩山政権は、
防衛官僚からそっぽを向かれて瓦解
続く菅政権は消費税増税を打ち出すなど、
あっさりと、官僚との融和路線に転換した
清水氏は
「政権がどうなろうが、組織防衛と利権の維持が官僚のDNAだ
政権運営に不慣れな民主党は、官僚にとっては くみしやすい」
と指摘する


弁護士「警察国家」に危惧

「危ない法案」の周辺では、警察官僚の“暗躍”が目立つ
1985年、自民党が議員立法で提出し、
廃案になった国家秘密(スパイ防止)法案の秘密の半紙は防衛・外交だった
今回の秘密保全法制では、これに治安分野が追加された
内調の事実上のトップである内閣情報官は歴代、警察庁出身だ
清水氏は
「悪乗り以外の何ものでもない
弁護士の多くは『警察国家』に危惧の念を抱いている」
と憤る

新型インフルエンザ特措法も、
内閣官房新型インフルエンザ等対策室に出向中の警察官僚が
主導的な役割を果たした
医療事故訴訟などに詳しい関口正人弁護士は
「国家危機管理のテストケースに位置づけられ、
権利制限の非常に強い法律がつくられた」
と話す

日弁連は、秘密保全法案やマイナンバー法案に反対を表明している
成立した新型インフルエンザ特措法については
「権利制限の具体的な要件は大幅に(法ではなく)政令に委任されている
乱用を防ぐためには、政令で縛りをかけなければならない」
(関口氏)としている



〔デスクメモ〕
共通番号があれば、生活保護の受給漏れをなくそうというのなら、
現行でもできるはずだ
不正受給問題でも、総額圧縮、水準引き下げの議論が先行している
消費税増税の陰で大事なことが置き去りになる
お笑い芸人は、いけにえにされたのかもしれない
(国デスク)