以前の記事で、カナダにおける、薬物を安全に摂取する施設を紹介しました。


『ハームリダクション⑥ ハートネットTV』ハームリダクションの考え方は、害 (harm)を減らすこと(reduction)です。依存症の治療に用いられるアプローチで、私のいるカナダでは、薬物を安全に摂…リンクameblo.jp


この施設の存在はある意味、ハームリダクションの究極の例ではあります。オピオイド系薬物によるオーバードースによる死亡数が増え続けて、政府がなんとかしないといけないレベルになった結果、生まれた施設だから。死亡数を減らす=究極のハームリダクションではあるのです。


けれど、その施設をそのまま持ってくることが有効だとは思いません。なぜなら日本はオピオイド系薬物の使用者が少ない。そもそも薬物使用者が、カナダは日本と桁違いに多いのです。政府が動かざるを得ない。


ハームリダクションに対する理解や、依存性に対する支援がまだまだ少ない日本にこの施設ができても、対応できる医療者やサポートワーカーの数が圧倒的に少なく、運営が難しいと思われます。


じゃあ、日本で有効なハームリダクション対策って何なのか?


まずはハームリダクションという概念に対する理解や知識を普及する必要があると思います。


私もハームリダクションて初めて聞いた時、何だそれ?と思いました。日本語に訳しにくいし。


ハームリダクションの概念を理解するには、大きな例じゃなくてもいいのです。


ジャンクフードが食べたいけど体に悪いから量を減らそう、これも立派なハームリダクション。


例えば子育てはハームリダクションの連続。


本当は栄養バランスを考えて野菜を食べさせたいけれど、子供が頑なに拒否する。でも、何とか子供に食べさせて栄養を供給する事が最優先、だからとりあえず今日のところは好物を食べさす、とか。


普段コーラは与えてない、でも誕生日パーティーでだけは飲んでいい、とかね。


私たちが毎日やってることなんです、ハームリダクションて。


そして依存性においてのハームリダクションの意義とは、


① 本人にとっての治療、回復するためのアプローチ。

② 公共への損害の減少の目的。


その知識と理解が広まらないと、日本における最適なハームリダクションは難しい。日本の薬物対策は検挙取り締まり一択だから。


いえ、取り締まりは絶対に必要なことではあるのです。しかし一方で回復支援に対する政府による対策が、日本ではびっくりするくらいゼロに近い。



そこが課題だと思います。