3月10日、何気なくいつものサイトで本を探していたら、表題の本が3月12日予約開始となっているのを見つけ小躍りした。

なんというタイミング!


思わず「とうとうでたわ、、、、、」と感無量に陥った。


一年に一冊の個人全訳、全14巻中の三冊目が出版されたのだ。
13日の午前中にはもう手にしている私。


こんなに早く手に出来て世の中の便利さに改めて感謝しながらまづページをめくるのは後ろから。




訳者の書く”読書ガイド”が内容濃く読みごたえがある。


翻訳者が書き留めたいと記した一つにポーランドの画家・文筆家のユゼフ・チャプスキ(1896~1993)の「プルースト講義録」のことが書いてある。


1939年9月ナチス・ドイツ軍とスロバキア軍がポーランドに侵攻しやがてソビエト軍も侵攻し、チャプスキはソビエト軍の捕虜となる。


捕虜収容所ではいつ処刑されるかわからないという恐怖から逃れるために誰かがもっともよく覚えていることを講義形式で語り始めることを決め、
やがてチャプスキにフランスとポーランドの絵画とフランス文学について語る機会が巡ってくる。


翻訳者は書く。
手もとに「失われた時を求めて」のテキストがあるわけではない。プルーストの表現を一旦自分の中にいれて咀嚼し「記憶」だけで引用した多くの「原文」が載っているのだが、勘所を外さないその「引用」と「原文」を比べると言いようのない感動に襲われると。

チャプスキはここまでプルーストを我が身の血肉としていたのだ。何かの作品を愛するということはまさにこういうことでなければならないと。

そして、書く。
プルースト訳者たる私は自戒を込めて何度も頷きながらチャプスキの「プルースト講義録」を読み終えることになったと。




翻訳者は自らの手の内を赤裸々に書き、読者はそれに触発され深まっていく。


プルースト翻訳者である高遠弘美氏は、チャプスキの「プルースト講義録」からも啓示を授けられ遠い道のりをさらに突き進んで行かれることだろう。


読者も同じ遠い道のりをそろそろとついていく。




もうこの”読書ガイド”を読むだけで読者のこころは躍る。


今、ブライアン・イーノの Thursday Afternoon.という曲を聴きながら書いているが、胸の中は澄んで落ち着いていても奥底では波打っている私なのである。




ゆっくりと、そろそろと読んでいこう、、、、明日からまた。





$みどりのそよ風