10年後、仕事で差がつく戦略思考―一生役立つ「考えるスキル」の磨きかた/広瀬一郎

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(評価)★★★★★

(書評)
今後、この本は私にとって、戦略というものの捉え方としての教科書的な役割になるだろう。そのため要点をまとめるというよりも、響いた、必要だと思った部分を列挙していく。筆者は電通で長年スポーツイベントに携わってきた人だ。電通には「変化を見極めるための3~5年」を前提として、入社したらしい。
マーケティングの大先輩の指導だと思って、しっかり咀嚼して身につけたい思考だ。

10年後、将来の日本はどうなるか?私は安い海外へのアウトソーシングが大幅に増えると思う。その中でも、自分を必要とされるような立ち位置をつくるため、成長していきたい。

「アウトプット」は「アウトカム」になって、初めて成果だと言える。この言葉を意識する。

以下、備忘録
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■人生において、「勝つ」とは「目的を遂行できること」
➡勝つ人生=自分の思うことができる人生
➡本書は「勝つ人生」を求める若者に、「勝つ方法」を「知(ナレッジ)」として示すために書かれた本。
➡人間であることは、常に社会的な存在であるということだ。その意味が社会的なものであれば意義となる。意味によって人生の豊かさが決まる。

■「力となる知」を目指す
➡「知が力になるためには、単なる「知識」だけではなく、それを現実に適用するための「技術」と「知性」の二つが必要になる。「技術』を身につけるためには、当然ながら訓練が必要となる。
「知識」とは「意味」を理解することだが、「知性」とは「意義」を感知する能力のこと。

■「戦略」とは・・・
・限られた資源をどういうふうに配分するかということが戦略
・成果を客観的かつ明確に定義するから、「成功か失敗か」がはっきりする。
➡戦略と責任論はセット。それが、いわゆるコーポレートガバナンス(企業統治)というものの本質。
➡それを、新人のうちから意識して実行する必要がある。

■最高の戦略とは・・・
・ルール自体を自分に有利に変えてしまうこと。「今日の会議はこういう手順で、これに向かって、こうしましょう」と仕切ってしまえば、仕切った人の意向に沿って会議が進行することになる。

■学ぶ戦略
・問われたら、すぐ「Why?」を考える癖をつけること。そこから、「目的」と「存在する意義」を導きだす。
➡敵に勝つためには、どのフレームで勝つかを見つける。フレームが戦略立案の基礎。

■会議の種類を事前に決めておくべき。「今日は結論を出す会議ですか」とか「今日は皆で情報を出し合う会議ですか」とか「今日はコンセンサスを決める会議ですか」とか。

■これからは、クリティカルシンキングができないと通用しない。課題設定能力は、事実をまず客観的に把握することが基本。

■目標を確認しないままで、作業に取りかかるな。
➡意識すること。エンパシー能力を鍛える。エンパシーとは、「最終的には理解し合えない」という前提で、限定的に共感すること。エンパシーというのは、「何を言っているか」ではなく「なぜ言っているか」を理解する能力。

■組織内で、何かを問題にしようとする場合は、数値化したデータをもとに話すことが不可欠だ。クリティカルに考えるということは、「ほんとReally?」「なぜWhy?」と問うことの二つが基本で、もっとも重要だ。「ほんと?」と問うのは「事実の確認」を最初にせよ、ということ。調査して事実を確認し、できるだけその事実を数値データ化し、そのデータをもとに考えよ、ということ。

■できるだけ正しいスタートを切るためには、行動に移す前にいったん立ち止まって、事実を確認する必要がある。「何か問題があるな、と気づく」と、次に「その問題を事実として客観的に正しく把握する」必要がある。まず、「何が原因なのか」という「因果関係」を調べなければならない。そのために調査が必要になるが、このときに「仮説を最初に立てて調査」をしないと、因果関係などわからない。調査の前に「2ないし3個くらい仮説を立てる」ことが不可欠。ここを怠って、間違ったスタートを切ると、修正するのは並大抵ではない。次につなぐことが課題解決のプロセスを知って理解しておくことの大きな意義だ。

