先日、MDMAがPTSDの治療に使われる治験が進んでいることについて書きました。



このMDMA assisted therapyについて、補足したいと思います。

まず、MDMAがPTSDそのものを治癒するわけでははありません。ですから、MDMA assisted therapyは、医師が患者に、MDMAを処方するので飲んでください、と処方して、患者がそれを摂取する、という性質のものではないのでね。

あくまで”assisted”ですから、治療の一環で補助として使われます。

PTSDの治療の難しさの理由 に、原因となる事由に向き合う事に耐え難い苦痛を伴う、という事があげられます。

PTSDの治療として、エビデンスベースドのもので主な方法に、エクスポージャー療法、EMDR療法などが有りますが、治療にあたり原因となる事由を思い出して向き合うという作業が必要になります。しかし、思い出すと強烈なフラッシュバックや解離症状など、耐え難い症状に襲われて、それができないケースも、非常に多いのです。

EMDRは、エクスポージャー療法より、原因となる事由に向き合うことなくできる治療として画期的ですが、それも、複雑性PTSDの治療には通常のPTSDより効果が低いとされています。さらに、治療の場にいるだけでトリガーとなり耐え難い苦痛を感じることもあります。

こういったPTSDの症状には、現在はSSRIなどが処方されていますが、効果がでないことも多いです。

そこで、MDMAを摂取することによって、この耐え難い苦痛を和らげ、カウンセリングやセラピーを受ける事を可能にする、というのがMDMA assisted therapyです。

今まで特効薬がなかった、PTSDのこの強烈な症状を和らげる、という点で、ブレイクスルーだと評価されている訳です。

エビデンスベースドの治療法と組み合わせ、MDMA assisted therapyは短期的にプログラムを組み、その中でMDMAが補助的に使われるということです。

認可された場合も、病気または専門施設において、医師、セラピストなどの専門家達のもと、監督下で行われることになると思われます。

処方されたMDMAは、その場で患者が摂取して飲み込むまで監督され、万が一隠したり、院外に持ち出したりできないようにすると予想されます。

ただ、日本のように、精神科が5分診療、という場合だと、このMDMA assisted therapyの実施は困難だと思われます。また、このセラピーには精神科医だけでなく、MDMA assisted therapyの専門家が必要ですが、日本にはまだその土台がありません。

MDMA assisted therapyは、あくまで北米での治験と研究ですから、日本の医療体制とかなり違いがあるバックグラウンドで行われている研究である、いう事をふまえると、例え認可されても、以上の理由から、日本で実施するには様々な課題をクリアする必要があると考えられるでしょう。