先日私自身の精神疾患についてお話ししましたが、その中で、私自身が一気に心の具合が悪くなったきっかけに「永住権をやっと申請できたこと」と「夫と再び暮らせるようになったこと」を挙げました。


この二つは悪い出来事ではなく、むしろ喜ばしい幸せなこと。私の人生の中でトップ5に入るであろう嬉しい出来事です。


それなのに、この二つをきっかけに私の精神状態は劇的に悪化してしまった。


それはこの二つが人生の大きな「変化」だったから。そして「肩の荷が降りた」から。


病状を悪化させる「変化」は悪い変化とは限りません。良い変化も、変化は変化。人は変わることにストレスを感じます。


そしてさらに、良い変化によりその人の肩の荷を下ろす事で、今まで張りつめていたものが一気にゆるみ、抑えていたものが吹き出してしまう可能性があります。


私の同僚に聞いた話で忘れられない話があります。


彼が長い間サポートしていたクライアントは、精神疾患と依存性を持っていて、さらにある事情から借金がありました。


この借金は彼を苦しめ、病気のため働くことができず、返すこともできず、八方塞がりになってしまっていました。


ある日、状況が変わり、彼の借金はすべてなくなりました。長い間彼を苦しめていた借金がなくなり、彼は非常に喜んでいたと同僚は言っていました。


そして、その日を最後に二度と彼の姿を見ることは叶いませんでした。命を絶ったのです。


彼は、自分に何かあったら両親が借金を返さなくてはならないと悩んでいました。それが彼に自死を思いとどまらせていました。借金がなくなったと知り、これでもう自分がいなくなっても両親に負担をかけることはないと思ったのでしょう。


同僚はこの話を私にしてくれた後、言いました。一見喜ばしい出来事があった時こそ、周りの人々は注意を払わなければならない、と。


私達サポートワーカーは、”suicidal assessment” と言って、常にクライアントの自死の可能性を見極めるように努めています。


一般的な明らかな兆候だけでなく、一見そうは見えない兆候こそ、見逃してはいけないものなのです。


あなたの周りに精神疾患で苦しむ人がいたら、変化に対して注意深く見守ってあげてください。病状が不安定な時は変化をなるべく避けるようにしてください。引っ越し、転職、結婚などの決断は、病状が安定しない間は避けることが望ましいです。やむを得ない場合は、注意深くサポートしてあげてください。


そして、もし今あなたが精神疾患で苦しんでいて、良い事があったのに病状が悪化してしまった、という状況でも、どうか自分を責めないで下さい。


せっかく良いことがあったのに、回復しない自分はダメだとか、良い出来事をもたらしてくれた人達に申し訳ないとか、罪悪感を持たないでください。


あなたが経験していることは、特殊なことでもなんでもない、当たり前のことなのです。良い出来事でも、病状悪化の原因になりうるのです。


あなたがおかしいわけではありません。どうか、自分を責めないで下さい。


あなたは悪くありません。


悪くないのですよ。