■営業の進め方として大切なこと・・・(市原さんの言葉にもあった)営業は「金」と「スケジュール」を握る!
・「何のためにこれを解決しなきゃいけないのか」という問題意識を持ち、自分で観察してからいくつかの仮説を立てて、「この仮説だとするとこういう調べ方でいける」という「段取り」が重要だ。それが分かる人が、「仕切りのいい人」。必ず「スタートから山の頂上までたどり着くまでの道筋=段取り」を最初に見ようとする。その上で、うまく行かなくなった時には「どこに戻るか」っていうことを事前に考えておく。「プロセスを理解しないままスタートを切る」と、途中でロクでもないことがいっぱい起こる。全体のプロセスを理解していないと、「失敗したときに、どこに戻るかも分からない」し、「成果の意味」が分かっていないから、「成功しても、その次に進むこと」ができない。リスクというのは起きる前の「起きるかもしれないというイマジネーションの問題」だ。われわれ日本人は、これまで見えないリスクは「ないもの」と考えてしまう傾向があった。

■分析とは・・・何をすることなのか・・・
・一番最初にやることは分析の対象部分を取り出すこと。その次が取り出した要素を「分けること」だ。
・その分け方は、「場合によって」も「前提によって」も違うし、「前提が同じであっても、分ける人によって」異なってくる。そのグルーピングの仕方が、そもそも戦略の基礎になる。「どういうフレームワークで分けるか」ということは、その人の価値観が反映されるので、成果の定義と合わせてきわめて重要なポイントとなる。
・最初に何と何に分けるか?この時点で「分析力があるか』とか、「戦略的視点を持っているか」とか、「ロジカルにものを考えているか」が分かる。「成果と稼働」「達成する目的」と「手段」などは冷静に区別しなければならない。世間には、「成果」と「稼働」を混同している人が本当に多い。ドラッカーも「成果と稼働」を混同するな、何回も繰り返し強調している。
➡「分析力」=「ビジネス能力」だといってもいい。分けるという行為は、見方を変えると「選択」行動であり、人生は選択の積み重ねである以上、「分析とはその人自身」つまり「あなたの分析」があなた自身だと言い切ってもいい。
・原因が「構造的な要因か、非構造的な要因か」「内的要因か外的要因か」を意識する。内的要因はコントロールできるもの。

■流れを読む!定点観測じゃダメ!戦略は常に一定の時間軸でものを考える必要がある。背景を考える。

■思考のテクニック・・・
・三つというフレームを先につくってしまう。「1何々、2何々、3何々」というふうに答える癖をつけておく。

■マーケティングにおいて大切なこと・・・
・「フレーム」と「パラダイム」
➡フレームという思考の視点を持つ。フレームを掴めば、ファッションビジネスでは成功するし、あらゆる産業でフレームを掴むことが求められる。

■「学ぶ」目的と「欠落」の自覚
➡「自分の将来像についてイメージを持つ」ということは、ごく普通なことにも関わらず、きちんとできている人は少ない。

■発想を飛ばすこと➡暗黙知の言語化 例)ソニーのウォークマン

■スポーツマンに備わっている能力を五つ挙げさせると、母国の英国では必ず入るのに、日本では必ず入っていない能力が「勇気」だ。

■戦略的視点を持たないと、問題を解決して出てきたアウトプットが次のインプットにならずに、その「解決自体が自己目的化」してしまう。
➡「戦略的な対応」という観点からすると、「現状は、なぜ問題なのか?」と考えるWhy?からのスタートが決定的に必要だが、一般的には、どのように解消できるかという方法論にいきがちだ。戦略的なアプローチは「どのようにHow?」から入ってはダメだ。
➡「目の前の現象を解決すれば問題点がなくなる」というのは間違いだ。
➡単なる表面的な問題と、その本質としての問題点とは、往々にして異なる。「相関関係」と「因果関係」を混同するのが多いのも、そういうところからきている。

■「なぜ、悪いのか/解決すべきか」という点をきちんと押さえた上で、成果を定義すると、「現状というスタート地点と、ゴール地点/成果との差」が真っ当に把握できる。そこで初めて「その差をどのように埋めるのか」という点の検討と実行、つまり、「戦略」に移ることができる。

■「自分とは自分の行動のことである」から、「自分を把握する」ということは、自分の「行動決定要因」「行動規範」を把握するということ。現代の先進国では、人の決定要因を構成するための情報のほとんどが、マスメディアによってもたらされている。

■「心の底から嬉しいのは何か」が分かって確信したら、それに近い場所で生きていった方がいい。たとえば、部活で「本当に苦しかったけど、自分が頑張ったら、あとから20人ぐらいの部員がついてきてくれた。それに勝る喜びは過去20年間ありません」というのなら、どこに行こうが自分がリーダーシップをとるということが自分の喜びだろう。
➡結局、問題解決のスタートは自分だということに戻るのだ。それが、「気づき」という問題だ。

■「どこまでができるか」を知ることで、逆に「どこから先はできないのか」ということを、自分の中で見極めないといけない。
➡「どうしたらいいんでしょうか?」と人にすぐものを聞く人はダメだ。「私はこう思いますが、それについてはどう思いますか?」とか「私はここまでのことは分かっていますが、ここから先は分からないので教えてください」とか。
➡それが「問題を自分のものとして把握する」ということ。「どうしたらいいんでしょうか」なんてことを他人が答えたら、それはその答えた人の問題になってしまう。とすれば、その回答を他人にゆ委ねることは、自分の人生を生きてないことになるのではないか。

■会議というのは、問題解決のためにするもの。実際にアメリカ人と仕事をすると、会議の目的は事前に必ず明らかにしておかなければ信用を失う。
➡最初に「今日の会議の目的は、こうです。問題点はこうです」「これは問題だけど、ここで話し合っても片付かないので、とりあえず皆さんの意見を聞かせてください。その上で、私に託してください。それをもとに私は先方と交渉します。そして、交渉した結果を皆さんにフィードバックします」と言ってから会議に入る。すると会議のメンバーは、自分たちの役割がはっきりして、出席者全員がそれぞれの立場で当事者になれる。発言が当事者としてのものになると、不毛な会議にはならない。当然、会議の効率も機能も全然変わる。
➡「戦略はフレームだ」というのは、会議の仕切りでも同様。フレームが不明な会議は機能しない。フレームの設定次第で、会議の機能は全く変わる。

■会議の進め方(「仕切り」と「段取り」)
何について議論をするのか、論点は何か、争点は何か。それを前もって明らかにしたものが「ミーティングアジェンダ」だ。それは、会議の後の議事録と同じ構造になっているはずだ。アジェンダは、常識的に言えば、最低48時間前には作成して回覧すべきだろう。「返してこない(=フィードバックしない)人の発言権は低い」という了解が確立されているとなおいい。そうすると、会議の効率が全然違う。
➡「課題を解決するために、会議では何を議論するか」という論点が絞れるはずで、それがアジェンダに反映される。

■産業にとって「ヒト・モノ・カネ」が基本だが、最近の経営学では「経営」と「マーケティング」以外は全部アウトソーシング可能だという学説もある。マーケティングのアウトソーシングというのは、会社にとって「戦略」を他人に委ねることになるから、命取りになりかねない。

■アジェンダが決まったら、次にルールセッティングをすべきだ。今日の会議の進行のルールは何か。無論、最初に会議の機能が決まらないと、ルールも決まらない。決定する会議か、情報共有する会議か。あるいは新しい事態が生じてしまったので、その担当者から皆さんに説明させます、という会議なのか。特に「決定する会議」であれば、ルールセッティングは重要になる。全員一致まで話し合うということなのか、最終的に多数決でやるのか、あるいはA案、B案の両論併記で議長一任という会議なのか、議長が部長だったら「現場でA案、B案が出てきました」という結果を常務に渡し、常務が取締役につなげるのか。その決定のプロセスとルールを明らかにしておくと、かなり会議の効率が良くなる。こういうことをしっているかどうかで、会議の効率が全然違う。

■「生産的な議論ができるかどうか」というのは、多分にそのスタート地点で決まる。非生産的になるのを避ける一番効果的な方法が、「当事者性」の確認だ。「当事者として言うのか、それとも助言のつもりで言うのか」をはっきりさせてから発言することをルールで決めておけばいい。そのどちらでもないのであれば、その発言は、単なるおしゃべりであり、会議での発言としては無効だ、と確認しておく。

■問題の原因を探るには、事実を調査しておく必要がある。調査をする際、漠然と質問するのでは、有効な解答を得ることはできない。この段階で、すでに戦略の有無で差が出てくる。
➡仮説を立てない限り、正しい質問はできないし、正しい質問をしないと、正しい解答を得られないのは常識の範疇だ。仮説を持たずに質問をする人は多いけれど、ダメな典型だ。
➡仮説の立て方にはセンスが如実に出てくる。解決すべき問題が、「物理的な問題」か「心理的な問題」かによって、解決のアプローチはまったく異なるので、まずどちらの領域なのか、分けておく必要がある。シンプルに対応できるのは、物理的な問題だ。

■「正しいかどうかを見極めるには何が必要か」が分かるような調査内容と構造にしておく必要がある。これが調査の「段取り」だ。「仕切りのいい人」は、きちんとした仮説を持って行動している、

■優先順位を決める5つの基本的視点(かならず検討すべき項目)
1.資源(ヒト、モノ、カネ)
2.効果
3.効率
4.時間
5.リスク
➡優先順位のつけ方には、いろいろな観点があるので、なるべく多くの視点/基準を持っておくべきだ。

■「優先順位」を考えるにあたって考慮すべきさまざまな項目があるが、その項目間の調整をする際、もっとも基本的な視点/基準は「ステークホルダー」から導くべきだ。

■現代人の行動規範の多くは、マスメディアによってもたらされる情報(=Code)によって形成される「欲望」がもとになっている。特にテレビというメディアは情緒的だから、人々の欲望を刺激して消費を煽るのに向いている。

■テクノロジーの進化によって、画期的製品が「画期的」でいられる時間も短くなってきた。画期的ではなく、日常化することを「コモディティー(日常品)」化という。

■市場を形成する要素である「商品(Product)の質」や「対価(=料金)」では、競合で勝てなくなり、その他の領域/要素が考慮されるようになった。そこで現れたのが「利害関係者(Stake-Holder)」だ。従業員のモチベーションとか、商品の流通、材料の仕入れ/納品といった、市場に現れてこない要素が勝負を分けるキーとなってきた。
※スポーツ産業は「利害関係者」が多く「公共性」がある、という二点からステークホルダー型の経営にならざるを得ない。

■ステークホルダーのグループ分けには、数学の「集合」の考え方を使う。分けた後の見逃しや数え忘れをなくすためにも有効だ。P157
例)スポーツ産業のステークホルダーは
・オーナー(親会社)、競技、ファン(サポーター)、企業、メディア、地域(地元)
➡優先付けの選択には戦略というロジック(論理)が必要であり、その論理の基礎となるのがステークホルダーの捉え方だ。ステークホルダーの視点はあらゆるビジネスにおいて便利。

■いろいろな価値観を入れると、価値観全体としての一貫性がなくなるから、全体として間違ったものになる。
➡最終的な「決断」はトップが自分一人で下さないといけない。
➡決断と決定は違う。「断」とは「断つ」ことだから、トップにしかできない。

■「私はこの問題に対して当事者であるのだろうか」と問う能力。「当事者であることを把握できる能力」というのは、暗黙知であり、一般的には暗黙知だから教えられないと思われている。しかし、やろうという意思と覚悟=志さえあれば、トレーニングはできる。

■立場を明確にすることは大事だ。当事者であるということの「認識があるか、ないか」当事者であることの意味を「わかっているか、わかっていないか」これが問題解決をする上で、大きな影響力を及ぼすから、一つのスキルだと考えていい。
➡「当事者意識」というスキルと、さまざまなメソッドからなる「課題解決能力」を合わせて当事者としての能力になる。
➡そして当事者能力は「志」を形成する不可欠な要素だ。能力のない志なんて、結局夢物語でしかない。

■「志す能力」というのは、ナレッジだけではなく、覚悟を持ち。形式知化されたメソッドを学び、実践を通してスキル化して初めて「能力」と呼ぶべきものになる。

■今の日本にはナレッジを持っているのに、実行を遅らせているケースがあまりにも多い。問題は分かっているし、解決しなければならないことも分かっている。解決するナレッジもあるのに、「なぜ、私が?」「できれば他の人が言い出してほしい」という人はあまりにも多い。それを「それじゃあ私が」と言い出すように変えるには、問題解決の当事者意識を持たせるしかない。いまこそ「当事者意識」はきわめて重要な能力であると強調しておきたい。
➡問題は、組織やシステムではない。個人の当事者意識と決断のスキルだ。

■当事者という意識、意志を持とう。自己客観化し、課題解決しようと意志を持ち、対象を俯瞰して全体を外から客観的に見る。
➡「主体」が成立するためには、主観と客観を自分で意識しないとダメ。

■コントロールできる人間というのは内的要因の数が多い。コントロール可能な内的要因の数が多いというのは、選択肢の数が多いということを意味する。能力のある人は選択肢の数が多い。「勝つ人生」を送るために学ぶというのは、「選択肢を多くする」ように学んでいるということと同義だ。
勝ちたければ、「自分にコントロールできることは何なんだろう?」と常に考え、「選択肢をできるだけ増やしていこう」という意識を持って、学んだり、仕事をすべきだ。
➡選択肢を手元に多く持っておく人は、仕切りが良くて、仕事ができる。なぜなら戦略的な対応ができるからだ。
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